カテゴリ:小説 エンジェルダスト
第3章 ビギンオブミッション 8
セキレイが警備を交代する午前9時が10分後に迫ったので、あたしはリビングのモニターから玄関の外の様子を眺めた。 交代要員は既に到着していて、4人で何やら引き継ぎをしている様子だった、 5分前になるとヤタラを警備に残して、セキレイが交代要員2名を連れて部屋の中に入って来て彼らをあたしに紹介した。 だが、セキレイの顔からは、この紹介が終わったらここから逃げる気満々のオーラが眩しいくらいに漂っていた。 そのうちの一人、コードネーム麒麟(キリン)は正統派のイケメンで、恐らく彼がセキレイ班のエース諜報員だろう! もう一人は特徴がない男だったので、名前を覚える気がないあたしはその男の名前を直ぐに忘れた。 「買い物をお願いしたいんだけど、セキレイキャップはそのまま逃亡する危険があるので、これはキリンさんにお願いするわ!このお金で買ってきて!その間、警備は彼が引き続き行いますから」 「それなら私が代わりに行っても構いませんが」 ヤタラが申し出たが、買い物に豆腐や生卵が入っていたので、彼の握力で潰れてしまうのが怖かったので、あたしは婉曲にお断りした。 ヤーさんには悪いけど、どうせだったらイケメンが買って来てくれた物の方が美味しそうな感じがするし! キリンがセキレイの顔色を伺うと、セキレイはキリンに顎をしゃくってお前が行け!と命じた。 暫くして、キリンから山盛りのショッピングバッグ2袋とお釣りを受け取ると、あたしはセキレイをマンションの中に引きずり込んだ。 「キャップ!マルタイに一体何をしたんですか?」 「違うよ!俺がマルタイからされているんだ!」 「何を?しかも現在進行形?」 「心配しないで!こっちの問題だから」 キリンはまだ不思議そうな表情をしていた。 「聞いているとは思うけど、今日の午前中に槙野っていう女性ファッションデザイナーが来て、午後は北山ってインテリアデザイナーが来るから宜しくね」 「はい、了解しました」 「それから2003号室から誰も外に出られないようにドアを封鎖して頂戴!」 「えっ?しかし、そんな事をすればマルタイ、貴女も閉じ込められてしまいますが・・・」 キリンが驚いたような声を上げた。 「それで良いの!あんた達もプロなら敵が地下室に逃げ込んだ時、仲間が来るまでドアを外側から封鎖したりする事があるでしょう?」 「それはまあ。地下駐車場の車から道具を持ってくれば可能ではありますが・・・」 キリンは半信半疑の表情のまま、あたしの顔を見続けた。 「分かった!分かりましたよ、姫!もう俺は逃げたりしませんからドアの封鎖は止めて下さい。来客が怖がってしまいますから」 「分かればよろしい!」 本当のあたしは、ドアが封鎖されている所を来客に見せて、彼らに緊迫感を味あわせてやりたかったのだが。 そうすれば、彼らは益々手抜きをしなくなる筈だったが、セキレイがあっさり白旗を上げてしまったから仕方がないか? インコの根性なし! 最初の室内警備は、あたしが名前を忘れた特徴なし男だったようで、彼はそのままリビングに残った。 リビングに名無し君がいては、何かと都合が悪いわね!あれっ?彼の名前はナナシで良いじゃん。何となくコードネームっぽいし。 早速、ナナシにはこのリビングから消えて貰おう! 「今日は来客があるから、室内警備はそこの応接室と秘書の控え室でお願いします」 「分かりました。というか、室内はキャップがいるから大丈夫ですね」 「おい、おい、俺は今は非番なんだ!お前がちゃんと警備をするんだぞ!」 セキレイの言葉で、ナナシは素直に応接室の中に入った。 セキレイがその後に続いて応接室に入ろうとした。 「あんたまでそこに入ってどうするのよ!」 「えっ?俺、姫んちに遊びに来ているだけだし」 「昨日の夜、あたし、インコちゃんにちゃんと言ったよね!分かったら家来はさっさとコーヒーでも淹れて、来客対応の準備をするの!あんた、ドアを外側から封鎖されたいの?」 「へ~い」 セキレイはショッピングバッグを抱えてキッチンの中に入ると、来客の準備を始めた。 家来の躾は最初が肝心だっていうから、今日はビシバシとコキ使うわよ!お覚悟を召されよ、インコ殿」 「姫、槙野さんがアシスタントと一緒におみえになりました。自分が1階に行ってこちらまでお連れします」 どうやら、あたしの姫という愛称はセキレイの班内では共有化されているようだ。 家来にしては上出来、上出来! 「室内警備者は直ちに玄関ドアの外に立つ事!インコちゃん、彼に伝えて来て!それから来客が座るまでインコちゃんはリビング内で直立姿勢ね!」 「だから、俺は非番だと・・・」 「これは警備のお仕事じゃないの!家来のお仕事!」 「全く、人使いが荒い姫には仕えるべからず!とは、昔の人は良い事を言ってますよねぇ」 「それはちょっと違うかな?人使いが荒い姫には尽くして学べ!でしょ?」 「ハイ、ハイ、分かりましたよ」 「それからあたしは、ハイは一度だけでいいなんて野暮な事を言わない姫だから」 「?」 「ハイって分かった、ヤリますって意味でしょ?だからハイを繰り返すうちにその言葉が段々と馴染んで、あたしに対して従順に成って行くの!こんな手の内を教えてあげるのもインコが可愛いあたしの家来だからよ」 「ハイ、ハイ、てか、何時の間にか俺の愛称から、ちゃん付けが消えてるんですけど?」 「それだけ、あたしの家来愛が深まったって事!」 ←ここをポチっと押して戴けると、この作者は大変喜びます。 ←PVランキング用のバナーです。ここもプリっと押して戴けると、この作者はプウと鳴いて喜びます。 ファンタジー・SF小説ランキング →ここまでグニュ~と押して戴けると、この作者はギャオイ~ンと叫んで喜びます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2022.05.25 21:11:44
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