白鷺館アニメ棟

放送中のアニメ作品について、アニメファン歴50年以上という鷺が軽いツッコミを交えて与太話

金の国水の国

二国間の戦争の危機を回避するために奔走する主人公

 隣合う二国、金の国と水の国はこれまで些細な原因から戦争を繰り返して来ていた。しかしある王の時に講和が結ばれ、その講和の条件として金の国から一番美しい娘を水の国に嫁として、水の国からは一番賢い若者を婿として送る協定が成立する。しかしその後も対立は発生、両国は睨み合いを続けていた。

     
原作はコミックのようです

 金の国から送られてくる花嫁を迎えることをと族長から命じられた現在無職の建築士のナランバヤル。しかし水の国と交戦して征服することを考えていた王から送られてきたのは猫だった。一方、金の国で水の国からの若者を夫として迎えることを命じられたのは、美人でない上におっとりした性格のために完全に無視された存在だった王女のサーラ。しかし彼女のところに送られてきた花婿はなんと犬。水の国の族長も金の国と戦争することを考えていた。しかし水の国が送ってきたのが犬と発覚すると両国の間の戦争が勃発することが必至と考えたサーラ、それを誤魔化すことにする。しかし姉たちに水の国から送られた旦那様を紹介するように命じらたサーラは、偶然出会ったナランバヤルに夫役を演じることを頼み込む。サーラに頼まれて王宮に行き、金の国の実態を知ったナランバヤルは両国の戦争を防ぐために行動を開始する。

 

 

実に心が温まるストーリーだが、実は戦争の本質も突いている

 というような話であるが、とにかく心温まるというか、見終わるとほっこりするというのが一番印象に残る映画である。というのは基本的に根っからの極悪人は誰も登場しないからである。いかにも悪党めいて登場する人物は多数いるが、実はその人物の本性が明らかとなれば、その人物は決して悪党というわけではなく、彼は彼なりに信じるところ考えるところがあってそれに基づいて行動しているということが分かっていく。つまりは決して根っからの悪党が存在しない世界であるが、実際の世の中も実はこれに近い。しかしそれにも関わらず両国は戦争の寸前の状況にある。つまりは戦争なるものは特定の極悪人が目論むと言うよりも、普通の人の普通の思いのわずかなすれ違いなどが増幅された結果として起こるということを描いている。またその背後にお互いに対する無知や偏見もあることも現されている。

 その中で特有の軽いノリでありながらも、まっすぐに両国の将来を見据えて行動を開始するナランバヤルの姿が格好良くもある。そしてその真っ直ぐさ故に回りを巻き込んでこれが徐々に大きな流れとなっていくというのがこの作品の一種の快感。またヒロインのサーラがあからさまに不美人設定されているのも本作の特徴であるが、それ故に優しくはあるが常に弱気で引っ込み思案であった彼女が、ナランバヤルとの出会いによって自らの意志で積極的に行動を開始するという姿が実に美しい。この作品の主眼の1つは彼女の成長物語でもある。そしてこの二人の美しい純愛ストーリーとしても展開する。

 

 

魅力的に描かれた登場人物達に好演の主役2人

 また二人を取り巻く登場人物が実に魅力的である。最初から良い味を出しまくるツンデレばあやから始まって、地味な王女であるサーラを馬鹿にする嫌な姉かと思わせておいて、その実は金の国の将来のことを真剣に考えて何とか救わないとと決意を固めていた姉のレオポルディーネ。またその姉たちにそのイケメンで取り入って左大臣の地位を得て国を壟断する奸臣・・・と思わせといて、実は戦略家でもあり好青年であってナランバヤルの計画に一番の理解を示すサラディーン。またナランバヤルに敵意を示す脳筋のマッチョ・・・と思わせといて実は優秀な技術者であり頼もしいジャウハラなど、とにかくすべてのキャラが一癖ありながらもその実は根っこでは善人であるというのが一番のポイントである。そしてその流れが最後には蒙昧で偏執的とも思われた王・ラスタバン三世の心をも解きほぐすという感動のラストにとつながっている。

 今回のキャストはナランバヤルにイケメン俳優の賀来賢人、サーラに若手人気女優の浜辺美波を起用しており、一見人気優先の話題作りキャストのように思われ、この手の話題作りキャストで大失敗した今までの多くの作品の影が頭をよぎったりする(二ノ国とか)。しかしどうしてどうして実際に作品を見るとこれが決して話題作りの人気優先起用でないことはすぐに分かる。賀来賢人は飄々としながらも一途で真っ直ぐなナランバヤルを見事に演じきっているし、浜辺美波も純粋で優しさに溢れるサーラの心情を見事に表現できている。正直なところ浜辺美波については以前に「HELLO WORLD」を見ていることから、単に人気先行の大根女優ではないことは認識していたが、賀来賢人については全く予備知識なしであった。これは認識を改めること著しい。