2021年コロナ禍における物流業界の動向

 コロナ禍で物流の重要性が再認識されているところだが、2021年の物流業界は果たしてどう変わっていくのか。動向を探っていきたい。

 物流業界の最大手といえば日本通運で、まさに業界の王様である。2020年の売上高は約2兆1000億円を計上している。前年よりも売上げを下げてはいるが、2兆を超えているのは、同社だけだ。国内、海外、そして産業別でもさまざま業種を扱っているので、コロナ禍とはいえ、余程のことがない限り盤石の体制は揺るがないだろう。むしろ、有事の今こそ、企業価値をさらに高めていくかもしれない。

 日本通運に続くのはヤマトホールディングスで、売上高は、約1兆6000億円を計上している。ヤマトといえば、1976年に宅急便サービスを開始、今でこそ当たり前となった宅配の元祖である。小口配送をメインにその後もBtoCサービスを拡充していき、国内にネットワークを築いていった。宅急便の生みの親である2代目社長の小倉昌夫氏が郵政と喧嘩をしながら事業を拡大したのは有名な話だが、個人宅への配送=クロネコヤマトの宅急便と浸透させたのは、企業イメージの浸透にも大いにプラスに働いたといえる。宅急便誕生から45年間に渡って築いてきた国内に張り巡らされた同社のネットワークは、他社の追随を許さない。BtoCで常に先頭を走る同社は、コロナ禍で宅配市場が盛り上がる中で、さらなる強みを発揮することが想像できるだけに、今年度も売上げを伸ばしそうだ。

 日通、ヤマトに次ぐのが佐川急便を中核に持つSGホールディングスで、売上高は、約1兆2000億円を計上している。同社もヤマト同様小口配送に強い。ただ、ヤマト運輸がBtoCに圧倒的な強みを発揮するのに対し、同社はBtoBという企業間の小口配送を得意としている。同社といえば、1990年代に、暴力団や政治家を巻き込んだ東京佐川急便事件で、会社の存続危機を迎えたが、それを乗り越えた後は、順調に成長を続けた。2016年に日立物流との将来的な経営統合を視野に入れた資本提携は、業界でも注目を浴びたが、残念ながら昨年資本提携は解消されてしまい、経営統合は白紙に戻った。提携の解消には、コロナとは違う理由もあるようだが、両社の経営統合は、売上高でヤマトを抜いて業界2位になる予定だっただけに、もったいない解消でもある。ただ、両社の経営統合には、当初から企業風土の違いが大きすぎてうまくいかないとの専門家の指摘もあっただけに、やはり難しかったのかもしれない。それでも、BtoBにおける小口配送には絶対的な強みを持つ同社は、コロナ禍でもさらに強みを発揮できる可能性が高いといえ、売上げを伸ばていくのではないだろうか。

 日通、ヤマト、佐川の物流御三家に次ぐのが、日立物流で、売上高は約6700億円を計上している。佐川との経営統合が白紙に戻ったのは残念だが、メーカー系の物流会社でここまで成長したのはさすがで、ほかに類を見ない。その名の通り、日立製作所の物流子会社としてスタートした同社だが、早くから親会社への依存度を下げるため外販に取り組んだ。小口配送に強みを持つ佐川やヤマトと違い、同社は企業物流に強みを持っている。サードパーティロジスティクス(3PL)企業といえば同社が真っ先に思い浮かべることができるあたりは、同社の物流戦略が奏功しているといえる。ただ、親会社である日立製作所が佐川との経営統合を進めていたことを考えると、先々に懸念も生じるというのが正直なところかもしれない。今年度、同社がどういう動きを見せるのかは少し様子を見たいところだ。

 売上高ランキングの上位には、4社のほかに、西濃運輸を持つセイノーホールディングス、港湾物流に強みを持つ山九、センコーグループホールディングスなど、名だたる企業が並ぶ。次は、注目企業について動向を見ていきたい。

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