こんにちは。

放課後児童支援員の「しんごうき」です。このブログにお越しいただきありがとうございます。

 

このブログは、

小学生の放課後の安心・安全を担う「放課後児童支援員」がその処遇の悪さから「支援員を諦めるより他ない状況」から抜け出す方法や考え方を伝えるものです。

 

■法教育で、行きたくなる施設をつくろう!(下)

前回のブログに引き続き、放課後児童支援員認定資格を持つ弁護士の鈴木愛子先生の講義内容の一部をご紹介していきます。今回はルールのつくり方のポイントから特別なルールをつくるときの大事な視点をお伝えしていきます。

 

◆ルールづくりの3つのポイント

 

①子どもがルールづくりに関わる

子どもが意見表明権をシッカリと行使できるように、ルールづくりには可能な限り子どもを参加させていきましょう。その際にポイントになるのがどこまでの子どもを参加させるかということです。子どもの権利条約の第12条には「児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮されるものとする」とあります。可能ならばどの子からも意見が欲しいところですが、実際にはルールをきめる内容とルールに関わる対象者で判断しましょう

例を挙げると、レゴやドミノなどのルールであれば低学年を中心にしたり、ドッジボールのルールを再考するのであれば、頻繁にドッジボールしている児童を集めて話し合います。対象者が全体であれば、おやつの時間や帰りの会を活用して全員に説明し、意見を集約するようにしましょう。注意点は人数が多くなると子どもの意見が出にくくなるので、活発に発言する子の意見だけを尊重しないように公平性を心掛けることです。

 

②前提条件を全員が理解する

意見表明権があるからとはいえ、ルールをつくる上での前提条件が抜けていたらまとまるものもまとまりません。例えばレゴのルールを作るのであれば、「レゴの量」「室内の広さ」等の前提条件を児童支援員が子どもに理解させてから意見を聞き取るようにしましょう。

 

③「つくる・つかう・つくりかえる」のサイクルを回す

ルールづくりは、実際に運用し(つかい)ながら行っていくのがベストです。そのなかで実態に伴わない所があれば再度意見を出し合ってつくりかえるのが重要です。また一度できたルールも、年度が変更になったりすればメンバーも変わるため見直す必要がでてきます。そのため「つくる・つかう・つくりかえる」のサイクルを定期的に行っていきましょう。

 

◆原則と例外 ~必要性と許容性の思考~

ルールを運用していくと、そこで初めてわかる不具合に遭遇します。ルールをつくりかえることで解消するケースもあれば、特別ルール(=例外)で対応するケースもあります。経験の浅い支援員は、この特別ルールを下手につくってしまい子どもたちが混乱してしまうこともあります。特別ルールをつくる時には、どう考えればよいのでしょうか。

ここで愛子先生は「原則と例外」「必要性と許容性」という思考方法を紹介されました。特に後者は、法教育の中核をなす思考と考える弁護士さんもおられるほど重要です。講義では以下の事例をもとに説明されていたので紹介します。

 

「ADHDの診断があり多動傾向の強いAくんは、じっと座っていることが難しいため作業療法士のコンサルテーション(専門家の診断)を受けた。そこで作業療法士から、落ち着くための刺激を求めて動いているとみられるのでスクイーズ※※を取り入れてみたらどうかとアドバイスされた。するとAくんはスクイーズを触っている間は落ち着いて話をきけるようになった。一方、施設には私物のおもちゃ類の持ち込み禁止のルールがあります」

※ADHD…注意欠陥・多動性障害のことで、発達障害の一種の病気です。

※※スクイーズ… 押しつぶしてもすぐ元の形にもどる、スポンジや軟質ウレタンフォームなどで作ったおもちゃ。 

Aくん以外の子どもたちは当然、「なんでー」「どうしてAくんだけ(おもちゃ持ってきて)いいの?」となります。自分の施設でこの場面に遭遇したらどうするでしょうか。これは講義中での同じ問いかけがあって、私は次のように子どもたちに声をかけようと考えました。

 

「Aくんは、じっと座っているのがみんなよりも、ずっと苦手です。

それができるようになるために、あのおもちゃを触っているんだよ。

みんなは、おもちゃを持っていないの座っているのが辛いのかな」と。

 

この問いかけの明確な答えはありません(この業界は答えがなかったり、1つでないのが当たり前なので当然ですが)しかしこのルール「私物のおもちゃの持ち込み禁止」について「必要性」と「許容性」の2つの視点で考えることが大切だと愛子先生は仰っていました。

 

さらに愛子先生は「Aくんにとって、スクイーズに触れていると落ち着くのは【必要性】がある。そしてスクイーズなら音もせず、他の子どもへの危険性も低いので【許容性】も認められる」と解説されていました。つまり、このAくんのスクイーズ持ち込みという例外は「必要性」「許容性」の観点から検証して問題がない(正当性がある)と私は解釈しています。

 

今回は例外でしたが、ルールはその正当性を「必要性」と「許容性」によって裏付けられるそうです。ルールづくりに大きな影響力をもつ児童支援員は、これまでの慣習に囚われて思考停止せず、「必要性」と「許容性」の視点をもって、ルールづくりに関わること。これが強く求められると講義の最後に感じました。

 

■■■まとめ■■■

子からも意見を取り入れる際は、ルールを決める内容(対象)とルールに関わる対象者で判断。
・ルールは前提条件を理解した上で、「つくる・つかう・つくりかえる」のサイクルを回すのが大事。
・特別なルールをつくる際には「必要性」と「許容性」の視点で検討し、その正当性を裏付けを行う。

 

 

法教育を学んだことで大きな発見がありました。それは『私たち児童支援員がルールやその作り方、運用について無頓着なのではないか』ということ。あまりにカンタンに禁止ルールをつくったり、ルールの意図や説明を蔑ろにしている気がします。直感の鋭い子どもたちは、理屈がおかしく理不尽なルールには意見を述べてきますが、それを突っぱねる姿も残念ながら見受けられます。もちろん、大人の事情で泣く泣く理不尽なルールを強いることはありますし、必要です。しかしそのケース以外は、子どもたちの声に耳を傾け、意見を取り入れ、「必要性」と「客観性」の視点でルールの正当性を丁寧に説明するのが児童支援員には求められます。これができる児童支援員が増えていけば、施設は子どもたちにとって安心して楽しめるものになり、自ずと「行きたくなる場所」に変わっていくでしょう。そういう施設を全国に広げていくためにも、児童支援員が法教育を学ぶ機会がもって増やすべきではないかと強く感じました。

最後までお読みいただきありがとうございました。