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人工衛星の設計・製造・管理をしていた宇宙のシステム・機械設計者が人工衛星の機械システムや宇宙ブログ的なこと、そして、横道に反れたことを覚え書き程度に残していく設計技術者や管理者、営業向けブログ

航空宇宙光学システムの超精密ダイヤモンド切削・研磨技術 | Lessons Learned

ダイヤモンド切削とは、ダイヤモンド工具を利用して物体を削る技術のことを指します。

 

ダイヤモンドは炭素により構成される構造であることから高い熱伝導率を持ち、削る対象に対して熱を拡散させながら切削することができます。

 

切削により発生する物体間の摩擦による熱は、切削対象に熱を蓄積させ、変形させたり、劣化させる可能性があります。

特に高い精度を求められる部品に対しては、切削による熱を調整するために、切削速度を調整することもあります。

 

ダイヤモンド工具を利用することで、他の工具では歪んでしまう対象も、比較的歪みにくく切削することができるため、有効活用されています。

 

人工衛星や宇宙探査機、宇宙望遠鏡は、非常に離れた対象の情報を取得します。

非常に多くの情報を入手するためには。より多くの光を集める必要があり、大きなレンズが必要になります。

大きなレンズによって集められた光を集約させるために、計算された曲線により光を集める必要があります。

歪まない、ぼけのないデータを入手するためには、レンズの形状まで計算しつつ整える必要があります。

 

そこでダイヤモンド工具が使用されるのですが、今回の紹介はダイヤモンド工具を利用した切削技術の情報がありましたので集めてみました、。

[目次]

 

Lessons Learnedとは、組織(に関わらないですが)において業務を遂行した上で得られた教訓(学んだ教訓)のことを指しています。

得られた教訓というと、失敗や不具合だけを想像しがちではありますが、成功したことについても教訓としてあげられます。

Lessons Learnedは同じ失敗を繰り返さないようにすることと、計画が順調に進んだ成功要因を共有することの2つがあります。  

NASAで公開されているNASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)から、宇宙業界に限らず、工業製品でも適用できそうなLessons Learnedを集めてみました。 

高品質の光学レンズとは

高精度の光学システムを製造するには、ダイヤモンド工具を利用し、厳密に制御された切削プロセスにより信頼性の高く、良品質のレンズを製造することができます。

 

良質な光学システムを製造することができれば、様々なアプリケーションに適する頑丈で温度補償型のアクロマティック(アクロマート)光学レンズを製作することができます。

 

レンズには、光を集めて一つの焦点に集める役割を持つのですが、レンズの製作精度や周囲の熱環境など様々な事情で、完全に光が集まらない現象を収差と言います。

集めた光の色によって生じる「色収差」、光の色によらず生じる「(単色)収差」があります。製造による歪みにより発生する収差に球面収差、コマ収差が発生します。

 

アクロマティック光学レンズとは、収差が発生しない(収差を除去する)ように、設計されたレンズのことで、主に色収差を除去したレンズのことをいいます。

ダイヤモンド切削技術に有効に働く観測機器

ダイヤモンド切削技術は、金属、樹脂、および高品質の光学表面を成形するための製造プロセスです。

 

ダイヤモンド切削技術は、切削工具を使用して、光の波長の何分の1かの精度で精密加工する機能を備えており、高品質のレンズの製造に適しています。

 

ダイヤモンド切削技術による表面仕上げ品質は赤外スペクトルの中波長から長波長領域の光学部品に適しています。

表面仕上げとは、荒い切削により大まかな形状を成形し、いくつかの工程を得て、最終的に表面上の加工を行い、外観や最終性能を整えることといいます。

 

ダイヤモンド工具による加工は、取り付けボス、位置合わせフランジ、およびリブ補強材を含む構造基板上にミラーの反射面を加工することができるため、金属ミラーの製作に有効です。

振動用の影響を低減する

コンポーネントを加工できる精度は、工作機械の動的な動きをワークピースで制御できる範囲に部分的に依存します。

 

ダイヤモンド旋盤に悪い影響を与える振動は、旋盤機械自体を補強するか、防振マウントに取り付けることで最小限に抑えることができます。

 

振動を減らすには、花崗岩のブロック、または防振材で囲まれた地下のコンクリートブロックに機械を取り付けることが有効です。

 

ダイヤモンド旋盤に加えて、高精度のレンズを製造するためには、剛性やバランスの取れたエアベアリングスピンドル、ストレートスクエアウェイなどの工具、レーザー干渉フィードバックを使用した制御装置なども含まれます。

温湿度の管理を行う

精度の高いレンズを製造するには、大気の湿度や大気圧といった微妙な変化にも影響を及ぼすことが分かっているため、均一の環境で加工する必要があります。

 

湿度だけではなく温度も管理すべき要素になります。

温度制御の失敗は、加工精度が失敗する最大の原因でもあります

温度制御は、加工部分だけではなくダイヤモンド旋盤機械全体も同一の環境にすることが望まれており、±0.01度に維持する必要があります。

 

ダイヤモンド旋盤機械だけではなく、切削する材料も温度環境の影響を減らすために、加工する前に、熱平衡状態にする必要があります。

加工精度に影響する機械制御パラメータと互換性のある材料

ダイヤモンド旋削による表面仕上げは、次の条件で決まります。

  • 切削工具の半径
  • 切削送り速度
  • 切削深さ
  • すくい角(切削対象の面と切削工具が摩擦するときに切りくずを流しだす面との角度)
  • 工具摩耗
  • 切削油の安定した供給
  • 機械自体の剛性
  • 機械加工される材料

ダイヤモンド旋削と互換性のある材料

炭素を含む金属は、機械加工の高温により炭素とダイヤモンド工具に化学反応が発生するため、機械加工が困難となります。

切削工具の速度設定

切削工具の回転数は切削速度の影響を受けません。

 

円形プレート面を切削している場合、鏡面反射仕上げ(面の凹凸なく仕上げる加工法)を維持しながら、外周の縁(ふち)より4572メートル/分の切削速度で進めていき、プレートの中心でゼロとなるように切削速度を制御していきます。

 

通常は、前工程の切削によるダメージを減らすことを目的として、徐々に細かい切削にしていくプロセスを組んでいます。

この工程では、127~510ナノメートルシャープペンシルの芯以下)の仕上げの深さを求められることも少なくありません。

 

送り速度(切削工具を移動させる速度)は、工具のサイズと形状が許す限り大きくすることができますが、通常は1回転あたり0.25ミリメートル未満で設定されます。

機械や工具の剛性(強度)

剛性のある工作機械は、ダイヤモンド旋削の重要な部分です。

 

振動や突然の衝撃により、ダイヤモンド工具に不意なダメージを与えることになり寿命が短くなります。

 

高い切削速度には十分なスピンドルパワー(工具を回転させる軸の強度)が必要であり、剛性が高ければ刃先への圧力が軽減されます。

工具の切削油と工具の管理

切削油の使用は冷却と摩耗を減らし、切りくずの除去を助けます。

最も一般的な切削油は、ジェット燃料と軽量の機械油です。

 

ダイヤモンド工具の刃先は、取り扱い中やセットアップ中の不注意による損傷から保護するために、使用しないときはプラスチックまたはゴム製のキャップで覆っておきましょう。

ダイヤモンド旋盤と標準の工作機械

ダイヤモンド旋盤を標準の工作機械と区別する設計上の特徴は次のとおりです。

  • マシンベースの剛性と安定性
  • スピンドルの精度と再現性
  • スライドの精度と再現性
  • サーボ性能
  • 振動制御
  • 温度管理
  • 位置決め精度
  • ツールのサポートとセットアップ

 

外部振動は、スピーチの音波でさえ、ダイヤモンド旋削加工品の表面仕上げに影響を与える可能性があります。

 

3点空気圧ダンピングシステムは、機械からの振動と衝撃を分離し、スライド位置とワークピースの重量の変化に対応するための自動レベリングを提供します。

 

さらに調整するのであれば、シミュレーションと有限要素解析を実行して、機械の剛性と固有振動数を調整したうえで構築します。

 

巨大な切削対象の場合、複数回にわたり切削工程を繰り返すことになるのですが、回転数や切削仕上げの精度を再現するには、静水圧を調整するスピンドルも必要になります。

 

油圧供給ポンプによる振動を防ぎ、発熱を抑えるために、圧縮された空気の流量を調整する軸受けであるエアベアリングを利用します。

 

どちらのシステムも、10マイクロインチ未満の回転精度を得ることができます。

 

切削工具との振動を除去するために、各モーター駆動の際に発生する振動メカニズムを分離する必要があります。

 

マシンのスライドは、1マイクロインチ以下に制御するために、切削工具とスピンドルの間でスムーズに動かせるように、モータの制御を行う必要があります。

 

まとめ

光学システム(光学レンズ/光学素子)を切削・研磨する際に、マシンの環境やマシン自体発生する振動から保護しないと、性能が劣化し、信頼性そのものも低下しる可能性があります。

 

光学システムは、観測装置の性能に直接かかわるため、性能が劣化した場合、最終的な性能未達となるため、製造のやり直しが発生し、コストが増え、スケジュールの遅延を引き起こします。

 

超精密ダイヤモンド切削技術を含めた製造技術は、従来の光学レンズの切削および研磨より徐々に変わっています。

 

以前の手法では製造できないような精密な解説、屈折、反射、高性能な光学部品を早く製造することができます。

新しい手法で製造された光学素子は、厳密に制御された環境で機械加工されることで、信頼性、耐久性、および精度を向上することができます。

 


 

最後に

 

参考サイト

NASA Lessons Learned

https://www.nasa.gov/offices/oce/functions/lessons/index.html

NASA Lessons Learned Steering Committee(LLSC)

https://llis.nasa.gov/

ダイヤモンドペレット研削工具(MF

https://technology.nasa.gov/patent/MFS-TOPS-83

https://llis.nasa.gov/lesson/755