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万年青二才の趣味三昧、走る、作る、観る、聴く、憩う。

SEIKO 5_その4「地上の星を磨く」

50年前のSEIKO 5から機械部分を取り出した。

次は外装の金属ケースを磨くことにする。

まずは平面でやりやすそうな裏蓋で小手調べ。

小傷だけなので軽くサンディングスポンジをあて、リューターで青棒、ピカールなどをつけてバフがけ。そこそこ綺麗にはなった。

お次は本体ケース。

やはり傷は多く深い打痕も見られる。

これらの傷あとは前の持ち主との暮らしで付いた、いわば過去の記憶である。自分の所で再スタートを切るのだから、過去を全て引きずるのではなく、ある程度は自分の手できれいにしてやりたい。

しかし深い傷まで消そうとすると番手の荒い金属ヤスリが必要となる。あまりゴリゴリやるとエッジの稜線がナマクラになったり、形状が崩れたりする恐れがある。

何も新品同様にしたい訳ではない。それならケースを部品交換すれば話は早い。SEIKO 5の新品が欲しいなら1万円ほどで手に入る。

それぞれの傷はこの腕時計が生き抜いてきた半世紀の歩みである。取りきれない傷があるならそれも含めてこのSEIKO5の歴史だ。

400番のペーパーに当て木をして面に水平に当て、地道に削る。ムクのステンレスと調べがついているからできる事で、真鍮にクロムメッキだと一発で剥がれてアウトだ。

ガラス回りのリングの傷がどうしても上手く削れない。ガラス面が邪魔で半円状の曲面にペーパーが当てられないのだ。本来ならガラスを外すべきだろうが、それには特殊工具が必要となる。

400番800番1200番と段階的に進めていく。磨き傷が残っていれば前の番手に戻ってまたやり直し。これを繰り返す。削るうちにやはりどうしても稜線のシャープさは失われてしまう。金属は硬い。それもステンレスだからなおさらだ。プラとは違う。ステンレスに比べればプラモ磨きなど子供のお遊びだ。

かなりヘコタレてきた。趣味でやってる事だから、あまりに苦痛が過ぎると手が止まる。ヘアラインにして逃げる事も考えたが、元々がきれいなポリッシュなのでそれを尊重する。

2000番あたりで青棒+綿棒+リューター掛けにスイッチ。

大きな面には青棒バフがけ。

テロっとした輝きが出た所で一旦終了。

最終仕上げはこの後ガラスを磨いた後に回そう。

金属研磨は回転数と研磨剤の組み合わせなど、奥が深い。本来は自分のような素人がDIYレベルで手を出せるものではなく、自分で買った中古のSEIKO 5だからこそ気軽に出来る事だ。

高級時計ではおススメしない。一応、念の為