2022/12/24

The John Bunch Quartet / Slick Funk ('78)

A1Slick FunkB1Blue Bossa
A2A Sleepin BeeB2Samantha
A3More Than You KnowB3No Greater Love
A4Cherry
 中古レコード屋さんにて、本盤を手にした瞬間、私の体に電気が走りました。

 何かをきっかけに、ホンの一瞬で過去の記憶を呼び覚まされることって、ありますよね。
 私はこのジャケットを見て、映画『トータル・リコール』の悪役、ロニー・コックスを思い出してしまったのです。

(以下、『トータル・リコール』結末の盛大なネタバラシあります)

 ロニー・コックスは、火星の支配者コーヘイゲン長官を演じていました。シュワが暴れたせいで火星の大地に投げ出され、目ん玉が飛び出してもがき苦しみながら死亡。
 いやあ、悪役冥利に尽きますなあ。10万回斬られた福本先生だって、こんな殺られ方はしてないでしょう。
 何度となくテレビ放映されたので、みなさんもごらんになったのでは?

 見どころ少なからぬ『トータル・リコール』にあって、観客にいちばんキョーレツな印象を残したのはおそらくコレなんじゃないかと。シュワもシャロン・ストーンも、まんまと食われてしまいましたね。

 それ以外にも、マシンガンでボロ雑巾にされる人間の盾とか、両腕チョンパされるマイケル・アイアンサイドだとか、ゴアシーンたっぷり。私の大好きな映画です。だからリメイクするんじゃねえバカヤロー。

 おっと、つい口汚くなってしまいました。申し訳ありません。アルバムの話に戻りますね。
 ピアニストのジョン・バンチが、カル・コリンズのギターを迎えたカルテットです。

 ジョン・バンチ。
 何だか白バイ野郎のような名前のピアニスト、これが陽気に、軽やかにスイングします。
 モノクロのジャケット写真だと、神経質そうな連続殺人鬼のごとき暗い表情をしているものの、アルバムの内容は明るくおおらか、かつサービス精神に満ちていますのでご安心下さい。

 スタンダード・ナンバーのA3。
 のっけはカル・コリンズがヴァースを弾き、やがてコーラスになるとジョン・バンチが引き継ぎます。
 この、ヴァースからコーラスへの間。

 並のミュージシャンなら、この間をめいっぱい、タメにタメると思うんだ。
 ところがバンチは、かすかにタメるのみ。決してくどくならない。あっさり風味です。

 アドリブ・パートに入っても、コリンズとバンチは原メロディから大きく逸脱しません。リスナーはあのメロディを胸の内奥で感じながら、即興のフレーズに耳を傾けることになるわけ。
 ジャズメンがスタンダード曲を取り上げるやり方として、こういうアプローチは理想的と言えましょう。

 ジャズ・スタンダードのB1は、コリンズの高速ピロピロ・フレーズが楽しい。ブルーな曲でも、軽さ、明るさを忘れないところに、本作のカラーがあります。

 アルバム全編、バンチとコリンズの音楽による対話です。
 ベースとドラムスは、彼らが対話する場を提供するのみで、テーブルとか、イスみたいな存在と化しています。それでいいんだ。
 もしベースやドラムスが「オレがオレがー」なんて目立とう精神を発揮してしまったら、きっとくそつまんねい作品に堕してしまったことでしょう。立場をわきまえることって、簡単そうで、案外難しいですからね。
★★★

Personnel
John Bunch: Piano
Cal Collins: Guitar
Connie Kay: Drums
Michael Moore: Bass

Produced by Harry Lim
Recorded at Mastertone Recording Studios Inc., New York, 1977
Recording and Mixing Engineer: Richard Le Page
Photography: Tom Weihs, Bill Spilka
Art Direction: Tami Komai

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