わたし歩記-あるき-

心理カウンセラーでもある写真家のブログです

賛成して聴くということ

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 昨日は1年に渡るNHK学園での澤村直樹先生による傾聴講座の最終日、そして卒業式でした。これで晴れて“コミュニケーション傾聴士”として認定されたわけですが、学べば学ぶほどに、何をもって”傾聴”したと言えるのかが、分からなくなる・・と言うのがその場に居合わせた受講生全員の総意であった気がしています。

 


 とは言え、この2年間、大学の授業を始め、軒並みオンライン形式に変わったあらゆる講座の中で、この傾聴講座は最後まで対面講座が守られた唯一の学びの場でした。安全安心を徹底してくださったNHK学園の配慮は本当にありがたかったです。

 

 
 澤村先生が、最後に仰った、

 


「1年間これまで学んだことは一旦ぜんぶ忘れてください。必要なことだけが残りますから。」

 

 

この言葉は、とても印象的でした。

 

 

 これは大学での学びにも言えるのではないでしょうか?実際の現場では、
教科書や授業で学んだ法則も理論もきっと何ひとつ型通りになんていかないし、むしろ役に立たないことの方が多いように見えます。(既に現場で働いている心理職の方とご一緒しているカウンセリング講座で痛切に感じています。)

 

 

 

 「傾聴」に関しては、今ふたりの先生から学びを受けています(澤村先生と精神科医の高橋和巳先生です)。が、一口に「傾聴」といっても、時と場合で、その聴き方はだいぶ違うことを知りました。

 

 

 例えば、澤村先生から学んだのは、どちらかと言うと、老人ホームや災害支援現場等の「福祉」よりの、ソーシャルワークの現場において有効的な傾聴技法だったと思います。所謂、「話すことで活力を取り戻す」ことや「自分が受容されていると感じられる時間」を醸成するための傾聴ですね。

 

 

 一方、高橋先生の場で学んでいる傾聴は、「見立て」を行うための傾聴です。これは、文字通り精神疾患を見立てるための傾聴で、特に初回のインテーク面接を左右する聴き方になります。

 

 

 どちらも必要で、しっかりと使い分けられないといけないものですが、ひとつ共通している根っこの部分は、目の前の人の話を、「賛成して聴く」ということだと思いました。

 

 

 「傾聴」をちゃんと学ぶ以前のわたしは、この「賛成して聴く」ということの意味が曖昧で理解不足だったなあと思います。

 

 

 「賛成して聴く」と似たニュアンスで、「応援して聴く」と言うものがありますが、この2つの明確な違い、あなたは分かりますか?

 

 

 

 例えば、夫にことあるごとに虐待を受け続けている奥さんが面談にやってきて、傾聴者であるあなたに対して悩みを話してくれたとします。面談が2回、3回と進んでいきますが、夫の暴力は相変わらずで、奥さんは、夫と別れる気がわるわけでもなく、益々生傷が増えており憔悴し切っています。

 

 

ここで「応援して」聴いた場合、

 

 

どうしてあなたがそんな酷い目に遭い続けなければいけないの?もういい加減、そんなろくでなしな夫と別れちゃえばいいですよ!そうじゃないと、あなた自身が不幸になります!避難施設ならご紹介できますから、一緒に見学にいきませんか?!

 

 

となり、さらに彼女がその応援に応じない場合は、

 

 

「こっちが言えることは全部言ったし、本人に変わる気がないなら、もう好きにしたら?」

 

 

という展開になっていきます。

 

 

では、「賛成して」聴いた場合はどうなるか・・・

 

 

同じ話を、ただただ聴きます。でも、表面的にはただ聴いているように見えても、傾聴者の心の中では、どうして彼女が夫の元から逃げ出さないのか、否、逃げ出せないのかが、完全に理解できています。理解できているから、黙ってただ聴けるのです。そして、上記の応援の台詞を言わなければならない、言ってもいいタイミングも分かっている。

 

 

 

 「聴く」って、日常的な営みです。家庭の中や、友人関係であれば、「応援して聴く」が力になったり、本人が奮起するのに有効な場合も多いと思います。でも、心理面談においては、ありのままの「理解」がすべてです。そして「理解」のためには、どんな心理面の脆弱性を抱えている人が、どんな反応をしやすいか、その傾向をやはり精緻に学ぶ必要があったのです(そして、この学びには終わりはありません)。大学、高橋先生、澤村先生と歩んだこの2年間は、まさにわたし自身の「理解」の幅を広げるための時間だったと思っています。

 

 

 

 「傾聴」は実に奥深いですね。今後、ボランテイア活動などにも積極的に参加していく予定ですが(傾聴ボランテイア等のお誘いも大歓迎です)、わたし個人でも、ニードがあれば、小さくても「傾聴」のある場を持っていけたらなと考えています。

 

 

 

 

 

 

心理カウンセリングにおける「傾聴」が学べる高橋先生の著書です。^^

 

きょうも、最後までお読みくださり
ありがとうございました^^
さとうみゆき

 

 

 

 

 

 

写真を眺めてほっと一息^^  

 

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