ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

日本の斜陽化 「高学歴」篇

 ロシア語を勉強していると、時々日本のことを「日出ずる国 Страна восходящего солнца」と呼んでいる場面に出くわします。ロシアに限りませんが、大陸の西方から見れば、東の端(極東)の島国・日本は太陽が最初に昇るところというイメージなのでしょう。呼ばれる側はこれに便乗して、Rising JAPAN などと国威発揚を重ねるのですから、まあ悪い気もしないのでしょう。しかし、こうした認識はこれから日本の内外でどんどん先細りしていくことになりそうです。特に2010年代以降に自己形成をしていく世代にとって、日本は、事実として、斜陽化をたどる国になっています。経済、財政、人口(出生率)……。そして、それは「学歴」(「人材」)についても当てはまるかもしれません。

 かねてより、日本で働く人々の賃金は「アメリカの約半分で、韓国より低い」と指摘してきた経済学者の野口悠紀雄さんが、日本はもはや「高学歴」とは言えない国と書いています。以下、6月5日付「現代ビジネス」の記事の部分要約です。

日本は「高学歴」とは言えない国、何が問題でそうなってしまったのか (野口 悠紀雄) | 現代ビジネス | 講談社(1/6)

日本人の学歴は、国際的にどの程度の水準か?
日本の大学(学部)進学率は、2021年度で54.9%だ(文部科学省、学校基本調査令和3年度)。これを他国と比べると、高いか低いか?
国際比較では、高等教育への進学率として、大学進学率でなく、tertiary eduction(第3期の教育)への進学率という指標が使われることが多い。
これを世界銀行のデータベースでみると、図表1< 略 >のとおりだ(日本について2018年のデータまでしか得られていない)
日本は64.1%で、先進国の中では高いとは言えない。OECDの平均が75.6%。アメリカは88.3%だ。また、韓国が95.9%と、きわめて高い値になっていることが注目される。日本の数字は、韓国の1.5分の1、アメリカの1.4分の1だ。
……

日本は学歴社会だと言われるが
日本は学歴社会だと言われる。会社の採用では学歴による区別がなされる。受験競争も厳しく、小学生からの塾通いも普通だ。こうしたことから、日本の高等教育進学率は他国より高いと考えている人が多いだろう。しかし、図表1のデータは、それを裏付けていない。
個人の立場から見ると、高等教育を受けていないために、能力を十分に発揮できない場合がある。だから、できるだけ多くの国民が高等教育を受けられることが望ましい。
また、国全体の立場から見ても、高等教育を受けて高度な能力を身につけた人材が多いことは、長期的な発展のために不可欠の条件だ。
このような観点からすると、図表1に見る日本の現状は、決して満足できるものではない。
……


日本では、修士・博士が少ない
さまざまなレベルでの学位取得者が人口あたりどの程度いるかの計測を、文部科学省、 科学技術・学術政策研究所(NISTEP)が行なっている。
前記OECDの統計が年齢階層別に比率を求めているのに対して、この計測では、ある年度の学位取得者を人口で割っている。だから、この指標が表しているのは、図表1と同じく、直近の状況だ。
この計測によると、2017年度において、人口100万人当たりの学士号取得者は、日本は4481人だ(日本全体では、56.2万人ということになる。これは学校基本調査による17年度の大学卒業生56.8万人とほぼ同じだ) 。
これは、韓国6594人、イギリス6312人、アメリカ6043人よりかなり低い。日本の数字は、韓国の1.5分の1、アメリカの1.3分の1だ。これは、図表1の場合とほぼ同じ比率だ。この計測で見ても、日本は先進国の中では低学歴国だということになる。
さらに問題なのは、修士・博士レベルの学位取得者比率が低いことだ。人口100万人当たりの修士号取得者は、2016年度で日本は569人であり、イギリス3694人、アメリカ2486人、ドイツ2465人より大幅に少ない。
博士号は、2016年度で日本は118人であり、イギリス360人、ドイツ356人、アメリカ258人に比べて大幅に少ない。

アメリカでは修士・博士の学位保有者が多い
上で見たように、アメリカでは、修士号、博士号の取得者が多い。これが研究開発の原動力になっていることは言うまでもない。
それだけでなく、実務の面でも、大学院レベルの教育が重要な役割を果たしている。これは、ロースクールビジネススクールなど、「プロフェッショナルスクール」 と呼ばれているものだ。大学4年の過程を終了した後に、修士レベルの教育を行う。
従来の修士課程が学者養成のための教育で、博士課程の前段階と位置づけられていたのに対して、プロフェッショナルスクールは実務での高度専門家の育成を目的とする。
こうした機関での教育が、生まれた時の社会的階層を飛び越えることを可能にしている。
アメリカでは、女性や黒人など、これまでマイノリティーと考えられていた人々の社会的活躍が目立つ。
様々な階級出身の人々が重要な地位に就くことは、社会の活性化にとって大変重要なことだ。その際に重要な役割を果たすのが学歴だ。アメリカは、高学歴社会であり、それゆえに活力があると考えることができる。

<以下略>

 過日お酒を飲んでいたら、隣の御仁が「自分の弟や妹は大学に行ってるけれど、自分は高校までしか出ていない。自分には学歴コンプレックスがあるんだ」と話していました。しかし、この方は、さる公的機関で責任ある部署を統括するお役目にあった人で、今も多くの人に頼りにされています。小生、思わず、「大学なんか出たって、まともに勉強していなければ、意味がないです。〇ベや〇ソを見てください!」などと口走ってしまいました。多少酔っ払っていて、勢い余ったとはいえ、「失言」だったとは全然思っていません。
 昨夜、以下の「ネトウヨの毒舌な伯父さんbot」さん作成の動画を見ていて、こういうのをのさばらせているから、大学で勉強して修士号や博士号をとっても無意味な社会になっているのだという思いがしました。この懐かしいCM曲を書いた小林亜星さん(寺内貫太郎)も、きっと天国で笑いながら怒りまくっていることでしょう。
ネトウヨの毒舌な伯父さんbot on Twitter: "桜がある、サントリーがある。
#サントリー安倍… "


関係ありませんが、「尾張おっぺけぺー」さんのTweetも傑作です。
https://twitter.com/toubennbenn/status/1533264615303704578





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