リートリンの覚書

日本書紀 巻第十七 男大迹天皇 四 ・しるしを持って、男大迹王を迎え奉る ・荒籠の忠告



日本書紀 巻第十七 男大迹天皇 四

・しるしを持って、男大迹王を迎え奉る
・荒籠の忠告



六日、
臣、連等を遣わして、
節(しるし)を持って、
法駕(ほうが)を備え、
三国に迎え奉りました。

兵仗(つわもの)で挟み衞(まも)り、
容儀(よそおい)を肅(つつし)みを整え、

前駈(みさき)が警蹕(お)いて、
奄然(にわかにして)至りました。

ここにおいて、
男大迹天皇(をほどのすめらみこと)は、

晏然(あんぜん)と自若(じじゃく)し、
胡床(あぐら)に坐っていました。

陪臣(さぶらうひと)を
齋(ととの)え列して、
既に帝が座しているかの如く。

節を持つ使い等は、
これによりて、
敬憚(かしこまりて)、

心を傾け、命を委ねて、
忠誠を尽くしたいと冀(こいねが)いました。

然るに、
天皇の意の裏では、
なおも疑いありとして、
久しく就きませんでした。

たまたま
河内の馬飼(うまかい)の
首(おびと)である
荒籠(あらこ)を知っていました。

密かに使いを遣わし奉り、
具に大臣、大連等が
迎え奉る本意の所以(ゆえん)を述べました。

二日三夜留まり、
遂に発しました。

すなわち、
喟然(きぜん)とし、嘆いて、
「よいかな、馬飼の首よ。

汝がもし使いを遣わして
告げてくれなかったら、

あやうく、
天下にわらわれるところであった。

世(ひと)は、
『貴賤を論(あげつらう)ことなかれ。
ただその心を重んぜよ』
といっているが、

きっと荒籠のことをいうのだろう」
といいました。

践祚(あまつひつぎしろしめす)に至り、
厚く荒籠に寵侍(めぐ)を加えました。



・法駕(ほうが)
天子の乗り物
・兵仗(つわもの)
武器
・容儀(よそおい)
=ようぎ・礼儀にかなった姿や態度
・前駈(みさき)
先駆
・警蹕(お)
=けいひつ・天皇の出御・陪膳・行幸などの際に、先を払うために声をかけること。また、その声
・奄然(にわかにして)
=えんぜん・にわかに・たちまち
・晏然(あんぜん)
やすらかなさま。落ち着いたさま
・自若(じじゃく)
平常通り泰然としている
・陪臣(さぶらうひと)
侍臣
・敬憚(かしこまりて)
=けいたん・尊敬しておそれること
・所以(ゆえん)
わけ、理由
・喟然(きぜん)
溜息をついて嘆くさま。嘆息するさま
・践祚(あまつひつぎしろしめす)
天皇位を継ぐこと
・寵侍(めぐ)
=ちょうたい・特別に目をかけてかわいがること。厚くもてなすこと。また、そういう待遇



(感想)

元年春1月6日、
臣、連等を派遣して、

節(しるし)を持ち、
天子の乗り物を備え、
三国に迎え奉りました。

武器を持った兵で挟み守り、
礼儀にかなった姿や態度
つつしみ整え、

前駈(みさき)が、
先を払うために声を発して、
たちまち到着しました。

ここにおいて、
継体天皇は、

落ち着き、
平常通り泰然とし、
胡床(あぐら)に坐っていました。

侍臣を整え列して、
既に帝が座しているかのようでした。

節(しるし)を持つ使者等は、
これによって、

尊敬して懼(おそ)れて、
心を傾け、
命を委ねて、
忠誠を尽くしたいと願いました。

しかし、
天皇の心中では、
なおも疑いあるとして、
長く天皇位に就きませんでした。

継体天皇は、
たまたま
河内の馬飼の首(おびと)である
荒籠(あらこ)を知っていました。

彼は、
密かに使いを遣わし奉り、
詳細に大臣、大連等が
迎え奉る本意の理由を述べました。

使者は、
二日三夜留まり、
遂に男大迹王は出発しました。

すなわち、嘆息し、嘆いて、
「よいかな、馬飼の首よ。

汝がもし使いを遣わして
告げてくれなかったら、

あやうく、
天下に笑われるところであった。

世(ひと)は、
『貴賤を論(あげつらう)ことなかれ。
ただその心を重んぜよ』
といっているが、

きっと荒籠のことをいうのだろう」
といいました。

天皇位を継ぐことに至り、
荒籠を特別に目をかけてかわいがり、
厚くもてなすという待遇を加えました。

前々回のお話では、
仲哀天皇の五世孫である倭彦王を
迎え奉ろうとしましたが、

倭彦王は、
迎えにきた兵を見て逃げ出してしまい、

その後、
行方不明になってしまいました。

それに対して、
男大迹王は、

落ち着き、
平常通り泰然とし、
胡床(あぐら)に座り、

男大迹王の侍臣が整然とお側に仕えていて、
既に帝が座しているかのようでした。

おそらく、

男大迹王のお迎えには、
ほぼ前回・倭彦王の時と
変わらぬメンバーで行ったでしょうから。

倭彦王と男大迹王と比べ、

男大迹王の
風格に痺れたことでしょう。

さて、
京に向かった男大迹王ですが、
実はまだ即位しません。

まだ、
引っ張るんですよね。

明日に続きます。

読んで頂き
ありがとうございました。


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