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「ねえ、おじさん。

絶対に負けない

ジャンケンの方法、

知ってる?」

 

 

近所に住む、娘のクラスメイトが

僕のところに駆け寄ってきて、

そう言った。

 

 

そもそも、ジャンケンは全てが「運」

と言われているが、

全くそうでないことをご存知だろうか。

 

 

 

もっと詳しく言うと、

最初に「パー」を出すと確実に

勝率は上がると言われている。

 

 

 

 

 

なぜなら、人は緊張すると、

こぶしを握りしめてしまう傾向にあるから。

 

 

つまり、そのジャンケンが真剣勝負に

なればなるほど、人は緊張し、

思わず「グー」を出してしまうのだ。

 

 

だからこそ、その手に勝利できる

「パー」を出すと、必然的に

勝率は上がるというわけ。

 

 

 

いやいや、ただしこれはあくまでも

勝率が上がるだけの話。

 

 

僕のことを「おじさん」呼ばわりする

このクソガキ少年が言う、

「絶対に負けない方法」ではない。

 

 

 

 

 

しかし、大人になり固定観念で

凝り固まったこの脳みそ。

 

結局、うーんと考えてもその方法は

分からずじまいであった。

 

 

 

ここまできたら、

たとえ子供騙しな方法だとしても

知らずに立ち去るわけにはいかない。

 

 

 

だって、ジャンケンで

絶対に負けない方法なのだ!

 

 

これからの人生において、

得るものが多すぎるのである。

 

 

 

そこで僕が少年からの

「おじさん、ジャンケンで

絶対に負けない方法、知ってる?」

という質問に選んだのは、

こんな返答だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふん、

そんなの

知らないわけ

ないだろ。

ただ、君の

遊びに

付き合ってる

マは

ないのだよ」

 

 

 

 

 

 

そう、なんとまさかの負け惜しみ!

 

 

 

ダメなのだ!やはり、自分を

おじさん呼ばわりした

クソガキ少年なんかに、

やっぱり、「教えてくれ」なんて

口が裂けても言えないのである。

 

 

するとそこに僕の娘が現れ、

少年にこう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それ、前も学校で

やってたじゃん。

ジャンケンに絶対、

負けない方法は、

そもそも戦わないことでしょ」

 

 

 

救世主現る!

さすが、我が娘!

 

 

こうして僕は、なんとかして、

ジャンケンで絶対に負けない方法を

知れることとなった。

 

 

 

ジャンケンで絶対に負けない方法。

 

 

それは、そもそも

戦わないこと。

 

 

 

 

このアイデアに対し、

あなたはアホくさいと思うだろうか。

 

 

 

実は僕は不覚にも、

ひどく感動してしまった。笑

 

 

 

というのも、大学生の頃大ファンだった

元格闘家の須藤元気氏は、

引退する際に、こんな言葉を残し、

リングを後にしたから。

 

 

「本当に強い人は、戦わない。

その代わり屈しない」と。

 

 

 

かっこよすぎだろ!なんだけど、

つまり、あれだ。

 

 

敵がいるから、

勝ち負けが生まれるのではない。

 

 

 

自分が戦ってやるぞ!争ってやるぞ!

とファイティングポーズをとるから、

勝負が始まり、

勝ち負けが生まれるのである。

 

 

 

 

そして、そんな言葉があるか知らんけど、

結果として、「有敵」になってしまうのだ。

 

 

 

 

 

その点、「無敵」になるのは簡単。

 

 

 

それは、一生

争わない(戦わない)

ことである。

 

 

 

「争うこと」をこちらがやめてしまえば、

自分を含めた誰をも

「敵」とみなすことはない。

 

 

よって、それだけで無敵になれるのである。

 

 

 

そう、戦わない、争わないと決めた瞬間、

あなたの前から「敵」は消えるのだ。

 

 

 

そして、「負ける」という概念も、

その世界から消える。

 

 

 

 

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