ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

オミクロン株と水際対策のこと

 日本では小康状態を保っているコロナ感染。昨日11月27日の新規感染者数は127人、死者1人。千葉県は新規感染者数2人。ここのところずっと一桁で推移している。政府は新型コロナウイルス対策の行動制限の緩和を発表しており、これを受けて飲食店での会食人数や滞在時間の制限の撤廃を決める道県が増えているが、本当に大丈夫かという疑念はある。隣国の韓国では感染者が激増しているし、ヨーロッパでも同様だ。
 先頃南アフリカで新たに発見されたコロナウィルスの変異株を、WHOは「オミクロン株」(αβγ…の第15番の文字ο)と名付け、その感染力の強さに警鐘を鳴らした。まだ不明なことが多いが、ワクチンが効かないとか、デルタ株を凌ぐ感染力があるなどと言われている。
 感染症専門医で大阪大学の忽那賢志(くつな さとし)氏が解説したYAHOOニュースの記事のなかに、南アフリカにおける変異株の検出割合の変化を示したグラフがある。

南アフリカから見つかった新規変異株「オミクロン株」 現時点で分かっていること(忽那賢志) - 個人 - Yahoo!ニュース

 氏の解説では、「オミクロン株」は今年の11月11日にボツワナで採取された検体から初めて検出され、その後、南アフリカで11月14日以降に採取されたサンプルからも検出され、ハウテン州(首都プレトリアと最大都市ヨハネスブルグがある)では、11月12日から20日まで行われた検査の77例全てがオミクロン株であり、(それから1週間後の?)現在検査されている検体でも半数以上がオミクロン株であることから、この地域では急速に、デルタ株からオミクロン株への置き換わりが進んでいると見られるとのこと。
 グラフを見ると、「オミクロン株」の割合が11月に入ってから鋭角状に伸びはじめて、月の半ばですでに0.75を超す勢いである。これは南アの話とはいえ、感染力がそれまでのベータ株やデルタ株の比ではないことを想像させる。また、ベータ株・デルタ株の前例にならえば、次の変異株が現れるまでの期間、おおよそ10ヶ月くらいの間は猛威を振るうことも予想できる。

 幸運にも新規感染者数が増えずにいる現在の日本では、とにかく水際対策に注力して、変異株の侵入を抑え込み、何とか経済回復軌道を維持しながら普通に暮らせるよう対策と準備を手抜かりなく進めていかなければならないところだ。ところが、「一月万冊」の佐藤章さんの話によれば、空港検疫を含めて、政府の対策は相変わらず「なってない」とのこと。初動の遅れが致命的であることや、第5波の際、自宅待機のままたくさんの人を死なせたことを教訓にするどころか、そもそも組織として反省すらしていないのかと疑う。アベスガ政権の誤りが総選挙ですべてリセットされ、忘却の彼方におかれたかのようだ。今後第6波が来るのは確実だ。1ヶ月後、どうなっているか。またまたの、さらにまた、同じことが繰り返されてしまうのだろうか。

 11月27日付「一月万冊」より。

専門家に緊急取材!日本は地獄になる・・・オミクロンコロナ変異株は何故怖いのか?感染力、重病化率は高いのか?日本の水際対策はザルだ!元朝日新聞・ジャーナリスト佐藤章さんと一月万冊 - YouTube

 佐藤…日本はどうかって話ですよね。昨日11月26日の朝日新聞によると、松野官房長官が「情報収集中である」と。そして、日本国内ではまだ未確認であると。…で、検疫強化、水際対策の強化を打ち出したわけなんですよ。水際対策というのは、アフリカの南部ですね。(オミクロン株感染者が)主に出ている南アフリカ。それからその北にあるナミビアとか、ボツワナジンバブエ。それから南アフリカの中にある飛び地の国、レソト、それからエスワティニ(旧名スワジランド)。この6カ国、ここを基本的には(日本には)入れないということなんですね。けれども、問題は、これを入れなくても、エジプトであり、香港であり、ベルギーであり、イスラエルであり、他の国でじゃんじゃか見つかっているわけです。そして、まだ見つかっていない国もあるんじゃないかというのも、常識的には当然予想される。こういうところに対する「水際対策」はどうなってるのか、ということなんです。
 …これね、日本の岸田政権の対応を見ていると、絶望的になるんですよ。この「一月万冊」でも散々やってきましたけど、厚労省の医系技官のまったく間違った対策。ここに来て、その対策のダメさ加減が問題になりますよ。まず、空港検疫、水際対策、これがまるでなってないんです。今言った6カ国(からの入国)を閉鎖したからって、他の国の人から入ってくるんですよ、まず間違いなく。で、その人たちをどうやって検査しているかというと、PCR検査じゃなく、抗原検査なんですよ。PCR検査は何度も何度も繰り返すことによって(感染の判別精度が)ほぼ100%に近くなる。それだけ見逃さない。けれども、抗原検査というのはそれがよくて50%、悪ければ30%の捕捉できる可能性しかないんですよ。だから、悪ければ、7割の人はそのまますーっと出てっちゃう。空港検疫、水際対策はまず最初の関門なんだけど、ここで止めるという望みがまったくないんです。…松野官房長官が、今は未確認だ、と言ってるんだけど、「未確認」というのは、あなたは「未確認」だけど、もうじゃんじゃん入ってるんじゃないの?と、ここでまず疑いが出るわけです。
 これね、何度指摘しても、抗原検査をやめないんですよ。これ(理由)を上(昌広 医療ガバナンス研究所)さんに訊いたんですよ。そうしたら、簡単に言えば、PCR検査は判定が大変じゃないですか。そうすると、検疫所とか保健所が大変なんですよ。その手間を省くために抗原検査をやってるという話なんです。
…これひどいと思いませんか。水際対策の担当者には社会的使命があるじゃないですか。担当部局、厚生労働省とか、医系技官というものは…。それを、社会的使命よりも前に手間を省きたいという(のが)動機ですよ。…これ、どこが水際対策の強化なんだと。あまりにバカにした話じゃないですか。

<以下略>

 今朝の毎日新聞(28日付)に、『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』の著者の一人、戸部良一氏へのインタヴューが載っている。

森健の現代をみる:開戦から学ぶ失敗の本質 今回のゲスト 戸部良一さん | 毎日新聞

  新型コロナウイルスへの対応で、政府の不手際がさまざまありました。それは『失敗の本質』で明らかにされた、旧日本軍の組織的問題に似ているとしばしば指摘されています。
 戸部 詳細がもう少し明らかにならないと、コロナ対策が「失敗だった」と断定するのは困難です。一時的かもしれませんが、感染者は減少していますし。ただコロナで失敗を挙げるなら、非常時にどう対応するかを平時に考えてこなかったことです。非常時を考え、用意をすれば、コストが高くなります。今回は、そういう日ごろの準備を省いてきたことが露呈しました。
  ワクチン開発がいい例ですね。開発には治験など膨大なコストがかかります。製薬会社など一企業だけでは対応できません。公的な支援が不可欠ですが、日本はアメリカなどに比べて極端に少ない。そのツケがコロナ禍で表れて、国産ワクチンが製造できず海外頼みになってしまった。また医療用防護服やマスクなども海外に依存していたことで、一時は大混乱になりました。
 戸部 外国で生産したものを買った方が安くすむ。経済的には合理性なのでしょうが、安全保障とのバランスが必要です。非常時や最悪事態に備えるには、お金もかかるし、人も回さなければならない。そのコストのことを考えると、国もためらいがちになることも分かります。平時には活躍できないわけですから、非常時に働く人たちのモチベーションを保つのも難しい。非常時のことを考えて、それを平時にも生かすことができるような工夫が必要ですね。

 愚行は何度でも繰り返されるとみんなで自嘲していても、この国はよい方向には進まない。それは確かだが…。



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