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計算尺を使う

計算尺といえば、俺が工業高校生だったころは必須のツールでした。でも、就職した設計事務所ではすでに電卓が使われていて、計算尺の出番はありませんでした。たまに、現場監督のお兄ちゃんが胸ポケットに小さな計算尺を入れていたのを見かけたけど、使っているところを見たことはなかったです。

写真(1) 計算尺 HEMMI No.640S

近頃じゃ、ちょっとした足し算でも電卓に頼ってしまうのだけれど、頭の体操にでも役立つかなと、手元には計算尺を置いてあります。
俺の計算尺は HEMMI の NO.640S 、50年ほど前に購入したものなので、けっこう変色してますが、歪みや樹脂のめくれはないです。

N0.640S は一般技術用ってやつで、乗除算と三角関数などの計算ができます。幅広でゴム足が付いていて、安定感があるので好きです。幅広なものは計算精度が悪いって言われますけど、どーせ有効桁数 3 桁で、大した計算はしないですからねぇ。

計算尺の使い方

ググって下さい m(_ _;)m

と言いつつも、ちょっとだけ書いときましょうか。

掛け算

掛け算してみましょう。

計算尺にはいろいろな目盛 (尺) がありますが、基本は D 尺と C 尺を使います。DF 尺と CF 尺は、位置が半分だけずれているだけで、同じものです。

写真(2) D尺とC尺で掛け算
2 x 3 = 6
  1. D 尺の 2 に C 尺の 1 を合わせる。
  2. C 尺の 3 の位置の D 尺の値を読み取る。

以上 (^_^;)

この状態で D 尺と C 尺の関係を眺めているとわかるんだけど、C 尺の 2 は D 尺の 4 、C 尺の 4 は D 尺の 8 に相対しています。つまり、D 尺は C 尺の 2 倍になってるってこと。
写真 (2) では C 尺の 4 が見えませんが、CF 尺の 4 をみれば DF 尺の 8 に相対していることがわかります。

ちなみに、計算尺では「2 x 3」も「20 x 300」も「0.2 x 0.03」も同じです。位取りは概算でやります。

CI 尺を使った掛け算

掛け算といえば CI 尺でしょ?って声も聞こえますね。CI 尺は C 尺を左右逆にした赤色の目盛です。

写真(3) D尺とCI尺で掛け算
2 x 3 = 6
  1. D 尺の 2 に CI 尺の 3 を合わせる。
  2. CI 尺の 1 の位置の D 尺の値を読み取る。

直感的にはこの方がわかりやすいです。なので、掛け算には CI 尺がよく使われます。

この場合、D 尺と CI 尺の関係は「掛けると 6 になる組み合わせ」になっています。たとえば、D 尺の 2.5 に相対する CI 尺の値は 2.4 です。「2.5 x 2.4 = 6」ですね。
CI 尺は右から左へ目盛が刻まれていることに注意して下さい。また、DF 尺に対するのは CIF 尺 (緑色) です。

割り算

割り算は D 尺と C 尺を使います。

写真(4) D尺とC尺で割り算
2 ÷ 3 = 0.667
  1. D 尺の 2 に C 尺の 3 を合わせる。
  2. C 尺の 1 (10) の位置の D 尺の値を読み取る。

読み取った値は 6.67 ですが、位取りして 0.667 とします。
ちなみに、10 は位取りが違うだけで 1 と同じです。

このときの D 尺と C 尺の関係は「値が 0.667 である比」です。D 尺と C 尺が相対する「2 : 3」「3 : 4.5」「5 : 7.5」はどれも、比の値が 0.667 になります。

実生活で役立つとき

そんな計算尺ですが、いまどき何に使うのん?

まぁねぇ、乗除算するときですけど、位取りを概算でやるってところが、意外と頭の体操になるんじゃないかと。でも、電卓に慣れ親しんでしまった頭には、面倒くさいの一言だったりする (;´Д`)

そんなおり、夕飯をこしらえに来てくれた娘からこんなクエスチョンが。

算数苦手な娘
算数苦手な娘

水 225ml 出汁 75ml の割合で、仕上がりを 500ml にするときは、水と出汁をそれぞれどれだけずつにすればいいの?

割合の問題なので、電卓でちゃっちゃっと…… いや、待て。じつはこういうのは計算尺が得意なんだ。

写真(5) 出汁の比率計算
225 : 75 = 3 : 1
  1. D 尺の 2.25 と C 尺の 7.5 を合わせる。
  2. C 尺の 1 の位置の D 尺の値は 3 と読み取れる。

つまり、「水 225ml に出汁 75ml」は「水 3 に 出汁 1」ということです。
これは単純な比の計算。

写真(6) 出汁の量の計算

水と出汁の比率が 3 : 1 ならば、全体で 4 になるから、D 尺 (全体の量) の 4 に C 尺 (出汁の量) の 1 を合わせます。
このとき D 尺の 5 の位置の C 尺の値は 1.25 です。

つまり、出汁を 125ml 入れてから、水を足して全体を 500ml にすれば良い、ってこと。
水の量は 375ml になるから、3 : 1 ですね。

この状態で、たとえば D 尺の 7 を見ると C 尺は 1.75 なので、700ml に仕上げるなら出汁は 175ml ってことになります。200ml (DF 尺の 2) にするなら出汁は 50ml (CF 尺の 5) です。

比率 3 : 1 の出汁の量の早見表ができたの如く。

ちなみに、聡明な諸兄はもうお気付きだと思いますが、3 : 1 だのなんだと言わなくても、225ml と 75ml を足すと 300ml ですから、D 尺の 300 に C 尺の 75 を合わせて、DF 尺の 500 の位置の CF 尺を見れば 125 と、一発で出汁の量がわかります。
写真 (6) で見ると、DF 尺の 3 に CF 尺の 7.5 が相対している。そういうことです。

また、水と出汁のそれぞれの量を求めたいなら、D 尺の 225 に C 尺の 75 を合わせれば、好きな量の水に対する出汁の量を知ることもできます。

計算尺の D 尺と C 尺は比例の、D 尺と CI 尺は反比例の関係にあるので、そのような計算の応用に使えて、しかもアナログ的な、連続した数値のつながりを知ることができます。

一から始める

余談ですが。

「一から始める」という言葉があります。最近は「ゼロから始める」人が多いのですが、一にしろゼロにしろ、物事を始めることを言います。

計算尺にはゼロがありません。
基本となる D 尺の左端は「1」です。そして右端も「1」です。目盛上は「10」と表記されていますが、位取りされているだけで同じことです。それは DF 尺を見るとわかりますね、「9」の次はまた「1」から始まります。

算盤はどうでしょう。
算盤では、珠が上がっていないゼロの状態があります。でも、計算を始めるにはまず、珠を一つ上げなければなりません。ゼロからは何も始まらず、一上げるところから始まります。

俺はやっぱり、「一から始める」ほうが、しっくりくるし、好きです。

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