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学童保育指導員の悩み

【学童保育】保育中に子どもを膝の上に乗せることはいけないことなのか?

所長

こんにちは、がってん学童所長です

今回の記事は、Twitterのフォロワー様から寄せられたご質問へのお返事としてまとめました。

<ご質問内容>

この前、保育士さんが子どもを両膝に乗せていたら先輩保育士にとっさの時に動けないからやめた方がいいと注意されて、どうしたらいいか悩んでいるツイートを見かけました。 学童でもたまに、低学年の子とかが甘えて膝に座ることがありますが、どうするのがいいのでしょうか?

ご質問ヘの回答として

学童保育では、子どもと同じ目の高さで指導員が活動するような場面がたくさんあります。子どもがひざの上に乗ってくることができるのは、職員が子どもたちと一緒に座ってるからです。家庭に代わる居場所として、子ども達が安心して過ごせることを目的とする学童保育では、私はそのような子どもとのかかわりが大切だと感じています。

先日も、1年生の子どもが、私のひざの上にちょこんと乗っかってくることがありました。その子が初めて学童に来た4月1日の、緊張で強張った表情を思い出し、この1か月の間で私に心を許してくれるようになったことを嬉しく思いました。その子は別の子どもたちの遊びに興味をひかれて、すぐに私のもとを離れて行きました。

私たち職員は、何気ないスキンシップを通じて、その子と自分の心理的距離を測ったり、その子が子ども集団の中で置かれている立場を知ることができます。また、スキンシップを求めてくる子どもの中には、切実な思いや、支援が必要な課題・背景を抱えているケースもあります。まずは、しっかりとその子を受け止めないといけない場合もあるでしょう。

そうしたかかわりを通して、一人ひとりの子どもが、仲間の中で安定した居場所をつくり、仲間とともに成長していけるように支援していくことが私たちの仕事です。

しかし一方で、フォロワー様のご質問にもあったように、スキンシップにまつわる職員の悩みは後を絶ちません。なぜこんなにもスキンシップが問題になるのでしょうか。

様々な悩みを見聞きして私が第一に感じることは「職員間の意識のずれ」です。

スキンシップが問題となっているケースでは、例えば新人職員のスキンシップについて、ベテランから見ると、「その場の状況を理解できていない、自分を客観視できていない」ということになります。新人職員からすると、「子どもとのかかわりを大切にしているつもりなのに」ということになり、要は、新人職員からしてみると、わかりにくいのです

職員間のコミュニケーションを密にしたり、お互いの思いのギャップを埋めるための意見交流が必要ではないでしょうか。

第二に感じるのは、職員が置かれている過酷な現場の状況です

スキンシップが必要かどうか以前に、それを許さない状況がある。少人数の職員で大勢の子どもの安全を見守らなければならず、職員体制も不安定で、チームとしての共通認識が作れない。保育を中心で支えるベテラン職員に負担や責任が集中している、そんな切実な状況が伝わってきます。

職員自身が安心できない状況で、子どもにとって良い支援や保育が実現できるでしょうか。

私は、必要な支援が行える職員体制やより良い職場環境を、運営者に要望することも・・・

支援員

所長、話だいぶずれてます・・・

所長

あ、ごめん。なんだか熱くなっちゃって

前置きが大変長くなってしまいましたが、今回の記事では、フォロワー様のご質問への回答として、ストーリーをもとに、施設での子どもとのスキンシップについて考えていきたいと思います。

子どもへのスキンシップについては、様々な個人の見解や職場としての考えがあると思います。記事の前半では、職員間の意見のぶつかりあいを通して、記事の後半では、施設職員として気を付けたいポイントをもとに、私が大切にしていることをお伝えしています。

こどもをひざに乗せることがそんなにいけないことなのか?

支援員

所長、ちょっと相談が・・・

所長

たけし先生どうしたの?えらく落ち込んでるね

支援員

実は昨日・・・

おやつの後の自由遊びの時間のことです。

僕は室内遊びの担当だったんですけど、子どもたちと遊んでいたら、通りかかったりえ先生に、

支援員

今子どもをひざの上に乗せていたよね?

とっさの時に動けないからやめた方がいいわよ

支援員

え?

って、注意されたんです。

子どもの方からひざに乗ってくるし、保育中はずっと立っている方がいいのかな、とか思っていたらどうしたらいいのかわからなくなってしまって・・・

支援員

子どもをひざに乗せることって、そんなにだめなことなんでしょうか?

スキンシップはケースバイケースで考えるべき

所長

なるほど。それで悩んでいたんだね。僕だって子どもをひざに乗せることはあるよ。

支援員

やっぱり?別にいいっすよね?ひざに乗せるくらい。

所長

そうだね。ただし、時と場合にもよると思うけど。

いいかい、たけし先生、スキンシップ自体を僕は否定しない。スキンシップは時として子どもからの重大なサインである場合もあるし、そうでなくとも、何気ないスキンシップから、子どもとの信頼関係を測ったりすることもある。

これは、『子どもが宿題プリントを忘れた時にコピーしてはいけないルールについて考えたこと』の記事でも触れたことなんだけど、子どもを中心としたより良い支援や保育のためには、あくまでもケースバイケースで考えていかないといけない問題の一つだと思うよ。

支援員

そうっすよね!

僕はスキンシップは大切だと思う。

スキンシップを求めてくる子どもには、それぞれの思いがあって、中には言葉にできない寂しさを紛らわすためにスキンシップを求めてくる子もいると思うんです。僕はそんな一人ひとりの気持ちを大切にしたい!

所長

大事な心がけだと思うよ。

支援員

あ~、なんか腹立ってきた、なんで先輩から注意されないといけないんだろう?

所長

まぁ、そこはりえ先生にはりえ先生の思いがあるわけだから、お互いに話し合うことが大切なんじゃないかな。

・・・というわけで、りえ先生も交えて、3人でスキンシップについて話し合うことになりました。

スキンシップについて、それぞれの意見を出し合うことに

翌日の職員打ち合わせにて・・・。

所長

昨日のたけし先生が子どもをひざに乗せていた対応について、それぞれの思いがあるみたいだね。今日はそれを出しあいたいと思う。

それでは、まず、たけし先生からどうぞ。

支援員

は、はい。僕は子どもとのスキンシップは大事にしたいと思います。

ちょっとこの画像を見てください。

支援員

子どもたちをひざの上に乗せて読みきかせをする父親の姿です。

この写真からわかることは、子育ての中で子どもとのスキンシップはとても大切だということです。

僕は指導員として、保護者にもこのような時間を家庭の中で大切にすることを伝えていきたいし、保護者にそう言うからには、僕自身も学童の時間の中で、こんなかかわりを大切にしていきたい、です。

そんな大切さがわからない先輩みたいな人は、ぜひこの記事を読んでみてください。

「スキンシップは子育ての基本。肌の触れ合いは親も癒します」/ボーネルンドHPより

支援員

スキンシップをすると子どもにも大人にも「愛情ホルモン」が分泌されるんです!

所長

はい、説明は以上ですね。それでは次にりえ先生お願いします。

支援員

自分ばっかり愛情ホルモン分泌してんじゃね~よ!

私だってスキンシップの大切さくらいわかっているわよ!

けど、そんな風にみんなが一人のこどもとかかわって、一体だれが全体の子どもの安全をみるっていうの?

支援員

あの日は本当に大変だったんだから・・・

たけし先生が子どもをひざの上に乗せている時ね、別室でトラブルがあったり、保護者からの急な連絡があったり、まだおやつを食べ終わらない子どもの対応があったりしたの。そんな全体の様子、たけし先生気付いてくれていた?

支援員

・・・

あの時の私の頭の中を図解したら、こんな風になっていたんだよ!

支援員

私の状況を少しでもわかってほしかった。

支援員

い、言ってくれたらよかったのに。

支援員

本当に大変な時はね、助けすら求められないのよ。

個別対応と全体の安全の間の葛藤は宿命

所長

2人の気持ちが聞けて良かったよ

たけし先生の、個々のかわりを大切にしたいという気持ちと、りえ先生の全体の安全を守らなければならないという気持ちは、どちらも本当に大切だと思う。

スキンシップは個別対応となる場合がほとんどだから、全体の安全を守るという保育の目的とぶつかっちまうことがほんと多いよね。

所長

葛藤は保育の本質」って言葉があるんだよ

支援員

葛藤?

支援員

本質?

うん。一人ひとりの子どもを大切にしたい気持ちと、全体の子どもの安全を守らなければいけないという使命感との間で、僕たちは常に葛藤を感じることになるんだ。僕たちがプロとして子どもと関わっている以上、それはもう、宿命のようなものなんだ。

そんな葛藤を、一人ひとりの職員として、職員チームとして乗り越えていくことも保育の営みの一つなんだよ。

今回みたいに、お互いのギャップを埋めるコミュニケーションが本当に大切だと思う。

所長

よし、お互いに言いたいことを言い合えたようだし、握手しよっか。

支援員

え?

支援員

あくしゅ?

そう、スキンシップしてお互いに「愛情ホルモン」を分かち合おう。

支援員

あくしゅは恥ずいっすけど、僕、先輩の大変さを気づけなくてごめん。これからは僕のこともっと頼りにしてほしいです。

支援員

私こそ、きつい言い方しかできなくてごめんね。これからはもっとわかりやすく伝えられるように気を付けるから。

「ところで所長、葛藤は保育の本質って言葉、だれが言った言葉なんですか?」

「え?あれは僕の言葉だよ」

「なんだよそれ~、一気に説得力がなくなったよ。」

施設でのスキンシップについて、注意したい4つのポイント

さて、ここからは、施設でスキンシップを行う時に注意したい4つのポイントについてご説明したいと思います。

所長

私が子どもとスキンシップをする時には、次の4点を大切にしています。

  • 言語化できること
  • 安全が確保されていること
  • チームで検討されていること
  • 子どもの自立に向けたかかわりであること

スキンシップが職場で問題になるケースでは、これら4つのポイントを踏まえたかかわりでない場合があります。スキンシップや個別対応について悩んでいる方は、一つひとつのポイントごとに、ご自身や同僚職員と子どもとのかかわりを振り返ってみてほしいと思います。

そのかかわりの理由を言語化できること

所長

ところで、たけし先生、りえ先生は子どもをひざの上に乗せてはいけない理由をたけし先生に説明しているよね。

支援員

理由」?

所長

うん。「とっさの時に動けないから」つまり、子どもをひざの上に乗せることは「安全のためによくない」とりえ先生は指摘してくれていたよ。

それに対して、たけし先生は、あの時、「子どもをひざの上に乗せる」かかわりを自分が行った理由を説明できるかい?

支援員

せ、説明、っす、か?

所長

そうだよ。説明ってのは「言語化」ってことだよ。

僕が保育中に子どもからスキンシップを求められた時には、頭の中で、

  • 必要性はあるのか?(なぜ)
  • 緊急性があるのか?(今)
  • 受け入れるならどこまで(いつまで)

ってことを考える。それらのことを自分自身や同僚の職員に説明できることがとても大切だと思うんだ。

あいさつ代わりのちょっとしたスキンシップは、この限りではないけどね。

所長

「スキンシップは大事だから」という大きな話ではなくって、その時・その瞬間の子どもとのかかわりを細かくとらえた言語化の話をしているんだよ。

支援員

う・・・

所長

ポイントは、そのかかわりのもとにあった「子どもの言動」なんだ。

たけし先生のひざの上に乗ってきた子どもには、どんな思いがあったんだろう。その子の思いや行動に対して、たけし先生は何を感じてどのような行動や言葉がけを行ったんだろう。この場合のたけし先生の行動というのは、「子どもがひざの上に乗ることを許す」ということだったと思うんだけど。そこのところをじっくり考えて言語化してみてほしい。

言語化すると、自分の子どもとのかかわりの「意図」が自分自身の中で明確になる。そうすることで、その意図自体が正しかったのか?その意図のための働きかけとして、そのかかわりで良かったのか?などと「振り返る」ことができるようになるんだ。そしてそれは、新たなかかわりの方針へとつながっていくんだよ。

このような循環のことをPDSAサイクルと言う。

安全なかかわりであること

所長

りえ先生は、「とっさの時に動けないから」と、安全ついての指摘をしていた。このことをしっかりと考えてみようよ。

特に意図がなく無意識に、子どもの安全を守るには不適切な姿勢や子どもとのかかわりをしているなら、改めなければならない。このことは、「【保育・支援の姿勢】子どもの安全を守るために、適切な姿勢ができていますか?」の記事で伝えたはずだよ。

子どもの安全を守ることが僕たちの大切な役割だということは、どんな時でも忘れてはいけない。

  • 目の前にいる子どもの安全
  • 全体の子どもの安全
  • 職員自身の安全
  • 保護者や関係者の心の安全
所長

スキンシップは職員の身体的負担になることもあるから注意してほしい。

例えば急な飛びつきや、後ろから子どもが職員にのしかかるようなスキンシップは、職員の腰や首にダメージを与えることがある。

職員自身が気をつけることが大切だけど、子どもにも言い聞かせておく必要があると思う。

支援員

保護者や関係者の心の安全って?

心の安全とは「まわりに不安感を与えるようなかかわり」をしてはいけないということだね。

過度のスキンシップや、職員の側からの一方的なスキンシップ、子どもの年齢を考慮しないスキンシップは、見ている人を不快にしたり、不安感を与えることになる。

スキンシップは親密なかかわりだけに、その子どもの家族から見ると、家族以外の人間がスキンシップをすることに対して不安を感じることがあるかもしれない。

プロとして、そのことに留意しておく必要があるだろう。

また、現在は新型コロナウィルスの感染対策として、密接なかかわりは感染のリスクを伴うことにも注意してほしい。

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チームワークの一環としてのかかわりであること

そのスキンシップが、個人の思いによるだけでなく、職員チームとしての合意に基づいたものであるってことも大切だと思う。

なぜなら、スキンシップは個別対応となる場合がほとんどで、その職員が個別対応している間は、それ以外の職員がその他大勢の子どもたちの安全を守らなければならない状況を作ってしまう。りえ先生が言っていたことだよね。

所長

チームとしてその子の課題を共有し、必要な対応を検討するためにも、先ほど言った「言語化」が大切になるんだ。

念のために言っておくけど、常に個別のかかわりより全体の安全が優先されるわけではないよ。

チームワーク以外のかかわりをすることがいけないということでもない

たけし先生が必要だと感じて行ったかかわりを、チームで検討し、必要な場合はチームで協働することが大切なんだ。

先ほどのPDSAサイクルを、職員チームとしてまわしていくってことだね。

所長

たけし先生の気付きを、職員全体にどんどん報告して、チームで共有してほしい。

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子どもの自立に向けたかかわりであること

最後に、子どもからスキンシップを求められた時、その要求に応えながらも、その子を子ども集団にどのように返していくのかを考えることが大切だと思う。

所長

スキンシップがゴールではない。その子自身が、仲間の中で安心して過ごせるようになることがゴールなんだ。

これは、職員としての「見通し」だよね。

支援員

見通し?

例えばね、僕が子どもを膝に乗せた時に、いつまでも自分の膝の上にいるようなら、どうやったらこの子が子どもたちの中で遊べるようになるのかな?ってことを考える。

その子を膝に乗せながら、別の子どもを遊びに誘いこんで、個別対応を複数の子どもを巻き込んだ対応へと発展させていくことも、よく使う手法だよ。

所長

そして、機が熟したタイミングで、さっと身を引くんだ。

冗長な1対1のスキンシップをしている職員を見ていると、安全面やチームワークへの意識が感じられないだけでなく、見通しが持てていないと思えることがあるよ。

そういった時は、その職員のせいではなく、職場集団として、子どもの自立に向けた意識の共有が弱い場合もあるから、一度職場として確認し合うことが必要かもしれないね。

時には「今はできない」ということを子どもにはっきりと伝える

所長

例えば帰りの会やおやつの時間などに、子どもがひざの上に乗ってきたとする。たけし先生ならどうする?

支援員

それはさずがに受け入れないですね。

スキンシップは双方の気持ちが合致した時に成立するものなんだよね。だから、職員が今はその時ではないと感じた時は、「今はできない」と子どもにはっきりと伝えることが大切だよ。

「今はできない」と言うと子どもは案外納得をするものなんだ。そんな職員の反応を通して、子どもたちは、お互いに安心できるスキンシップの方法やタイミングを学んでいくことができる。

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さいごに・・・

いかがだったでしょうか。

今回の記事では、施設でのスキンシップについて考えてみました。簡単に内容の振り返りをしたいと思います。

まず、職場でスキンシップが問題になる背景として、

  • 職員間の意識のズレ
  • 過酷な労働環境

があるという問題提起をしました。

所長

意識のズレを埋めるのは、職員間のコミュニケーションです。

支援員

過酷な職場環境では、ついつい厳しい言い方をしてしまうことがあるけど、新人職員の方の思いをじっくり聞きだすような職員同士のかかわりを大切にしてほしいです。

支援員

先輩が言うかな~?

また、職員としてスキンシップなどの個別対応をする時には、

  • 言語化できること
  • 安全が確保されていること
  • チームで検討されていること
  • 子どもの自立に向けたかかわりであること

の4つのポイントを大切にしてほしいと思います。

支援員

「今はできない」ということを子どもに伝えることも大切です!

支援員

あなたがそれ言うの~?

最後になりましたが、今回ご質問をくださったフォロワー様には、心から感謝をお伝えしたいと思います。

所長

どうもありがとうございました。

支援員

私、いつもフォロワー様のtweetから学ばせてもらってるんです。

支援員

これからもよろしくお願いします!

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(おしまい)

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