教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

1/17 所さんの目がテン!「もっと知って欲しい!科学ニュース2020」

目がテンが選ぶ2020年の科学ニュース

 この番組は「一応科学番組」なので、それらしく1年の特徴的な科学ニュースを選ぼうということらしい。ちなみにこの時期に放送されるとどうも寝ぼけた感を受けるが、本来は関東では年末に放送されたものらしく、それをこんな時期に放送する関西のテレビ局が寝ぼけているようだ。

 最初のニュースは、「牛の尻に目を書いたらライオンに襲われなくなる」と言う話。これはアフリカのボツワナで放牧の牛がライオンに襲われる被害が出るので、牛のお尻に目をかいたら効果覿面だったらしい。そう言えばライオンが牛を襲う時はまず間違いなく後から襲いかかるんで、そこに目をかいて「見てるぞ」と思わせたら効果ありそうだ。ライオンにとっても牛は結構強敵(まともに突進を食らったらライオンの方が死ぬ)なので、さすがに真っ正面からは襲いかかれんだろう。

 次のニュースは「ジンベエザメの目が歯のようなもので厳重に保護されていた」というもの。ジンベエザメの目を調べたところ、歯のようなギザギザの突起があるもので覆われていたらしい。さらにはジンベエザメの目には奥に引っ込んで守る機能もあることが分かったとのこと。今までジンベエザメの目は身体に比して小さいことから視覚は重要性が低いと考えられていたのだが、ここまで厳重に守っているとなると、ジンベエザメにとって視覚は結構重要であるのではということになってきたとか。

 3つめは「ネコの前でゆっくりと瞬きすればネコとコミュニケーションできる」というもの。ネコにとっては瞬きはコミュニケーションの方法なので、ネコの前でゆっくり瞬きして、ネコが瞬きを返してきたらコミュニケーションを取れたらしい。佐藤アナが猫カフェで実際に試していたが、これについては所ジョージと同じで「単に眠かっただけじゃないの?」って感想は私も持った(笑)。まあどうでも良いわ(笑)。

 

マイクロロボットに砂防にシャボン玉

 4つ目は「医療に役立つ髪の毛よりも小さなロボットが開発された」というもの。アメリカコーネル大学の医療チームが4足歩行可能なマイクロロボットを開発したという。サイズは0.1ミリ以下とのことだから、肉眼で見るのは不可能。顕微鏡写真が出ていたが、ゾリウムシよりも小さい。太陽電池を搭載しているので、レーザー光を当てると歩くらしい。将来的にはこのようなマイクロロボってで体内の腫瘍を切除するなんてことを目指しているらしいが、まだまだ道は遠そうである。4本の足は微弱な電力で屈曲する金属を使用しており、オリガミの技術を使用しているとのこと。そう言えばサイエンスZEROでそういう話があったような・・・。

tv.ksagi.work

 5つ目がこの番組に纏わるトピックとして、以前に砂防を扱った回が新潟の地すべり資料館で上映されていて、砂防研究者のPR使用されているとのこと。あの回は私も目からウロコで、また砂防研究者が不足という現状も良く伝わってきたので、内容的には私もお勧めです。これで新たな砂防研究者が登場することに期待。

tv.ksagi.work

 6つ目は「作物の人工授粉にシャボン玉を利用」という話。近年のミツバチの不足(病気での大量死滅などが原因となっている)で果樹などの受粉作業が手作業が増えているのだが、これが作業量が膨大で大変。そこで花粉を混ぜたシャボン玉を作って果樹園内で飛ばすことで受粉をさせるという研究がなされたとか。実用化出来たら興味深い。なお私はこの件については、ミツバチの代わりに無菌培養したハエを使用するという研究も聞いたことがある。現場ではかなり切実な問題らしい。

 

マメガムシに高校生考案の魚が食べないポリ袋

 7つ目は「マメガムシはカエルに食べられても肛門から無事に出てくる」という話題。マメガムシという小さなムシなのだが、これは固い羽で消化液を防ぎ、カエルに食べられても2時間後ぐらいに無事に出てくるらしい。番組でも実験を行っていたが、確かに出て来た。消化管内部に入って刺激をすることで排便を促した模様。上手く利用すれば便秘の改善につながるか・・・なんて思ったが、まさか生きた虫を飲みたい者はいないだろう。番組でも言っていたが、確かに朝から衝撃映像である。

 最後は「海洋汚染対策のためのプラスチック袋を高校生が考案した」というもの。このプラスチック袋は海中で1年ぐらいで分解して二酸化炭素と水になるのに加え、苦味成分のデナトニウムという苦味物質を加えているので、魚が誤食しても「まずい」と吐き出すらしい。なかなか優れた研究。実用面で気になるのはコストと物理強度。以前に私は生分解性ポリ袋を試したところ、強度が低いせいで簡単に袋の底が抜けてしまって使い物にならなかった経験がある。レジ袋は今は全廃の方向に向かっているが、それはそれで不便でもあるので、環境に負荷をかけないレジ袋が出来ればそれは朗報。

 なおこの番組のかがくの里の取り組みが環境省グッドライフアワードで環境アート&デザイン賞を受賞したという話題が登場。これは地上波の番組としては初とか。まああの取り組みはあの取り組みで意味があるのでよろしいかと(私のこのページではわざわざ説明するような内容もないので無視してますが(笑))。だけど日本の山林環境を考えた時、緩衝地帯としての里山というのは重要性が高いので、企画自体は良いところに目をつけてると思います。こういう点はこの番組は一見ふざけた作りに反して、中身は結構しっかりしているところなんだよな。


 以上、昨年の科学ニュース選抜ですが、チョイスの内容がてんでバラバラなのがいかにもこの番組らしいところでしたが(正統派チョイスならサイエンスZERO辺りに任せておいたら良い)、いずれもそれなりに面白い話題ではありました。

 

忙しい方のための今回の要点

・この番組らしい観点から2020年度の科学ニュースをチョイス。
・1つ目は牛の尻に目をかくとライオンに襲われにくくなるという報告。
・次はジンベエザメの目は歯のようなもので保護されていたという報告。
・3つ目はネコとコミュニケーションするにはゆっくりと瞬きしろ。
・4つ目は毛髪よりも小さな4足歩行医療ロボットが開発されたという話題。
・5つ目が目がテンの砂防の回が砂防学のPRに使用されているという宣伝。
・6つ目は果樹の人工授粉に花粉を加えたシャボン玉を使用するという手法。
・7つ目はマメガムシはカエルに補食されても肛門から無事に出てくるという事実。
・最後が苦味成分を加えることで魚が誤食しないポリ袋を高校生が考案という話題。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・科学をくそ真面目に正面からとらえるだけでなく、ちょっと側面から好奇心に基づいてとらえるというのがこの番組のスタンスですので、それが良く現れていたような気もします。昔はガッテンもこういう要素のある番組だったんですが、段々と方向性が変わって健康と料理に特化しちゃいましたね。まあその方が作りやすいのは分かるんですが。