三連休を目の前である昨日9月22日に政府・財務省は円安を食い止めるためという名分で為替介入を行いました。為替介入は財務省が外国為替資金特別会計(外為特会)として保有している外貨証券の売買で行い、今回のような円安是正では保有している外貨証券を売り払って行います。

為替介入を発表した鈴木俊一財務大臣

神田真人財務事務次官

 

しかしまあ、これをやっても数日以内にまた円安に戻ってしまうでしょうねえ。介入直後の時点では145円から140円にまで円が上がったようでありますが、こうした介入の効果は過去の例をみても短期間しか得られませんでした。そもそも市場には政府が売買する量の何倍ものお金が溢れていますし流動しています。為替介入は「大河の一滴」に過ぎません。

 

為替レートはいかにして決まるのかといえば、各国にある中央銀行の金融政策の姿勢や態度の違いです。相手があることで自国の金融政策や為替介入でどうにかなるものではありません。いま「円安が」と騒がれていますが、むしろ米ドルが世界の中でも突出して高くなっているといった方がいいでしょう。

 

現在アメリカでは高インフレと景気過熱がなかなか収まらず、中央銀行のFRBは金利引き上げを繰り返しています。当面FRBが金融政策の引き締めを続けていくだろうという予想や期待ができています。欧州もECB(欧州中央銀行)が利上げに踏み切りました。日本の日銀については欧米に比較してインフレの加速がひどくないことや、国内景気の回復が十分でない点を踏まえ、金融緩和政策を継続する姿勢を貫いています。

 

このブログで説明してきたことですが、戦争や産出国の都合によって生ずるエネルギー資源高や天候不順等による生鮮食料品等の値上がりを金融政策で統治することはできません。日銀が政策金利を引き上げても、今年不作の玉ねぎとか不漁のサンマ、ウナギの値段が下がるわけがないからです。金融政策の判断で重要なのは物価や為替だけではなく、企業の事業・投資意欲と雇用状況をみることが大事です。

金融引き締めでコロナ禍後のインフレを抑制できるのか? | 新・暮らしの経済手帖 ~経済基礎知識編~ (ameblo.jp)

 

 

日銀黒田東彦総裁

 

ともあれ外為特会を使った為替介入や金融政策を使った為替操作は政策的に非常にナンセンスなものです。「円安を放置したままだと物価が上がる一方じゃないか」と言いたい人は山ほどいるかと思われますが、最終的に大事なことは消費者が望む必要な財(モノやサービス)を入手しやすくするなり、家計の圧迫を小さくすることにあるでしょう。強引に金融政策を引き締めて円安是正や物価下落ができたとしても、雇用が悪化したり、賃金が下がって財が購入しづらかったら何の意味もありません。日本の場合は需給ギャップがまだ開いている状況ですので、その分の財政拡大余地はあります。円安によって打撃を受けている企業がある一方で、恩恵を得ている企業もあります。そうした企業が支払う所得税収や法人税収が増加するでしょうし、節税のために従業員に賞与やインフレ手当を支払う企業も出ています。さらに今回取り上げた外為特会ですが、保有していた120兆円ほどの外貨資産が円安で数十兆円ほどの大きな含み益を発生させています。これを財源に給付金などの家計支援や中小企業への補助金を支給することが可能です。

 

「日本の経済力が弱くなったから円安になった」とか言う人がいたりしますが、「急がば曲がれ」で景気の回復をしっかり進めて、高い金利負担ができるほど企業が十分収益を確保できるようになれば、日本も金融緩和をテーパリングさせることができるでしょう。筆者もそれがいちばん望ましいと思っています。

 

為替介入なんて・・・・

 

 

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