50代介護職の今月の給料

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(画像は家計簿アプリ「マネーフォワード」)

2022年5月の給料が振り込まれた。

特別養護老人ホーム、介護福祉士持ち、8年目。

総支給額  26万3,294円
手取り   19万9,918円

夜勤3回、残業なし、処遇改善2万0,200円込み。

4月が夜勤2回だったので、5月は夜勤1回分の手当6,000円+深夜割増賃金の分だけ多くなっている。

過去記事
 
介護職8年目の昇給額を公開

勤続8年目の基本給は18万9,600円だ。

処遇改善の2万0,200円というのは、介護職員の賃金向上を目的とした行政からの支給金で、「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」の上乗せ分、それに岸田首相の肝入り政策で新たに創設された「介護職員処遇改善支援補助金」の合計額になる。


介護職の処遇改善加算とは

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介護職の処遇改善の歴史

2000年  4月 介護保険制度施行

2009年10月 介護職員処遇改善交付金(2012年3月まで)配布

2012年  4月 介護職員処遇改善加算に移行

2019年10月 介護職員等特定処遇改善加算を新設

2022年  2月 介護職員処遇改善支援補助金(2022年9月まで)開始

2022年10月 介護職員等ベースアップ等支援加算(仮称)に移行予定


高齢化の進む日本で将来介護職員不足が深刻になること、全産業に比べて介護職員の賃金が低いことは以前から指摘されていた。

そこで政府は介護職員の賃金向上を目的に、2009年(平成21年)10月から2012年(平成24年)3月にかけて「介護職員処遇改善交付金」制度を実施。

これは国費(一般財源)から申請してきた事業所に対して、常勤換算で介護職員1人あたり月1.5万円相当の交付金を配る制度だった。

交付総額は約3,975億円

この「介護職員処遇改善交付金」は2012年(平成24年)4月からは、申請にキャリアパス等要件などが追加され、財源も一般財源ではなく介護報酬から支払われることになり、新たに「介護職員処遇改善加算」に生まれ変わる。

キャリアパス等要件を満たさないと交付金は減額されることになり、また、介護報酬から支払われることになったので、結果的に介護サービスを受ける利用者自身の負担が増える形になった。


月給8万円アップ?「介護職員等特定処遇改善加算」開始

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介護職員処遇改善加算に上乗せさせる形で、2019年(令和元年)10月から新たに実施されたのが介護職員等特定処遇改善加算」だ。

これは介護職員の人員不足を解消するため、今いる介護職員に長く働いてもらうこと、定着率向上を狙って「勤続年数10年以上の介護福祉士について月額平均8万円相当の処遇改善を行う」という方針に基づいて制度設計された。

つまり介護職員の人員確保の問題も、平均賃金より低水準な給料問題も「介護職員処遇改善加算」だけでは解決できなかったのだ。

だが離職率が高い介護業界にそもそも10年以上働いている介護職員が何人いるのか?

紆余曲折の結果、勤続年数が10年以下でも、経験や技能が認められれば、特定処遇改善加算の対象に入ることになった。

また転職率が高い介護業界の現状に合わせる形で、1つの事業所で長期間働いていなくても、他の法人や事業所、医療機関での経験も含めて10年以上なら加算対象に入るとなった。(10年以下でもOKなのに10年てくくり必要?)

さらにさらに、介護福祉士資格者がいない場合や、新たに開設した事業所で介護職員間における経験・技能に明らかな差がない場合は事業所の裁量で対象者を決めてよいことにもなり、現場の介護職員は???状態で、誰が対象なのかわからない制度になってしまった。

金額も資格を取って10年勤めれば8万円賃金に上乗せされるわけではなく、各事業所の現在の介護報酬に何%かを上乗せする形で支給される。

特別養護老人ホームの場合は、2.7%(特定加算Ⅰ)
訪問介護は、6.3%(特定加算Ⅰ)
デイサービスは、1,2%(特定加算Ⅰ)


介護報酬、つまり現在の売り上げにそれぞれ加算される。

なので同じ形態の介護サービスでも売り上げが低ければ加算される金額も少ない。

さらにその加算されたお金の配分方法も決まっている。

まずは職員を3つに分ける。

1.経験・技能のある介護職員
2.その他の介護職員
3.介護職員以外

この1、2、3の平均の処遇改善加算額が、1は2よりも高いこと、2は3の2倍以上であること。

また、1のうち1人以上は、月額平均8万円以上の給料アップ、または年収見込み額が440万円以上になること。

3の年収が賃金改善によって440万円を上回らないことが条件。

どの職員にどう配分するかは事業所の裁量にまかされているので、1の職員に加算すべてを配分して2.3.の職員には配分しないと決めても条件はクリアできる。

その中の介護職員1人を年収見込み440万円以上にすればいい。

これは極端に考えれば、介護職員のトップはどんなに頑張っても年収440万円で頭打ちということだ。

ちなみに国税庁の「令和2年分民間給与実態統計調査」によると、日本人の平均年収はおよそ433万円となっている(男性は532万円、女性は293万円)


「介護職員の給料を月額9千円ほど引き上げる」介護職員処遇改善支援補助金

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2021年(令和3年)自民党総裁に新たに選ばれた岸田文雄総裁は「看護師、介護士、保育士の方々の給料は、仕事の大変さに比べて低いのではないか」「こうした方々の給料は国で決められる。国が率先して公的価格を適正に引き上げることを考えたらどうか」と語り、首相に就任後、政策として打ち出したのが、この「介護職員処遇改善支援補助金」だ。

つまり、介護職員の給料は2009年の「介護職員処遇改善交付金」から12年間、「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」などいろいろやっても改善されず、相変わらず賃金は低いままで、相変わらず介護業界は人手不足だと政府が認めたことになる。

こんなに加算をいろいろ作らず、消費税のように単純に「介護職員処遇改善加算」を増額していけば、申請手続きなどの現場の負担が減りそうなものだが、政府は少額の加算をどんどん作り増やしていく方向だ。

今回の「介護職員処遇改善支援補助金」は2022年(令和4年)2月〜9月までの8ヶ月間、138万人いる介護職員の処遇改善、賃金引上げを目的に実施されている。

財源は国費で予算は1,000億円。

しかし、現場から介護職以外の職種、例えばケアマネとか相談員とか栄養士などが対象に含まれないのは不公平だと言う声が上がり、対象を介護職員だけではなく「事業所の判断により他の職員の処遇改善にこの処遇改善の収入を充てることができる」とした。

また補助金は各事業所の総報酬に、サービスごとに設定した交付率を乗じた額になるため、売り上げの低い事業所は補助金も少なくなる。(総報酬=基本報酬+加算減算(処遇改善加算・特定加算含む)×1単位の単価[10円])

そのため、介護職員の給料が一律9千円上がるわけではなく、「9千円ほど」上がることになった。

介護職員の給料月額9千円アップというのは世間に広まった「誤解」だったのだ。

「9千円」はあくまでイメージということだろう。

過去記事
 ↓

岸田首相の介護職賃上げ9千円 現実は5千円でした

2022年(令和4年)10月からは新たに「第3の処遇改善加算」(仮称は「介護職員等ベースアップ等支援加算」)が新設され、財源も「介護職員処遇改善加算」の時のように国費から介護報酬に切り替わる。

また何か申請条件が加えられるかどうかは不明だが、介護サービスを受ける利用者の負担が増えることは確実だろう。

特養で働く介護福祉士持ちの介護職員である自分の今月の処遇改善加算は2万0,200円だった。

「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」の上乗せ分と「介護職員処遇改善支援補助金」5,500円の合計額だ。

全産業の平均給与との差はまだまだ大きい。

第一次ベビーブームで生まれた団塊の世代が後期高齢者(75歳)に達する2025年まであと3年。

65歳以上を含めると日本の高齢者数は3,677万人となり全人口の30.3%が高齢者となる。

予想される介護人材の不足数は37.7 万人
(厚生労働省「2025 年に向けた介護人材にかかる需給推計(確定値)について」より)

介護人材の確保は果たして間に合うだろうか?







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