sig de sig

万年青二才の趣味三昧、走る、作る、観る、聴く、憩う。

チプカシの人あたり

作業用時計としては不採用となってしまったチプカシ君はどうなった?
「どなたでも出来る簡単な軽作業。時給応談」にでも使われているのか?
はたまた引き出しの奥に眠っているのか?

そうではない。

老父母の家に介護に行く時に腕に巻くようにしている。
大工作業ほどハードさは要求されないし、薄くて軽くて楽だから。

それだけではない。

介助の場面ではコイツの肌あたりの良さが活きる。薄いから引っ掻けない。多少擦れてもウレタンバンドにプラケースは相手の肌を傷つけず、プラ風防だから触れてもヒヤリとしない。そう言えば看護師などの腕にチプカシを見掛けることも多い。医者は、、、流石にいない様だ・・・

それだけではない。

身につけている自分もどこか温和で優しい気持ちにしてくれる

これは何より一番の利点だと、最近思う様になった。
チプカシ特有の押し出しのない、ライトで平穏な感覚が丁度いい。

親の介護とは、側から見るほど微笑ましいものではない。本音を吐いてしまえば、イライラする事が多い。つい腹を立ててキツい言い方してしまう時だってやっぱりある。そして後で悔やむのだ。

経験のある人ならわかって貰えると思う。

年寄りのことは他人任せにして別天地でノンシャランと暮らしたい、誰だってそうだ。
なんで俺がこんな事をしなければならんのだ、なんで俺が、この俺が・・・
そんな、「俺が俺が」のトゲトゲしい我執は、

権勢欲や虚栄心とは無縁のチプカシを巻いて行くと薄れる。

強欲な不動産屋相手に渡り合うならオメガやロレックスもアリだろう。夜の街でひけらかしたいならブライトリングでもなんでもして行きゃあいい。そんな吸血ツツガムシみたいな連中とは縁を切ることが出来た自分は幸いだ、とは思っているが・・・
年老いた父母を支える身にはチプカシが一番しっくりくる。

引退して何か人の助けになる事をしたい、と半ば本気に考えている。
自分を大きく見せたり、人の腹を探ったり、上前をハネたり、酷く罵られたりしないでいい。
その時にはチプカシだな。
羨んだり、妬んだり、自慢したり、見下したりしないでいい。
色んな束縛から解放され、心が自由になれる。
誰にでも分けへだてなく優しく出来そうだ。

リベルテ、エガリテ、フラテルニテ・・・

ソウイウ モノニ ワタシハ ナリタイ・・・