【Sultanate of Oman episode 2】Khasab ハサブでの日々 悪路、スタック 、居候

こんにちは、グレートエスケープ中の元勤務医です。

UAEからオマーンに入国し、北の飛び地ムサンダム半島で数日間過ごしていました。
オマーンに入ってから、ネットワークの調子が非常に悪く 画像のアップロードに膨大な時間を要するため 数日分をまとめました。
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Khasab の街

ハサブはオマーンの北の特別行政区 ムサンダム半島のほぼ先端に位置する街。
地政学的には対岸のイランと共にホルムズ海峡を挟む要所といえる。

なので15世紀以降大航海時代への突入で航路がどんどんと開拓されていく中、アラビア湾とインド洋を結ぶこの場所は航海者の良い休憩場所であり、17世紀は時の覇者ポルトガルが要港として占領していた。
というわけで、ポルトガル時代の名残や海岸沿いのリゾート的なイメージがあったけれど、実際に来てみると「ほとんどなにもない」という印象だった。

店はやってるのかやってないのか分からず、開いてても店員がいなかったり、とても寂れた雰囲気。

ポルトガル領の後、ペルシャ領を経て、オマーン帝国の手に戻るわけだけど、地域的には以前の記事で触れた休戦オマーンの由来となった海賊や水軍の首長たちが活躍していた場所でもある。
地政学的に重要であったムサンダム半島だけは、オマーン帝国国王によってしっかりと抑えられていたが故に、後にイギリスによって国境が敷かれた後もここがUAE領とならず、オマーンの飛び地として残った と解釈しているけど、なぜイギリス領とならなかったんだろう?
例えば、ジブラルタル海峡のセウタがモロッコ内でスペインの自治領となっているように、航路上の最重要地点は欧米列強によって抑えられていることが多い。
イギリスとしては、あくまで海賊による欧州船の襲撃がなくなり、安全な航海が約束されればそれでOKで、際立った産業のない山岳地帯を自国領とするモチベーションがなかったのだろうか・・・ にしても、今となってはアジアへの石油輸送においてはアラビア湾から出港した石油タンカーが必ず通る最重要ポイントだし、もしここを自国領としていたら、かなり大きな利権だったんではないだろうか とシロウトながら考えてしまう。
当然、日本に運ばれてくるアラビア産の原油も、このハサブを右手にしてホルムズ海峡を越えてやってきてる。

野良ヤギと野良ネコが共にゴミをあさる風景など。

ヤギはほんとにいきなり横断してくるから、日本の飛び出しボケ老人と同様要注意。

 

野良イヌもいる。

Khasab Castle

ハサブは2泊だけしようと思い、2日目にハサブ砦に行った。

ハサブ砦は17世紀ポルトガルによって建てられたらしい。

入口。
一応チケット代と支払い窓口があったから、入場料あるんだと思うんだけど、誰もいなかったからスルーした。
勿論Covid関連の提示はなし。

近代化する以前のオマーンの人々の暮らしが再現されている。

当時の井戸だろうか。

高床式の建物や、

当時のかまど、

半地下式の倉庫や心霊写真など。

ダウ船も多数展示されてる。
ちなみにダウ船は現役で、ハサブの街から海を眺めていると、近代的な船舶に交じって1本マストに三角帆の木造船がいたりする。

Khor Najd 挑戦するも・・・

ムサンダム半島はダイビングのスポットとしても有名なので、どこかで潜れないかなぁと思いつつも、なかなかそれらしき店がみつからず。
とりあえずハサブを後にして、さてどうしようかと考えるも、とりあえず南東側の山岳地帯へ行って可能であれば野営でもしようかと思案していた。

「アラビアのノルウェー」 という呼称もあるくらい入り組んだリアス式海岸は絶景ポイントがあり、その中でも自走で行くことが可能な Khor Najd というポイントを目指してみる。

しかし、途中から思った以上の勾配&ダート。

雨の影響がまだあるんだろうか、まじかよ という大粒の小岩などで前輪をとられる。
※降りて写真を撮る余裕がなく、GoProの切り抜き。
そして、

チーン・・・

シチュエーションとしては最悪で、路面は中央に対し凸で、脇の大砂利みたいな窪みにタンクが下を向ける形でこかしてしまった。
しかもこの砂利、写真でみるよりもろく 踏ん張ってもサラサラと崩れていく。
MOTOWINCHである程度まで持ち上げても、全く踏ん張りがきかない中 山の斜面に直で太陽が降り注いで体力切れ。
しかも写真を撮る余裕が無いからといって写真を撮らないという絶対にやってはならないミスをしてしまった。

やれやれ こういう時はまず座って一息いれよう

などと岩に腰を下ろしてただボケーっとしていると、
岩山の上からランクルらしき車がドコドコとやってくるではありませんか。

その後どうなったかは、この写真での想像におまかせします。

てかこの子たち、15~6歳にみえたけど、荷台に得体の知れない魚(小さいサメみたいなの)積んでこの悪路を走ってくるとはなんてたくましい。
とりあえず、登頂を諦めて引き返すことにした。

Jebel Al Harim で スタック

Khor Najd から引き返し、さてどうしようかと改めて考える(行き当たりばったり)。
一度UAEに再入国するとしたら、元来た道を戻って Al Dhara ポイントへ行くか、地図的にはJebel Al Harim 山経由で越境できる道があるっぽい。
Khor Naji を下りた後休憩している時にオレンジとリンゴと水をくれたおじさん曰く、同じような悪路だよ との事。
しかしまぁとりあえずは行ってみるか、とJebel Al Harim へ向かう。

相変わらずのダートだけど、これならなんとかなりそう とか思いながら上っていくも、

チーン・・・

いや、そんなスタックする路面じゃなくね? って思うと思う、
管理人もそう。でも、ところどころ大粒の砂利というか小岩がパウダー状の砂の上に乗っただけみたいなスポットが沢山あってそれにハマってしまったらしい。

荷物全部おろして、空気圧ガンガン下げても全くダメ。

やれやれ こういう時はまず座って一息いれよう

と自立するテネレを呆然と眺める が、場所が場所なだけに誰もこない。
幸い傾いた日は山肌で遮られ、たまに吹き降ろす風が気持ちいい。
こういう時って焦ってもしょうがないので、ぼんやりと考え事でもするのがいい。
つい数か月前は顕微鏡覗いて日々診療していたのに、今はオマーン山中でバイクスタックさせて座り込んでる。

人生ってのは、「選択」とそれを押し進める「行動」でこうも変わるもんか などと思っていた矢先、

ジモティーという名の救世主あらわる。
我らがトヨタ 我らがランクル

後方への牽引という形で窮地を救ってくれた、まじでありがとうございましたm(_ _)m
救世主がスマホで見せてくれたんだけど、更に上はブルドーザーとショベルカーが出張っている状況で、行かないほうがいいよ という感じだった。
行きません。

Asif との出会い

Khor Najd での転倒、Jebel Al Harim でのスタック、もうクタクタ~ だけど、この日は宿もとってないしどうしようか、
山の上が比較的涼しくて望ましいけど、無理っぽいから海岸沿いのビーチで野営をしようと Khasab方面へ戻る。

途中、店によって水を買って飲んでると ひとりの青年が声をかけてくれた。
彼の名前は Asif .
バイクで旅していることを伝えると、夕飯まだなら一緒にどうかということで ハサブに一緒に向かう。

食べながら、

これからどうするんだ?

いや、特に決めてないけど、海沿いで寝ようかと思ってる。

まじか、じゃあ家にこいよ 泊めてあげるよ

という。

こういう時、その人を信用していいかの判断は難しい。
だけど、このときは彼を信用することにした。
Asif の家は Khasab から少し離れた Bukha という街にある。

Asif はパキスタン人で建設会社に勤めてる。本社はマスカットにあるらしい。
彼の宿舎のうちの一角を使わせてもらうことにした。
雑多ではあるけど、暑さをしのげる寝る場所をタダで提供してくれるというだけで本当にありがたい。

夜、Asif とルートの相談をしていると、
フェリーでShinas や Muscat へ行ってみてはどうか?
と提案される。

もともとは一度UAEへ再入国してからオマーン本土へ再入国しようかなとか考えていたのだけど、
前記事で触れたように管理人はムサンダムへの入国時にeVisaを使ってしまったのだ。
完全にアホだった。
Single Entry と分かっているのに、ムサンダムで査証使っちゃったらオマーン本土ではもう使うことができないじゃん!
飛び地だから合算してくれるだろうと思い込んでいたけれど、それは無理だ。
だったらこのままUAEを経由せずにオマーン本土へ渡ってしまえば使った査証の有効期限をフル利用できる。
よし、そうしよう。

Asif の仲間たち

翌日、Asif は仕事だったので、彼の友達が車でハサブ港にあるNational Ferries Company の窓口へ連れて行ってくれた。

無事、チケットがとれた。Khasab → Shinas の片道で 13.63 OMR =約4800円と思ったより高かったが、軽食込みでバイクも込みなので、まぁこんなもんか。

ちなみにオンラインで検索しても、どのサイトからもKhasab → Shinas の航路は No Sailings と出てくるが、実際には就航している。

この日は火曜日、フェリーは木曜日の出航なので あと2泊 Asif家に泊めてもらうことになった。

仕事のやりとりにもなぜかついていき、アラビックコーヒーとデーツ、菓子などを貪る。
そんな不躾な旅人のことなど、一切意に介していない感じが助かるぅ。

いまAsifが担当しているプロジェクトを見せてもらった。
地元の病院に電気を供給するための大型発電機を搬入するための建物らしい。

Asif はいつか日本で仕事ができたらいいなぁと考えているけど、パキスタンの国籍だと日本のビザを取るのは難しいんだって。

また別のAsifの友達の車で色々まわって、

いろいろご馳走してくれた。
みんな本当に優しいなぁ。結局、Asif家に居候した3泊は一切お金をつかわずに過ごすこととなった。

Asif の同僚たち。
荷物を運んでくれたり、チャイを淹れてくれたり 彼らの見返りを求めない優しさは、彼らの金銭的な貧しさからどうやって推し量ることができるだろうか。
まぁ 物珍しいから、楽しいだけなのかもしれない。

おまけ

オマーンのコンセントは、UAEと同じく BF型。

ハサブの街でオマーンの現金も引き出しておいた。
ほとんどが休業中だったけど、HSBCのATMがあいていた。
オマーンの通過単位は OMR(オマーンリアル)とBaisa。

つづく

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