ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

参政党について

 今日6月23日は沖縄戦の犠牲者を悼む「慰霊の日」です。沖縄の人ではありませんが、一日静かに過ごしたい気持ちです。外では数日前からニイニイゼミが鳴き始めました。

 とはいえ、昨日、来月10日投票の参院選が公示され、ざわざわとした感じはあります。比例代表には15の政党と政治団体が届け出をしているらしいのですが、初めて名前を見たようなところもあります。「参政党」は今回初めて現れた政党ではありませんが、街頭演説で「立錐の余地がないひとだかり」ができて……と聞くと、「ふーん」と思い、少し調べてみようという気になります。

 6月20日毎日新聞のコラム「風知草」に、「『参政党』現象」という記事があります。引用をお許しください。

風知草:「参政党」現象=山田孝男 | 毎日新聞

……5月連休前から猛烈な速度で勢力を伸ばし始めた。
 マスコミにはほとんど出ないので参院選(7月10日投開票)の情報を新聞やテレビに頼る高齢者は知りようがない。半面、ネットが身近な50代以下の間で関心が高まっている。……
 参政党は一昨年4月に旗揚げした。街頭遊説が徐々に評判を呼び、今年4月後半からユーチューブ、ティックトックなどのネット動画で広まった。それも党の公式動画だけでなく、勝手に動画を撮って投稿する人が毎回数人から10人近く現れ、拡散が加速。
 やがて横浜・桜木町の街頭演説に1700人(5月8日。主催者発表)、東京・新宿駅西口に1200人(今月8日、同)が押し寄せる騒ぎになった。
 昨年末に1万人弱だった党員・サポーターが先週末で5・7万人。日本維新の会の党員3・3万人を超えた。クラウドファンディングなどで集まった資金が4億円。参院選に50人の候補者(全選挙区45、比例代表5)を立てるという。
    ◇
 党の中心であり、参院選比例代表名簿に登載される神谷宗幣(そうへい)事務局長(44)の遊説を動画で見た。神谷は訴える――
 「自民党公明党に頭が上がらない。他の宗教団体にもペコペコ。そんな政治家はやめた方がいい」
 「既成政党の議員は真実を伝えないマスコミと談合し、当たり障りのない論戦しかしないんです」
 政治を国民から遊離させる政党とマスコミ――をクサすたびに聴衆は沸く。積極財政、対米自立、反カジノで反ワクチンだが、特定政策に深入りはしない。
 <参政党現象>の源は神谷の弁舌である。大阪府吹田市議時代、橋下徹・元大阪府知事と教育改革で協力したという。2012年衆院選で大阪13区に自民党から出馬して落選した。
 会ってみた。指定の待ち合わせ場所はJR品川駅近くの喫茶店だった。神谷は白ワイシャツに党のイメージカラーである橙色(だいだいいろ)のネクタイを締め、ジャケットなしのグレーのベストとスラックスで現れた。
 1990年代以来、新党の興亡を見てきた私は「党運営はどのように?」と聞いた。神谷は「一言で言えばボクがいること。人は人でしかまとめられない」と答えた。党には3人の共同代表がいるが、意思決定の中心は神谷である。
     ◇
 参院選有権者は約1億人。うちマスコミと親和性のある65歳以上は3600万人。若い世代をネットでひきつける参政党の手法は他党を圧している。
 政策は明快なようでとらえにくい。以前あった具体的な主張が消えることがある。政策を固定的に示さないのは「一緒に作っていく感覚で参加して」もらうため(「参政党Q&A」青林堂)だというが、この説明は引っかかる。
 公式HPや政策本にはいいことも書いてあるが、不合理な短絡も多い。参政党は批判されても引力を失わない。「バカバカしい」と笑って見過ごしてよい現象ではない。

――その他、いくつか記事も見ました。
参院選で不気味な動き 「参政党」って何者?(ニュースソクラ) - Yahoo!ニュース
【参院選2022】泡沫のはずが大穴 !? 「参政党」議席獲得のサプライズあるか – SAKISIRU(サキシル)

 しかし、この党の選挙ポスターを見ていて「んっ!?」と思いました。この文言、確か90年ほど前の某党の「目覚めよ、ドイツ」を彷彿とさせます。
参政党 東京多摩支部(公認)🟠🌸 on Twitter: "張り替え作業中‼️
新しい選挙期間中の参政党ポスターです!

#参政党ポスター… "

そして、党のHP上で訴えている「正しい歴史教育」です。「日本はなぜ、世界最古の国か?」なる文言も見ました。「世界最古?」――そんな話は聞いたことがありませんが、仮にそうだったら何だというのでしょうか?
歴史教育勉強会 | 参政党

 そうえいば、前にもブログで書きましたが、飲み会で小生に絡んできた人もほぼ同じようなことを言っていました。「日本の歴史の授業はウソばかり教えてるよね」「わかってんの!」と。加えて、隣国のことを腐して、「だから、日本はいい国だ!」と言っていました。「正しい歴史」を、と言う人と、「日本はすごい、世界一」と言う人は奇妙に重なる気がします。 

 「フラット化する世界」という言葉がありますが、Webは専門家とそうでない人の垣根を取り払い、同じ土俵にのせてしまいます。以前は、本や新聞がそうであるように、活字になって世人に読まれる言説は、しかるべき人間が書き、何人もの人の目を通ったものだけでした。しかし、今はそんなプロセスは一切なしに、書いたものが即活字になって直接ネットに公開され、誰もがそれを見ることができます。書き手も読み手も対等平等で平準化されたこの世界は「玉石混淆」の世界でもあります。何の知識も持ち合わせない人が、「ダイヤモンド」と「石ころ」、真実とウソを見抜くのはなかなか困難です。専門家からすれば、荒唐無稽で話にならない言説が、放っておくと、知らぬ間に「主流学説」のようになり、逆に、手間ひまをかけた研究成果が、論の正否ではなく、受け手の好き嫌いのレベルで、あっさり「間違った説」にされてしまうのです。

 まず、この手のことを言う人たちに欠けていると思うのは、まともな研究に従事している人に対する敬意です。中には、一つのテーマに生涯を捧げて研究を積み上げてきた人もいます。そうした人たちの蓄積の裏付けがあって初めて導き出されたことを、まったく根拠のない与太話で否定するのは、冒涜と言ってもいい。祖先を敬えと言うなら、現実に生きている隣人たちにも相応の敬意が払われてしかるべきです。

 「日本大好き」「日本すごい」の自画自賛も疑問です。むしろ今は、「日本すごくない」という認識から出発しないと、立て直せないことが多々あるでしょう。教育では、子どもを褒めて伸ばせとよく言われますが、たとえば100点満点で10点の生徒を褒めて変な自尊心だけを膨らませ、肝心の勉強を疎かにさせたのでは、逆効果です。現実と向き合うことを避け、都合の悪い事実は、都合に合うように事実の方を変える――どこかの元総理大臣から始まった疾患は、国民のかなり深いところまで浸透しているかも知れません。

 以上、参政党を調べていて思ったことのメモ書きでした。

<追記>
 参考までに、資料として、令和2年分ですが、参政党の政治資金収支報告書も付けておきます。
https://www.soumu.go.jp/senkyo/seiji_s/seijishikin/contents/SA20220228/28.pdf

 夜のNHKニュースを見ていたら、某県の参政党候補者が「学校教育は学力中心ではなく、道徳中心に変えるべきだ」と、学力と道徳がさも二項対立であるかのように言っていたのですが、これ、有権者のみなさんも、そうだ、そうだと思うのでしょうか? ちょっと、ちょっと…と思いますが。



 
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