働いて 自分で稼いだお金で 家賃や住宅ローンを払い、光熱費や食費や そのほかもろもろの生活費を自分でやりくりしている、…という状態を 「まとも」 と定義するのだとすれば、この短編集に出てくるのは 「まともではない」 人たち。

 

収入がなくても 生きている以上、お金がかかる。 だから どの人も、家族など周囲の支援や、公的支援にたよって生きている。

 

けれど、登場人物のだれも、それぞれに、自分が働かないことについて 明白な 主張がある。 つまり それぞれ当人にとっては 正当な理由があって、働かないのだ。

 

もし あなたが 、定職に就き、自力で日々の生活を営む =上記の定義するところの 「まともな人」 なのであれば、こうした「確信犯的 無職・無収入」の人たちに対して、多かれ少なかれ一種の違和感や反感を感じるだろう、

 

私も 同じである。

 

けれど、読み進めていくうち、それぞれの登場人物に、親近感がわいてくる。 まぁ、そういう生き方、そういう思想も、ありなんじゃないかな? と思えてくる。

 

そしてついには、 冒頭に定義したいわゆる 「まともな人」 と 「まともではない人」との 公然たる、あるいは暗黙の 分断みたいなもの のほうが 不幸であって、むしろ 僕らは その両者が折り合って生きていけるよう 幾つか成熟のステップを上がったら もっとずっとハッピーになれるんじゃないか?

 

そんな気もしてきた。

 

プラナリア

山本文緒

文春文庫

 

 

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