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【個人向け国債】利率0.33%の「変動10年」はおすすめか?


財務省が2023年2月に発行する個人向け国債(変動10年)の利率を0.33%にすると発表しました。

 

0.17%だった1月発行分の約2倍で、2015年8月以来の高水準と話題に。

 

「個人向け国債はおすすめか?」というご質問を頂くことも増えました。

 

個人向け国債(変動10年)は元本保証でインフレにも一定程度対応できるので、おすすめの金融商品ではあります。

 

ただし、元本保証だからと資金を集中させることはおすすめできません。

 

今回は、個人向け国債(変動10年)のおすすめポイントと、資金を集中させることをおすすめしない理由について解説します。

 

個人向け国債の購入を検討している方は、参考にしてください。

 

 

個人向け国債とは?

個人向け国債は、個人の国債保有を促すための商品で、1万円単位から購入できます。

 

毎月募集、発行が行われていて、発行から1年経過すれば、 途中換金も可能

 

金融機関(銀行、証券会社など)の窓口で、個人の方のみ購入可能です。

 

個人向け国債の種類は下記の通り。

  • 変動10年
  • 固定5年
  • 固定3年

 

なお、金利については固定型だけでなく、変動型についても最低保証があり、年率0.05%が保証されています。

 

利払いは半年に1回、発行から1年が経過すれば解約はできますが、一般の国債のように途中での売買はできません

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普通預金や定期預金などは、1金融機関ごとに合算して預金者1人当たり元本1,000万円とその利息までしか保護されません

 

一方、個人向け国債は1000万円を超えても元本保証なので、銀行預金よりも安全性の高い金融商品です。

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おすすめは「変動10年」

3種類の個人向け国債の中でおすすめは「変動10年」です。

 

「変動10年」は10年満期の個人向け国債です。

 

半年毎に適用する利率が変わる「変動金利」を採用していて、適用利率は「基準金利×0.66」。

 

市場の金利の動きに応じて適用される利率が半年ごとに変動します。

 

つまり、市場金利が上がれば、受取利子も増えることになりますが、 逆に金利が下がった場合には受取利子は減少。

 

しかし、市場の金利が下がった場合でも年利0.05%は保証されます。

 

現在のような低金利状態では、変動10年の個人向け国債がインフレ対策にもなるのでおすすめ。

 

金利が上がるような状況になった場合、 固定金利である3年、5年の国債では低い金利で固定され、 金利上昇の恩恵を逃してしまいます。

 

 

個人向け国債(変動10年)の利率が0.33%に上がった理由とは?

「変動10年」の利率が上がった理由は、日本銀行(日銀)金融緩和政策の修正

 

日銀はYCC(イールドカーブ・コントロール)により、短期金利はマイナス0.1%、長期金利は0%程度に抑えています。

 

日銀は、長期金利(10年国債金利)の「変動幅」を従来のプラスマイナス0.25%とされていたものをプラスマイナス0.50%へと拡大しました。

 

日銀の金融緩和政策の修正により、長期金利(10年国債金利)が上昇。

 

上記の通り、個人向け国債「変動10年」は半年ごとに適用利率が変わります。

 

「変動10年」の初回利率は前月の金融機関に対する10年債入札の利回りに0.66をかけて算出。

 

2023年2月15日に発行する変動10年(募集期間は1月10日~31日)の初回の利率は、1月の10年債入札の利回り0.50%に0.66をかけた0.33%となりました。

 

この適用利率は0.34%だった2015年8月以来の高さです。

(出典:財務省

 

 

個人向け国債に資産を集中させることはおすすめできない

日銀の金融緩和政策とインフレを考慮すると、個人向け国債に資産を大きく振り向けることはおすすめできません

 

昨今の日本の経済情勢を考慮すると、日銀が大きく金利を上げることは難しいでしょう。

 

日銀の金融緩和政策が続く限り、金利は低く抑えられることに。

 

YCC(イールドカーブ・コントロール)により長期金利が低く抑えられれば、個人向け国債(変動10年)の利率も低く抑えられます。

 

一方、今後も資源高や円安によるコストプッシュ型のインフレで日本の物価が上がる可能性は否定できません。

 

また、防衛費の増額や少子化対策を理由に消費税増税が行われれば、強制的に物価が引き上げられることに。

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仮に毎年3%の物価上昇が続くケースで、個人向け国債(変動10年)の適用利率が0.3%程度だったとすると、実質的にその差である2.7%分の資産が目減りしていくことになります。

 

具体的なイメージとしては下記の通り。

 

物価が3%上昇すれば、100万円で買えていたものが103万円と3万円値上がりします。

 

一方、個人向け国債を100万円購入した際の1年間の利金は3,300円(税引き前)。

 

上記の状況が続けば、現金で保有するよりはマシですが、資産の価値は実質的に目減りして買えるものがどんどん減ってしまいます。

 

個人向け国債は、元本保証の預け先の1つとして考える程度がいいでしょう。

 

 

元本保証にこだわるのは危険

日本人は元本保証が大好きです。

 

しかし、元本保証は額面の保証であって、価値の保証ではありません

 

個人向け国債では、元本は保証されてもインフレによって実質的に資産の価値が目減りする可能性大です。

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理想としては、日本経済が回復して日銀が金利を上げられる状況になること。

 

長期金利が上がれば個人向け国債(変動10年)の利率も上がります。

 

しかし、現状は経済音痴の政治家達(与野党含めて)ばかりで日本経済の回復は期待薄。

 

であれば、資産を目減りさせないために自衛するしかありません。

 

自衛する手段の1つがインデックス投資です。

 

私自身もインデックス投資を中心に資産運用を行っており、投資初心者の方にはおすすめです。

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まとめ

円建て資産の中で最も安全性が高いのが個人向け国債

 

どうしても安全性高く運用したい資産を振り向けるのであれば「変動10年」がおすすめ。

 

しかし、元本保証だからと資産の全部や大部分を個人向け国債に振り向けるのはおすすめできません。

 

今後も日銀が金利を低く抑えることとコストプッシュ型のインフレを考慮すると、資産が目減りしてしまう可能性が大きいでしょう。