Zooey's Diary

何処に行っても何をしても人生は楽しんだもの勝ち。Zooeyの部屋にようこそ!

「犬がいた季節」

2021年12月08日 | 



読了してそのままもう一回読み直しました。
私の好きな小説です。


1988年、四日市の進学校に迷い込んだ白い仔犬は「コーシロー」と名付けられ、学校で飼われることになる。
しかし主人公はコーシローではなく、彼に関わる生徒たち。
中卒でパン屋を営む祖父から嫌味を言われながら受験勉強をする優花、鈴鹿でF1のセナの激走に心躍らせる五月、阪神大震災で家を焼かれて泣く祖母の姿を見て進路を変える奈津子、援助交際をしながら勉強して惨めな環境からの脱出を図る詩乃、病床の祖父を慰める為に必死に絵を描き、優花先生に憧れる中原。
昭和から平成へと変わる時代に、最後の共通一次、阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件といった大事件を絡めて、人生の岐路に立つ生徒たちの、迷いや愛や決意を描いた短編集。


第四話から。
”八月の最後の土曜の午後、詩乃は男と待ち合わせて、ホテルへ向かった。
二時間休憩をした後、男が暫く会うのはやめようと言った。
暫くっていつまで?と聞くと、分からない、と言う。
そして「詩乃ちゃんは可愛いけど、もう十八。そろそろ卒業だからさ」と薄笑いを浮かべた。その言葉を聞き、女子高生としての賞味期限はそろそろ切れるのだと気づいた。少女が好きなこの男は、自分にとって新鮮な相手を何処かでまた見つけたのだ。
そうだね、といつものように、最高に綺麗に見える角度で笑って見せた。
「私もそろそろ限界。おじさんって、ほんとクサいもの」
男がすこし傷ついた顔をした。それを見て、わずかに気分が良くなったが、そんな男にあちこち触らせた自分が汚く思えて仕方ない。”


高校生の時の、子供でもなく大人でもない、どうにも中途半端な不格好な自分。
その自分が不器用に悩んでジタバタしていた姿が、少々しょっぱい味と共に思い浮かびます。
そんな時期が、確かに私にもあった。
犬を描いた物語は、その最期がつらくて泣きたくなるのですが、この本は終章に嬉しいサプライズが用意されていて、その悲しみを巻き散らしてくれる。
そして本のカバーを外すと、装丁に隠されたオマケがあるのです。

「犬がいた季節」公式HP 



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