私を騙した女と計算が苦手な男：マリアンヌという名の女

 

第1話　マリアンヌという名の女

 

出会った瞬間から、虫が好かなかった。

 

マリアンヌ(仮名)は真っ直ぐな黒髪をクリップで１つにまとめ、日に焼けたおでこを見せて現れた。

そして、言った。

「よろしくね」

 

イタリア人のファビオ(仮名)と私は、顔を見合わせた。

「誰？参加者は僕たち2人だけのはずだけど？」        

 

ファビオと私は、その2日前に知り合ったばかりだった。

ウブドにやってきてから知り合った、カナダ人女性クリスタルと見に行ったケチャダンス鑑賞の席だった。

彼女の隣の席に座ったのがファビオだった。

 

母国カナダで銀行員として働いていたクリスタルは、「人生を変えたくなった」とジャカルタにやってきて、英語教師の職に就いた。

 

バリ島でクリスマスを過ごそうとやってきたが、悪いタクシーに騙され、何もないところで置き去りにされていた

たまたまそこを通りかかった私は、見るからに外国人観光客という出で立ちのブロンドの女性が困っている様子だったので、車を停めて事情を聞いた。

そして、彼女を私のタクシーに乗せた。

 

職業だけでなく、年齢や趣味が近かったことから、私とクリスタルは親しくなり、毎晩ディナーを共にするようになっていた。

その日は、ディナーの前にケチャダンスを鑑賞した

 

 

ケチャダンスとは、円になった男たちが「チャッチャ」と声を合わせ合唱するもので、その円の中で神秘的なトランスダンスが演じられたりもした。

 

 

馬に見立てた青年が炎の上を舞うシーンもあった

 

 

なぜ私が今後の流れの中では大して重要でないクリスタルと出会ったときのことを書いたのかというと、

彼女が置かれていた状況は数日後の私の姿であり、そのような状況に追い込んだのは、マリアンヌと彼女がウブドで”引っかけた”青年ヨーヨーだった。

 

ヨーヨーは、ケチャで馬役を演じていた。

※写真の中の男性はヨーヨーではありません。

バリ島滞中ケチャは複数回鑑賞していて、写真は最初に見た時のものです。

 

マリアンヌはいかにもフランス人という名前だが、両親がベトナム人だったため、外見はベトナム人女性と変わらなかった。

 

 

次回へつづく・・・

 

ナミビアのヒンバ族の女性と

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