日々是好日日記

心にうつりゆくよしなしごとを<思う存分>書きつくればあやしうこそものぐるほしけれ

適地適作の勧め

2022年09月22日 08時06分45秒 | 政治
 「岸田文雄首相は17日午後、福島県浪江町を訪れ、東京電力福島第1原発事故からの復興の目玉として、ロボットや放射線科学などの分野で研究開発や人材育成を進める『福島国際研究教育機構』の立地予定地を視察した。視察後、同機構を拠点に『福島の創造的復興を加速していく』と強調。海外から技術や能力を有する高度人材誘致のため、受け入れ制度を拡充する考えを表明した。同県南相馬市内で記者団に語った」(2022/09/18)よくぞこんな出来もしないことを公衆の面前で語れるものだ!?。
「適地適作」をいう言葉に「江南橘為江北枳(江南の橘(たちばな)は、江北の枳(からたち)となる)」という中国の格言がある。説明は要さないが、同じ柑橘の木を育てても、華南の暖かい土地では芳醇なミカンとなって甘くおいしい実がなるが、華北の土地ではこれが固い橘となって酸っぱい実になってしまう、というのである。ここに華南と華北を境したのは長江(揚子江)で、この川が海にそそぐ地においてその南、浙江の潮を湛えた土地は米作文化を育んだ豊かな大地でもあった。
もとより橘を作付けようというのであれば、「河北」にあってもそれはそれで悪いわけではない。同じ苗を河北に植えればよいだけであり、橘は秋に「金の玉」(山田耕作)となって美しい実が生る。食べるには適しないものの、それでも良いというのであれば何をか言わんや?ではあるのだが・・・。
上記新聞記事の「ロボットや放射線科学などの分野で研究開発や人材育成を進める『福島国際研究教育機構』」なる組織を「福島第一原発」事故の申し訳のように木に竹を接ぐがごとき構想を展開することの「奇抜さ」には首を右に左に何度傾けかつ熟考してみても筆者には合点がいかないのである。ここには、フクイチ原発跡地にのさばる放射能デブリを捕まえて核の容器に封じ込めたい緊急にして切実な難題があるにはあるが、よもやここ「福島国際研究教育機構」でその答えを探そうというのでもなかろう?
平和な福島浜通りに日本で一番の巨大原発銀座を作り、そこで起こした電気は地元福島・東北地方には1Wたりとも卸しはせずに、全量を東京に送っていたから、この地ではこの電力会社で働くごく一握りの要員だけが採用されていたにすぎず、大津波で無住の地になった今そのほとんどの発電所と無縁の人々は残留放射能を恐れて故郷を離れ、避難した各地に根を下ろし帰郷を躊躇する。そういう複雑な故郷の思いとはなんの謂われもなく福島国際研究教育機構なるものが取って付けたように生まれるという。その計画の先には世界の趨勢を尻目に原子力産業の振興という、有るや無きやの「マユツバ未来」が描かれている。何度人心を惑わそうというのであろうか!?
隣町の双葉町、この町の入り口にはかつて「原子力 明るい未来のエネルギー」というキャッチコピーのネオンサインが輝いていた。ミカンの木を植えたつもりが酸っぱいカラタチの実になっていたという皮肉な実例だ。岸田政権は、この苛烈な歴史をもう一度繰り返そうというのであろうか? これが地域住民の希望だというのであろうか??
 


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