2022/01/29

フライフィッシングにおけるリーダーの長さについて私的見解(渓流編)

Underwater,フライフィッシング,東京フライフィッシャーのしがない戯言

渓流におけるロングリーダー・ロングティペットシステム(以降、ロングティペットシステムと呼ぶ)が提唱されてからかなりの年月が経過した。

私がフライフィッシングをはじめたころは7.5フィートや9フィートのリーダーが全盛期で、先端が短くなったら同じ太さorワンランク細い糸を継ぎ足していた。それでも、短くなった分だけ足す程度で、リーダー全長が12フィートを超えるようなことはほぼなかったと記憶している。少なくとも私はそうだった。

ヤマメは毛鉤を咥えてから吐き出すまで0.2秒

しかし、このシステムだと魚は出てもフッキングがうまくいかないことが多く、それを補うためにどうしても早合わせ気味になってしまう。当時は「ヤマメは毛鉤を咥えてから吐き出すまで0.2秒」とテンカラ師の間で云われていた時代。フライをはじめる前からエサやルアーでかなりの数のヤマメは釣っていたので、すばしっこい魚だとは理解しつつも自分のフライ経験の少なさやテクニック以前に釣り方が噛み合っていない気がしていた。

そんな中、某氏をはじめとするロングティペットシステム提唱者がこぞってメディアで発信しはじめ、それに触発された私もいつしか「長いリーダー」を扱うようになった。メインだったロッドをオービスから国産のパラボリックな柔らかいものに切り替えたのもこの頃だ。

しばらくはロングティペットシステムの意味をほとんど理解しないまま「長いリーダー」であればよいのだろうとターンさせることに躍起になっていたが、ターンせずにフワリと落ちたとき、具体的には当時の感覚としてプレゼンテーションをミスしたときのほうがフッキングがよいことに次第に気づくようになっていた。自らの経験に基づき導き出した答えは、、、「必要なのは長いリーダーではなく長いティペット」ということ。

もはや当たり前になっている周知の事実であるし、それなりに長い渓流経験のあるベテランなら「はっ?」「えっ?」と思うだろうが、笑わないでほしい。

いまと違って情報量の少ない時代にタイイングもキャスティングも誰にも教わったことがなく我流でやっていた私にとっては、このことが大きな発見だったのだ。

「ロングリーダー・ロングティペット」というキーワードの「ロング」ばかりに気を取られ、「全体を長くする」という意味と捉えてしまい、本質を見失っていたのだと思う。

当時の私と同じようにいまでも誤解している方もいると思うが、「ロングリーダーではなくロングティペット」が重要。

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ロングリーダーではなくロングティペット

なぜ「ロングティペット」なのか。

言うまでもない、本物のエサが流れるようにドライフライを流すため。上述した「吐き出すまで0.2秒」はあながち嘘ではない。主な原因は魚がニセモノと疑って警戒しながら咥えているからだろう。いまでこそテンカラも自然に流す風潮があるが、昔はそうでもなかったはずなので、その点でも不自然さを醸し出していたのだと思う。不自然さをなくせば、慌てて咥えることもなく、離すまでの時間も長いし、飲まれることも多い。

以降、ドライフライフィッシングの話に限定して記述する。ドライフライ以外でも通じる話もあるし、ドライフライでも意図的にドラッグをかける釣り方もあるが、ここでは深く言及しない。

不自然さを醸し出す原因の多くは二つ。 一つ目はフライそのものが不自然な場合、二つ目は流れ方が不自然な場合。

前者はフライパターンやサイズ、フライを流すステージ(水面ぽっかり、水面張り付き、水面ぶら下がりなど)が原因なのでそれを解消する必要があるが、後者はリーダーシステムとプレゼンテーションの改善が必要。

後者の対策としては水の抵抗が少ない細いティペットを長くとることだ。理論上細ければ細いほどよいが、実際の釣りでは限界がある。フライラインの先端からフライまで一直線にして水面に落としてしまうと細くて長いティペットの意味がなくなるので、通常はプレゼンテーションでティペットにスラックを入れたりカーブさせたり、場合によってはリーダー全体やフライライン先端付近も曲げて落とす。

スラックの入れ方も狙うポイントの流れの状態と自分の立ち位置、ドリフトの距離や使用するフライによって変える必要があり、直線的にスラック(イメージとしては縮れ)を入れる、V字に折って落とす、U字曲げて落とす、場合によってはティペットを団子状にして落とすなど様々な方法で対処しなければならない。

このようなことを行うにはティペットが細く長くないと難しい。

ただし、これは渓流でのドライフライフィッシングかつ釣り上がりにおいて有効な話で、渓流でもダウンでのライズ狙いや流速差のあまりないフラットな本流域での釣りやドライフライ以外の釣りではまた異なる。

本題に入る前に話が逸れてしまうが、そもそも何をもってロングティペットシステムというかの定義は難しい。上述したとおり重要なのはティペットの長さであり、リーダー全長だけではロングティペットシステムかどうか判断できない。リーダー全長に対してティペット部がどの程度を占めるかが重要になる。もっというと、考え方は人それぞれなのでそんな定義など不要だろう。あくまでもマーケティング的要素、他人に説明する上でのキーワードでしかない。

リーダーシステムが全体的に長めになっている昨今あえていうのであれば、バット+テーパーの12フィートに4フィートのティペットを繋いだ16フィート程度だとロングティペットシステムというのは少し無理があり、バット+テーパーの12フィートに6フィートのティペットを繋いだ18フィートやバット+テーパーの14フィートに6フィートのティペットを繋いだ20フィートのような長さがロングティペットシステムになるのだろう(ただし、市販のリーダーはバットやティペット部をある程度カットして使うことが多いと思うので、パッケージから出した状態のママ使うことは少ないと思う)。ロングリーダー・ロングティペット提唱者だと、ティペットが6フィートあっても全長18フィートだと許せないのかもしれないが(笑)

私は「リーダー全体が長い」とういうロングティペットシステム一辺倒な人ではないので、フリーストーンの釣り上がりに関しては川の規模に応じて全長7フィート程度から21フィートくらいまで使い分けている。長さに幅があるのは、ドラッグを回避できるだけの必要最低限のティペットがあればヨシとしているからだ。その根底には「トラブルを可能な限り減らしたい」という考えがある。

極端にいうと、バット部がほぼない。もちろん全体が長めの場合はバット部はそれなりに取るが、バット部やテーパー部に対してティペットを長くとるシステムにしている(#1といったウルトラライトラインを使う場合は、そのライン径からフライラインそのものをリーダーのバットと見なすこともある)。具体的には「ヘビーショートリーダー(テーパー)」+「ロングティペット」が自分の中でスタイルとして確立されている。

ただし、この「ヘビーショートリーダー(テーパー)」+「ロングティペット」のシステムはターン性の強いラインだとフライライン先端〜リーダーのバット・テーパー側が水面に突っ込みやすいので、力加減には注意したい。ラインを置く位置もよく考えないと水面を荒らしやすく流れにも食われやすいので、フライだけでなくライン先端までの正確なコントロールが求められる。このシステムの場合は横のメンディングはあまり向いていないため、縦にロールを入れるかラインの先端を上に跳ね上げるメンディングを多用する。

広い川で複雑な流れであればリーダー全長が長めでティペットも長めの20フィート前後くらいのほうがドラッグは回避しやすいが、広い川でも水面から頭を出している石がたくさんあってドリフトの邪魔(少しでも長く流そうとすると石で引っかかる)をするような川ではティペットは長めでもリーダー全長は短いほうが扱いやすい。通常のドラッグ回避のように石の上にラインやリーダーを置くようにキャストすることで長いリーダーでもドリフトしやすくなるが、そもそもの話しとしてもしそうするなら必要以上に長いリーダーは不要で、素直に石の上にラインを置けばよいしそのほうが圧倒的にトラブルが少ない。 

ロングティペットが本当の意味で有効なのはフリーストーンのラフな水面のみ(私的見解)

ダウンでのライズ狙いや鬼怒川のように広い川でもフラットなポイントが多い場所だとティペットはあまり長くせず、リーダー全長も12フィートや14フィート程度にしてドンと投げて小細工せずにそのまま流すことも多い。鯉釣りの場合も同様。忍野のような流れでライズを狙う場合はドリフト距離を極力短くしたくリーダー全長9フィート程度のときもあるほどで、対岸のピンポイントをロールキャストで狙う場合は6-7フィートのときもある。ボトムに張り付いている魚を引き出す場合は長めのドリフトを必要とするが、浮いている魚なら短いドリフトでドラッグが掛かる前に勝負したい(ここでいう「長いドリフト」とは広いポイントで数m以上流すようなレベルの話であり、一般的なドリフトの長さよりずっと長いものを意味している)。

(ザワザワした流れでなく、波が立たないフラットな水面での話になるが、)なぜなのか。

アップ(+クロス)でもダウン(+クロス)でもフラットな流れ(に限ったことではないが...)でシビアなライズを狙うときはフライ先行が原則。スレていない魚ならあまり関係ないが、フラットな流れのスレた魚はティペットそのものや屈折によるティペットの影(このことについては別のエントリで話したい)を見破るので団子状のスラックは禁物。そうなると、ダウンだとストレートやカーブ気味でフライ先行、アップだとU字やV字でフライ先行にすることがどうしても求められる。

ダウンの場合は必要以上にティペットの長さはいらない。長いドリフトでライズ地点まで流し込むような釣り方、具体的には魚の視野に入らない距離からフライを流さないと喰わない場合や立ち位置の都合上そのようにしか流せない場合などもあるが、水面がある程度安定している場所やフィーディングレーンにフライからライン先端まで乗せられるような直線的な流れがないと難しいことが多い。安定した流れであればティペットが暴れにくいので、長いティペットにスラックを入れて長い距離を流し込むことは可能。ただし、ただ単に一直線に流すなら長いティペットはあまり意味がない。フライラインの存在を遠ざけるなら意味はあるが、その場合はティペットの長さというよりリーダーの長さやリーダーとラインを置く場所の問題だろう。

必要以上に長いドリフトはティペットがナイロンだろうがフロロだろうが、ライズ地点に到達する前にドラッグがかかってしまったり、ライズ地点を通過する際にティペットが団子状になってしまうことがあるからだ。スリックウォーターだとこれが顕著で、そうなると長いティペットもあまり意味をなさない。

アップの場合はダウンよりは長めのティペットが有効だが、フラットな水面ならフリーストーンで使うような長いティペットはいらないだろう。ダウンの場合はフライがフィーディングレーンの延長線上を少し超えるようにキャストし、着水直前(フライの浮力や魚への影響が少なければ着水後にでも)に少し引き戻してプレゼンテーション位置をコントロールすることも多いが、アップの場合にこれをやると当然ながらティペットが張ってしまいスラックが入らずフライ先行にもならないし、まずやらないだろう。したがってV字かU字で落とすことになる。つまりアップの場合はダウンと比較してフライの着地地点をコントールしにくい(あくまでもダウンと比較してという話で、通常はコントロールに問題が生じるレベルではないが...)。そのため必要以上にティペットが長いとライズ地点までのレーンからズレやすくなるし、長いドリフトもダウンの場合と同じ懸念がある。

結果、フラットな水面でのライズゲームは釣り上がりのときよりティペットが短くなり、それに応じてリーダー全長も短くなる。ただし、その場合でもティペットがピンと張った状態でのドリフトは好ましくない。ドラッグ回避は勿論だが、魚がフライを咥えたときにティペットに緩みがあったほうがフッキングしやすい。水の抵抗が少なく吸い込みやすいからだ。特にダウンだとすっぽ抜けしやすい。

川の規模に関係なくリーダーやティペットの長さがほぼ固定の人もいると思う。考え方は人それぞれなので否定はしないし、遊びなんだから好きにやればいい。私の極端な?スタイルも上述したが、あくまでもそれは私の好みであり、私の考えが正しくて他がダメだとは微塵も思わない。

ただ、、、少なくともフライをはじめて間もない人が無闇に全長18フィートを超えるようなロングリーダー・ロングティペットシステムを使うのだけはおすすめしない。特に小渓流・狭い川では論外だと思う。ロッド先端からラインが出ていない・出せない状態でのキャスティングを強いられるシチュエーションが多く、相当難儀するだろう。硬いロッドなら尚更(細長いティペットに対するスラックを自在にコントロールするには硬いロッドは明らかに向いていない)。慣れていないからこそ長いティペットの意味を理解できるよう、適材適所で調整したほうがよい。それを経て、自分のスタイルに合ったリーダーシステムがわかってくる。

フライをはじめた人に対して最初からロングリーダー・ロングティペットを使わせる風潮には異議を唱えたい

フライをはじめた人が魚を釣る前にリーダーシステムのトラブルで戦意喪失してしまうことが「めんどくせー、もうフライやーめた!」にも繋がりかねないと本気で危惧している。長いティペットの効果やドリフトの重要性などを未経験および経験の少ない人に説いてもすんなり理解できないはず。難しいテクニックや方法論は慣れてからで十分間に合うし、そのほうが実体験として理解しやすい。

主観が入りすぎて!?話が逸れたのでまとめる。

一般的な渓流におけるロングティペットシステムの釣り方に限って言えば、重要なのは自分が必要とするスラックを入れられるだけのティペットの長さであり、リーダー全長の長さではなくバット+テーパー部とティペット部の比率の問題。別の言い方をすると「ターンオーバーさせようと思えばできるが、あえてしない」を実現できるシステム。このことを理解していないと「釣れないのでとりあえずバットもテーパーもティペットも含めて全体が長いリーダー」という短絡的な考えで釣りをしかねない。

メンディングしたときにフライが動かない長さがあれば十分

慣れないうちは適切なティペットの長さがわからないと思うが、「メンディングしたときにフライが動かない長さ」で考えれば目安になるだろう。プレゼンテーション後にメンディングを多用する人もいればほとんどしない人もいるが、ドラッグを回避しようとラインやロッドを動かしたときにフライが引っ張られなければよしと考える。更にいうと「使うであろう最大サイズ(最大空気抵抗)のフライをターンさせられる長さ」ともいえる。

そもそも、ライン側をカーブさせたり(具体的にはシュート時にラインごと前方に送り込んで先端数フィートを曲げる)、スラックを巧みに入れてドラッグを回避している人もいるとおり、テクニックさえあれば必要以上に長いリーダーやティペットを使わなくても釣りは可能だし魚も問題なく出る。個人的にはこのほうがテクニカルで好きだ。

喩えるのであれば、、、

<ロングリーダー・ロングティペット>
→AT車。投げられさえすれば特に何もしなくても魚が出る。

<ショートリーダー・ショートティペット>
→MT車。ライン操作がうまくできないと魚が出ない。

<ショートリーダー・ロングティペット>
→パドルシフト付きAT車。そのままでも魚を出しやすいが、適材適所で積極的にライン操作。

だろうか。

ロングティペットシステムはドラッグを回避するためにもっとも簡単で効率的かつ合理的な最適解であり、扱いに慣れてしまえば魚を引き出しやすいシステムなのは紛れもない事実。ゆえに、現代の渓流FFにおける(おそらく、)「マーケティング上の」メインストリームではあるが、皆が皆、長いリーダー+長いティペットで釣りをしているわけではないので注意したい。

ちなみに個人的に考えるロングティペットシステムのデメリットとしては、キャスティング時のトラブルより、ショートロッド(7フィート以下)で近距離を釣るときの合わせにある気がしている。たっぷりスラックが入っている場合、リーチの足りない短いロッドで近距離だと合わせのパワーがフックまでうまく伝わらず、慌てて追い合わせのようにラインを引っ張っる羽目になり、どうしてもワンテンポ遅れがちになる。特にファイバーグラスのロッドで顕著。結果バレやすい。もっとも、このようなロッドを使うシチュエーションでは必要以上に長いティペットは使わないと思うので、懸念として挙げるほどではないかもしれない。

誤解を招くエントリなので念のため追記しておく。

ロングリーダー・ロングティペットを否定しているわけではない。何が何でも全長がやたら長いロングリーダー・ロングティペットではなく、適材適所で使い分けるべき、ということ。そして、重要なのはリーダー全長の長さではなくティペットの長さということ。上述したとおり私自身はロングリーダー・ロングティペットのときもあるし、ショートリーダー・ロングティペットのときもあるし、ショートリーダー・ショートティペットのときもある。

人それぞれ十人十色、マーケットやメディアの情報を鵜呑みにせず、各々の考え方や好みで自由に楽しめばよい

そのうえで、「必要以上に長いリーダーはトラブルが多くなるが、ロングティペットは有効」という考えがあるので、自分の中で基準とする最適解としてヘビーショートリーダー(テーパー)+ロングティペットに落ち着いたということ。極端に狭い川や広い川、特殊な釣り方の場合を除き、具体的には(市販の7.5フィートのバット部カット or 市販の5フィートそのままの)5フィートリーダー+結び代スペーサー1フィート+ティペット6フィート(結び代スペーサーを入れない場合はその分ティペットを長く)の全長12フィートが基準で、状況によってティペットの長さを4フィート〜8フィートとしている。必要以上にスラックが入らないのでのけぞるような大げさな合わせは不要だし、狙ったところにスパスパ入るし、何よりトラブルレスでストレスフリーなのが気持ちいい。

推敲しないままのなぐり書き状態かつ読みにくい文章かつ長文で失礼しました!

ここで解説した内容は身をもって体験するのが最も効果的。Underwaterのフライフィッシングガイド・フライフィッシングスクールではフライフィッシングのトレンドは勿論のこと、トレンドやメディアに左右されない基本の「キ」も!

一方で、ロング"ティペット"ではなく、ロング"リーダー"が効果的な場面がある。その多くは湖やソルトウォーターになるが、これについてはまた別のエントリで解説したい。

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