宇宙開発は数年掛かりで開発します。
しかも、打上げロケットや打上げ軌道が決まっている場合は、スケジュールをずらすことが難しいのが現状です。
数年掛かりといえど、かなりタイトなスケジュールを強いることが多いんですね。
そのスケジュールの中で、機能を追加させることは難しいのですが、実際よくあります。
初期検討では検討に入らなかった詳細な部分が実はかなりクリティカルであることもあります。
今回は、機能を追加して、成功した(失敗の確率を低減させた)実例を紹介します。
概要
火星探査機であるマーズエクスプロレーション‐ローバー(MER:Mars Exploration Rover)の設計者は、火星の風がかなり不確実であったため、水平方向の動きを直接感知する機能を追加しました。
火星に着陸する際に、火星の凸凹した地形に接触するリスクを減らすためにこの機能が追加されたのですが、打上げわずか1.5年までに再設計されました。
不確実な環境のリスクを分析し、ワーストケースを考慮して、マージンを多く取って対処するように設計しました。
発生の対応・処置
火星探査ローバー(MER)の大気圏突入と大気圏降下、および火星への着陸は、地域の環境条件に関して限られた知識で検討されました。
MERの設計者は、火星の風速とその影響に対しての情報不足に直面しました。
1997年7月の火星探査計画での大気圏突入、大気圏降下、火星着陸の検討で使用された火星の風の検討に使用された推定値は、フロリダのケネディ宇宙センターで風と大気圧の高度情報の記録を利用しました。
この地球データは、最も一般的に利用されている包括的なデータセットでした。
7年後、、利用可能な最も包括的なデータセットでした。
以降の火星探査計画において、想定される風の状態に対する火星の地形に対するモデルの情報を受けました。
7年後、MER EDL計画は、さまざまな想定される火星の風の状態に対する既知の火星の地形の特徴の局所的な影響の新しいモデルの恩恵を受けました。
ただし、これらのモデルは、実際の火星の天気で検証されたことはありませんでした。
火星の大気圏の下層で風向や風速が変化して(ウインドシア)、火星が下降する着陸船が斜めになった場合、降下を遅らせるためにロケット補助降下を水平方向に推進して、着陸時に地形に接触する可能性がある懸念がありました。
地面の落下試験では、水平方向に推進しても、岩石の衝突に耐えうるエアバック効果(衝撃吸収)が小さいことが分かりました。
そこで、斜めに落下しないように、着陸船に3つの小型の推進装置をバックシェルに追加しました。
3つの推進装置は、バックシェルに搭載し、水平方向に大きくブレないように、任意のタイミングで噴射するように設計しました。
推進装置をを制御し、風による影響をキャンセルするために、打ち上げのわずか1.5年前に、落下画像から姿勢を推定するシステムの追加を決定しました。
このシステムは、着陸前の数秒間、着陸船の水平速度を確定するために連続した3枚の写真を撮っています。
ローバーに搭載されている穏やかな風を感知する機能は、MER着陸の成功に寄与したことまで証明することができませんでした。
MERのオプチュニティ着陸船は、着陸した火星の平野で強い風を受けなかったため、追加で設計したシステムを起動させることはできませんでした。
しかし、MERのスピリット着陸船は、強風を検知し、システムを起動させました。
実際のMERによるデータから、西向きに風が吹いており、着陸時に北側に噴出しており、打ち消しています。
着陸船と探査ローバーにそれぞれ追加された機能を連携しなければ、火星表面にあるクレーターの傾斜を横切るために、エアバックを破り、ミッションに致命的な影響を及ぼした可能性があります。
Lessons Learned
試験や分析で、ミッション達成に対して、致命的な環境条件であったり、機器の機能に対して不確実な場合、初期検討の結果を再検討し、追加の機能を検討し、再設計(システム開発のかなり遅い段階でも)を行い、ミッション達成に向けて動いた方がいい。
推奨事項
主要な環境条件に対して、未知な部分を含めて厳密に評価する。
致命的なリスクがある場合、機能追加を受入れ対応することを考えてください。
最終的に、ミッション時のリスクを大幅に低減させます。
最後に
人工衛星の機能というのは大きく変わりません。
そのためにユニット化、人工衛星開発の界隈では衛星バス化が行われます。
宇宙業界でも未知の環境が減っていっています。
一方で、惑星探査系の宇宙機はまだまだ未知の環境があります。
地球を周回する人工衛星開発から、月面や火星などに進出する場合、この未知の環境を分析していくことが必要となります。
どこまで環境を想像できるのかにかかっています。
ただ、これは探査機だけではありません。
新しく人工衛星を開発する組織でも十分に活用した方がいいと思います。
たとえ、スケジュールが厳しくとも、致命的なリスクが発生した場合は、柔軟に取り入れるマネジメントが必要です。
まあ、人工衛星の製造能力や資金力が高ければ、失敗をすぐに次号機に反映していくのですが、日本では難しいかな。
参考サイト
NASA Lessons Learned
https://www.nasa.gov/offices/oce/functions/lessons/index.html
NASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)
Procurement of Nonconforming Titanium Alloys