1900年代におきた『ウイスキー不況』の元凶、パティソンズ事件とは?

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今でこそ世界的な地位を確立しているスコッチウイスキーですが、業界を揺るがす大きなスキャンダルがあったことご存じでしょうか?

 

1900年代、ほとんどのスコッチウイスキー蒸留所が一度閉鎖され、多くのウイスキー関連企業が倒産している期間がありました。

「ウイスキー不況」と呼ばれる期間です。

 

その理由をしらべていくとある一つの事件がきっかけの一つとなっています。

業界全体を震撼させ、多くの人がスコッチウイスキーに不信感を募らせた事件でした。

 

それ以前まで好調だったスコッチウイスキー業界でしたが、多くのウイスキー関連企業が影響を受けました。

ウイスキーブームから急遽訪れたウイスキー不況

その発端の一つとなったのがパティソン事件です。

出来事がきっかけとなり、多くの人がスコッチウイスキーのあり方を考えるようになりました

 

そして今の「スコッチウイスキーの定義」が確立されていきます

この事件の内容は、特に日本のウイスキーラバーに知ってもらいたい!!

そして安かろう、悪かろうのウイスキーに対して、その在り方に向き合ってもらいたいという願いを込めて記事を書かせていただきます

今回の記事でわかること……

  • スコットランドで起きたウイスキー不況とは?
  • スコットランドのウイスキー不況から日本のウイスキー界も学ばなきゃいけないこと
  • スコッチウイスキーの法律ができた経緯
目次

パティソン事件とは?

19世紀後半、ウイスキーは大きなブームの中にありました。

そのブームの主な理由は、1870年代にワイン業界を襲ったフィロキセラの影響が大きいです。

 

生産できなくなったブランデーの代わりに、ブレンデッドスコッチが人気となっていました

この時ジョニー・ウォーカーやバランタインなど、後の世界的ブランドのブレンデッドウイスキーが数多く誕生しています。

1870〜90年代は、ワイン業界の悲劇とブレンデッドウイスキーの向上が重なり、ウイスキーは空前の大ブームでした。

 

このブームに乗ってスコットランドに多くの蒸留所やブレンデッドウイスキー会社が設立

1890年に入る前には、ウイスキー原酒の供給過多の状態でした。

多くの人たちがウイスキー原酒の過剰生産を懸念し始めます

 

その時に起きたのが「パティソンズ事件」です。

 

パティソン・ウイスキーという銘柄のブレンデッドウイスキーを販売していたパティソンズ社

この会社が倒産したことで、ほかのブレンデッド業者や蒸留所などウイスキー関連の中小企業に飛び火

多くの企業が倒産に追い込まれました。

 

パティソンズ社の倒産が業界に大きな打撃を与えたのは、この会社のスキャンダルが特にひどい内容だったためです。

多くの人たちの間で、スコッチウイスキーに不信感が芽生えるようになります

そしてこれが原因の一つとなり、「ウイスキー不況」の時代へと突入します。

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パティソン社について

パティソンズ社は1896年、ロバートとウォルターというパティソン兄弟が設立した会社です。

パティソン兄弟は、もともと乳製品の卸売業者として起業していました

 

1880年代、ブレンデッドウイスキー業界に、多くの企業が新規参入してきていました。

1887年パティソン兄弟もブレンディング業者としてウイスキー業界に参入します。

 

パティソンズ社の事業は好調で、2年後には証券取引所に上場、10万ポンドの利益を上げたそうです。

 

1896年にはブレンディング業者としてパティソンズ社を設立。

多くの蒸留所を傘下に収めました。

その中には、オーバン蒸留所オルトモア蒸留所を手に入れグレンファークラス蒸留所の半分のシェアも獲得していたそう

 

しかしこの好調ぶりには怪しい背景がありました

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パティソンズ社の怪しい実態

会社は好調。

パティソン兄弟もスコットランドの首都エジンバラにオフィスを構え、各地に土地を所有。

豪華な暮らしをしていたといわれています。

 

しかし、実は会社の好調ぶりは装っていただけだったそう

人気が出て、どんどん値上がりするウイスキーを利用して荒稼ぎをしていました。

その方法とは……

  1. 様々な方面からウイスキー原酒保有数を担保に融資を得る。
  2. またウイスキーを集める。
  3. もっと多くの融資を得る

というやり口だったそう。

 

要はウイスキーの保有数を見せびらかせて、多くの人からお金を集めていたわけです。

ウイスキーが求められていた時代。

特に疑問もなく担保として判断されていたんでしょうね。

 

1898年パティソン社の株が急落すると、今まで借りていたローンが返済できなくなります

これを機に、パティソン社の様々な不正が明らかとなっていきました。

 

そして会社は倒産。

パティソン兄弟は詐欺横領で有罪判決を受けることとなります。

そして、この不正の中にはウイスキー愛好家を震撼させた驚愕の内容が含まれていました

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ウイスキー界を震撼させた驚愕の不正

パティソンズ社のパティソン・ウイスキーは、
ウイスキーと呼べるのか怪しい安ウイスキーがメインでした

 

ほんの少しだけ上質なスコッチを混ぜただけの代物だったそう

そしてそれを「Fine old Glenlivet」として売り出していたそうです。

パティソンズ社はこの方法で莫大な利益を生み出していました

 

このニュースは、スコッチ業界全体に激震が走ります。

この時、スコッチ業界は大きく膨れすぎていたと思います。

 

その結果このような事件が起き、それがきっかけで一般消費者がスコッチウイスキー全体に不信感を抱くようになってしまいました

yaffee

もちろんそうですよね。

己の利益だけを考えて、消費者・生産者を欺いたのですから。

この出来事が飛び火し、多くのウイスキー中小企業が倒産します。

またモルト蒸留所にもその影響を与え、多くの蒸留所が閉鎖されることとなってしまいました。

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ここから続く長い停滞

その後、

  • 第一次世界大戦(1914~18年)
  • アメリカの禁酒法(1920~33年)
  • 世界大恐慌(1929年)
  • 第二次世界大戦(1939~45年)

などなど

世界的な出来事が、さらにウイスキー業界に追い打ちをかけます。

1932年一時期、操業していた蒸留所はグレンリベットグレングラントだけという時があったそうです。

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スコッチウイスキーに回復の兆し

1942年、イギリス政府が不況のスコッチ業界と外貨獲得のためウイスキーの生産を推奨

スコッチウイスキー協会(SWA)が設立します。

 

この背景には戦時中イギリスがアメリカからしていた莫大な借金が関係していたそう。

イギリスは戦時中、ウイスキーの輸出を推し進めました。

 

結果多くのアメリカ兵がスコッチを愛飲するようになったのだとか。

戦後のアメリカの好景気に乗じて、スコッチも人気となっていきます。

yaffee
この時は禁酒法明けで粗悪なバーボンが多く、バーボンの人気が地に落ちていました。

 

そして再びのスコッチブレンデッドウイスキーブーム。

さらには現在の世界的なシングルモルトブームへとつながっていきました。

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多くの人が芽生えた「ウイスキーとは?」

1900年代のウイスキー不況で業界のみならず、多くの人の中に「スコッチウイスキーとは?」の疑問が芽生えます

 

ブレンデッドウイスキーはウイスキーなのか?

という一部ブレンデッド業者に対して、モルトウイスキー側が告発します。

yaffee
モルト業者から見て、モルトウイスキーがほとんど使われていないブレンデッドが数多くあったんだと思います

 

これがアイリッシュウイスキーやグレーンウイスキー業者も巻き込み、『ウイスキー論争』が勃発します。

 

一審では、アイリッシュとモルトウイスキー側の言い分が認められ、「ブレンデッドはウイスキーではない」という判決がなされます。

しかし、大手ブレンデッド業者やグレーン業者がすぐに控訴。

最終的には1909年ブレンデッド業者側が勝利し、晴れて「ブレンデッドスコッチウイスキー」と名乗れるようになりました

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ウイスキー不況から出来上がった法律

1914年、ウイスキーの最低熟成年数が2年で義務化されます。

翌年には3年に延長。

 

1938年、スコッチウイスキー・アイリッシュウイスキーブレンド事件が起きます。

アイリッシュウイスキーを混ぜたスコッチウイスキーを「スコッチ」として販売していたそう。

 

この時に法定義はなかったものの、この販売元は、

消費者が求めているスコッチウイスキーではないものをスコッチウイスキーとして販売していた

として有罪となっています。

 

1988年、スコッチウイスキー法制定。

基準に満たないウイスキーは違法であるという法律が出来上がります

 

そして2009年、現在のスコッチウイスキーの法律が出来上がりました。

yaffee
意外とスコッチの法律が新しいことにびっくりしました!

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まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます。

今回のお話いかがだったでしょうか??

 

スコッチウイスキーに起きた不正。

長い間の不況と多くの蒸留所、中小企業の犠牲がありました。

 

ただその結果、高品質なスコッチウイスキーを守る法律というものが出来上がっていったわけです。

業界が膨れてくると法律の穴を見つけ、楽に利益を得ようとする人が出てくるもの

 

そのような問題が起きた後、業界を守るために動くのか・野放しにするのかで大きくその後が変わってくると思います。

 

スコッチウイスキーでも、長い間野放しにしてしまったから不況につながったのではないでしょうか?

yaffee
ウイスキー不況があったからこそ、今のスコッチウイスキーがあるのだと思います。

 

かといって安さを求めたウイスキーが悪であるとは思いません。

 

ただジャパニーズウイスキー」と冠するべきかどうか

安さを求めたウイスキーを、知らないうちに人生初のウイスキーに選んでしまった方もいると思います

その方がほかの素晴らしいウイスキーに触れることなく、
ウイスキーを離れていってしまう原因につながるのではないでしょうか。

 

現にアイリッシュアメリカンでは、ウイスキーと呼べない代物を、過去の密造酒名で販売しているそうです。

yaffee
こだわりのため、あえて外しているものがほとんどです。

 

こういった方法もあるのでは?と思います。

つまり「ジャパニーズ」の名称をもっと大切にすべきではということです。

 

そしてついに2021年4月から日本洋酒酒造組合から「ジャパニーズウイスキー」の自主基準が施行されます!!

これからのジャパニーズウイスキーが楽しみですね!!

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それでは良いウイスキーライフを

また次回もよろしくお願いします!!

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この記事を書いた人

香りづけに使用したことからウイスキーにどっぷり嵌ってしまった料理人です。
調理師の仕事をしつつ、ウイスキーと料理の魅力を紹介するためにブログ・メディアを作成。
様々な視点からウイスキーを解説しています。

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