中世の機械工学と宇宙につながるもの
中世の機械工学で生まれた技術という記事を見つけたので、宇宙に絡めて紹介しようと思います。
記事によると、中世は機械工学において、大きな技術革命が発生した時期ではないと多くの人にとって考えられているようで
中世は、ローマ帝国崩壊(西暦476年)からルネッサンス前の時期(西暦1300年代)といわれており、多くの戦争を挟んでいたことから発明の記録も少なくなっているそうです。
その中で記事の中では19つの機械工学を上げています。
- マンゴネルカタパルト
- トレッドホイールクレーン
- 手押し車
- 船の舵を船尾に取り付ける金具である"ピントルとガジョン"
- 潮の満ち引きによる水車工場である"潮汐ミル"
- 水力で一定の時間間隔で歯車を回転させ"液体駆動型脱進機"
- 天体観測機器である"アストロラーベ"
- 航海用のコンパス
- 可動式の文字の印字機械
- ヨーロッパでの機械式時計
- 眼鏡
- 砂時計
- 農業の土壌を耕す農具であるモールド・プラウやヘビープラウ、ターンプラウ
- アーバンレストクロスボウ
- 糸紡ぎ車
- チェーン式ウォーターポンプ
- リボドゥカンと呼ばれるオルガン砲
- カウンターウェイトを用いた固定式向上兵器であるトレビッシェット(平衡錘投石機)
- 跳ね橋
名前も聞いたことがないものが多いのですが、おそらくリンク先であるwikiを確認しますと、中世ファンタジー世界でよくある技術なんですね。
大砲系が多いのは、戦争が多かったからなのでしょう。
無理やり繋げて中世機械工学と宇宙の技術
一つはアストロラーベです
特定の地点における太陽の位置や恒星をはじめ、天体の位置を知るための道具なんですね。
占星術によって使用されていたようで、ある年月日のある時間での天体の位置を把握し、水平線からどの星座が見えるかも情報として取得できたようです。
無理につなげるならば、火星などの太陽系の惑星の軌道を地球視点で計算できる装置といえるでしょう。
まあ、太陽中心の軌道までは分からないので、目的の惑星まで到達できない可能性が高いですが。
次に時計です
時計は機械式時計と砂時計が実用化されています。
人工衛星において時計の情報は重要です。
地上局側の時計や、人工衛星自身でカウントしている時計、GPSと呼ばれるGNSS(全休測位システム)による時計などを利用して、時計のずれの情報から位置を情報を取得することもできます。
人工衛星内部に搭載されているシステムによって使い方が違うのですが、地上局側の時計では運用時間を管理します。
人工衛星自身でカウントしている時計(時間)で、ロケットから分離した後の挙動のタイミングや地上局の時間と連動することで、地上局からリアルタイムで時効せずとも、時間をトリガーとしたミッションの実行をしています。
GPSの時計から、地上局と通信取れない場合での時刻情報の更新や姿勢制御モードを変更させるトリガーや、人工衛星同士のコンステレーションによる連携にも使用されることもあります。
カタパルトにしてマスドライバー
投擲・投石のためのカタパルト(投射機)はミサイル砲の起源とも言えます。
人工衛星というか宇宙へ、軌道上へ打上げるにはロケットを使用することが定石です。
重量物を打上げるという意味では、ロケットとカタパルトは遠い親戚といえるのかもしれません。
とはいえ、まだ実現していませんがカタパルトによる打上げ方式の考え方は既に存在しています。
マスドライバー(Mass Driver)といわれる考え方です。
SF小説をはじめ、ファンタジー世界では言葉が登場しているため、聞き覚えのある人もいるでしょう。アイディアの原型は、1865年のジュール・ヴェルヌの月世界旅行という作品だそうです。
ロケットでは打上げから徐々に加速して第一宇宙速度に到達していくのですが、マスドライバーでは、地上で第一宇宙速度(以上)で加速した物体を投擲します。
第一宇宙速度とは、地球の重力を脱出するために必要な速さなのですが、秒速7.9kmほどになります。
だいたい90分ぐらいで地球を一周できる程度の速さになります。
実現できていない課題の一つに、第一宇宙速度を地上で出すにはどうすればいいのか研究の域を出ていないのです。
NASAでも研究がされていたようなのですが、レールガンを使用することなどを検討していたようですが、実用化まで至っていないようです。
ちなみに、詳細は不明らしいのですが、アメリカのスタートアップであるSpinLaunch社でカタパルトによる打上げが計画されているそうです。
実用化できれば、現在のロケットよりも早く宇宙に飛び立てる可能性があります。
ロケットのようなエンジンも大量の燃料も不要になります。
軌道上で軌道制御を行うだけの推進力と、打上げに耐えられるボディ、目的の軌道で人工衛星を放出できる機構、レールガンであれば加速に使う大量の電力と加速に用いるであろう大量の超電導材料かつ冷却能力があれば問題ないのです。
…意外と課題ありそうですね。
参考資料
宇宙スタートアップ、SpinLaunchが3000万ドル調達へ――リング状カタパルトで衛星打ち上げを目指す | TechCrunch Japan