ウェールズ北西部のスレートの景観(イギリス)

SarahによるPixabayからの画像 スノードニア スレート採掘場

※アイキャッチ画像は「SarahによるPixabayからの画像 スノードニア スレート採掘場」

The Slate Landscape of Northwest Wales ( United Kingdom ) OUV(ii)(iv)

2021年世界遺産登録

■スレートと呼ばれる希少性の高い石材が創り上げた産業の街並み

ウェールズ北西部に位置するスノードン山脈には、スレートと呼ばれる石材の採掘場とその鉱業がもたらした建築や農村環境が文化的景観として認められ、6エリアが世界遺産に登録されています。

スレートとは聞きなれない言葉ですが、5億年も前の堆積層で、粘土質が石板上に形成された岩を指します。乾燥した状態では軽く、耐水性もあり、かつ板状に整形しやすいため、主に建設石材として使われています。なんでも、ロワール渓谷の「シャンボール城」やアルバニアの「ギロカストラ」の家屋の屋根にも使われているそうです。

特に産業革命が興った19~20世紀のかなりの期間、ここウェールズの石炭、スレート、そして銅や鉄等の鉱物は世界中で使われ、南ウェールズ峡谷にあるブレナヴォンは、産業遺産であり、鉄鉱業の町として「ブレナヴォンの産業景観」が世界遺産に登録されています。

一方で北部に位置するスノードン山脈では、スレートの採掘場として労働が集中し、山と谷の伝統的な農村環境で、工業用スレートの採石と鉱業が景観に変化をもたらしていったのです。

まずスレート採掘場。アイキャッチ画像のように、あちこちの山肌に岩が剥き出しになった階段のようなものが見られます。ウェールズ産のスレートは特に高級とされ、世界中に輸出されました。そして採掘されたスレートを運ぶため、蒸気機関車をはじめ新しい技術が次々と導入されます。

鉄道においては、フェスティニオグ鉄道タリスリン鉄道(機関車トーマスのモデル)等と呼ばれ、現在では観光列車化されていますが、いずれも世界遺産に含まれます。運航しているフェスティニオグ社は1836年創業の世界最古の鉄道会社とも言われているようです(日本の国鉄は昨年150周年でしたね)。

フェスティニオグ周辺で採掘されたスレートは海港まで運び下ろすために建設されました。開業当時はまだこのレールを走る用の蒸気機関車は開発されていなかったようで、下り勾配の線路で自然に転がすという、重力頼みの運行方式だったようです。なんと帰りは馬が荷を下ろして軽くなった貨車を牽いて上ったとか。

Greg MontaniによるPixabayからの画像 ウェールズ ペンリン城

蒸気が使われるようになると、次々とスレートが産出され、スレート鉱山の麓には労働者が住む街がつくられました。当時世界一の生産量を誇ったペンリン採石場のオーナーの邸宅は、まるで城のような豪華絢爛で、今では「ペンリンキャッスル」と呼ばれ、世界遺産に登録されています。もちろん、建築に使われているのはスレートです。

こうして、スレートを産出する採石場と鉱山、スレート工業処理に関連する遺跡、運ぶ鉄道、港、こうした産業景観が文化的景観を成すとして世界遺産に登録されたのです。

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