教授の異常な愛情 そして私は如何にして姪を犯すに至ったのか

・作

大学教授の私は、居候をしている姪の中沢真緒香に劣情を抱いていた。教授と学生、叔父と姪という立場の壁をうち捨てて、私は真緒香に睡眠薬を投与してしまった。ただ、彼女に触れるだけで良いはずだったのが、気が付けば唇を奪い、思うがままに体を弄り、そして処女を奪うのだった。

 トントントンと私の研究室の扉を叩く音がしたのは、カーテン越しに外の明るさを感じなくなった頃だった。
 いつものように読書に集中していたらきっと気づくことができないほど、微かな音だった。
 ふう、と小さく息を吐いた。

「もう、そんな時間か……」

 思わず独りごちる。
 いつの頃からだろうか、一人の女学生が私の教官室を訪ねてくるようになっていた。
 正直、珍しかった。
 文学部の西元教授は偏屈という悪評が立っているせいで、我がゼミの学生でさえも、滅多にこの教官室を訪ねてこない。
 そんな場所に、講義が全て終わった夕刻、文学部棟から人気がなくなった頃を見計らってやってくるのである。
 再び、トントントンと扉が叩かれる。
 わずかながら先ほどよりも音が早いように感じられた。

「どうぞ、空いているから、入っておいでなさい」

 開いているのは分かっているはずなのに、私がこう声を掛けなければ、その女学生は決して入ってこようとはしなかった。

「……失礼、いたします……」

 怖ず怖ずとしたか細い声。
 それでいて凛と鈴が鳴るように美しい声だ。
 勿論、その声に相応しい美貌の持ち主でもあった。
 ただ、そのことを知る者は少ないだろう。
 常に前髪を目深に伸ばし、瞳を隠している彼女の表情はほとんど分からない。
 その上、ゆったりした服装と愛用のストールを身に纏った姿は、人目を引くことはなかった。
 きっと、彼女の同輩たちは、地味なくらい女くらいの印象しか持っていないはずだ。
 だが、私はそのことを知っている。
 そして、その理由は――

「……また、資料を見せていただいても良いですか? 叔父様――」
「――かまわんよ。好きに見ていってくれ……真緒香」

 ――中澤真緒香。
 私の兄の子供、つまり姪だ。
 そして、彼女はこの春から私が勤務する大学に入学してきた。
 それ以来、研究室の夜の住人となっている。
 夏が過ぎ、秋の深まりを感じる頃には、この日常を失いたくない、そう思うくらいにはなっていた。
 しかも――

「……叔父様、叔父様っ」
「んっ? あ、ああ、真緒香、何か言ったのか?」
「いえ……、そろそろ時間かと思いまして。ところで、今日は何が食べたいですか?」
「あー、そうだな……、寒くなってきたから鍋にでもするか?」
「はい、わかりました」

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