↑のつづき。


さて、天竜川周辺には面白い話が転がっている。


西暦758年~811年、奈良時代から平安初期を生きた『坂上田村麻呂』という将軍がいた。


4代もの天皇に仕え、二度の征夷大将軍を務めた。

当時、異民族とされていた東北地方の「蝦夷」を平定した。


そんな田村麻呂将軍には数々の伝承が各地にのこされている。


毘沙門天の化身と言われていたり、鈴鹿山の鬼の美女「悪玉」を嫁にして妖刀を手に入れたり。


そんな伝承の数々を「嘘か真か」と問うよりは、「なぜそのような逸話が生まれたか」を考えることが重要なのではないかなと。



田村麻呂将軍には「鬼」にまつわる逸話がある。

となれば、当然「龍」にまつわる逸話もあるのだ。

「鬼」「龍」「神」は団子三兄弟のようにひと差しになっている場合が多い。

そこに、「牛」や「蛇」といった団子の味付けを決める調味料が加わって「これ美味しいね」となるのである(なんの話だ(笑))。


天竜川周辺には、『田村麻呂将軍と赤大蛇』の伝説が残っている。

長くなりそうなのでハショって書きます。

将軍が東征の際に現在の浜松市、「船岡山」を訪れた。
当時は岩田の海と呼ばれる程広かった天竜川は荒れており、人々を困られていた。

そこで、将軍は船岡山の鬼門に当たる『岩水寺』に参拝し、「民を救っておくれ」と願い、一泊した。

すると、岩田の荒れ狂う海から美しい『玉袖姫が現れ、二人は恋仲なり、夫婦となった。

玉袖姫は身重となり、産屋を建ててもらい、出産の時、田村麻呂将軍に「私が産み終わるまで、決して中を覗かないで下さい」と言い、産屋に入った。

しかし、七日経っても出てこないため、将軍は産屋の中を覗いてしまった。

すると、三十メートルほどの赤い大蛇が赤子を舐めていた。

玉袖姫は大蛇であったのだ。

玉袖姫は「私はこの海に住む蛇です。本当の姿を見られたからには帰らないといけません。しかし、この子はあなた様の子です。どうか立派な武将に育てて下さい」と言い、二つの『宝珠』を渡して、岩水寺の赤池に消えていったのだそうな。

それから八年後、将軍は息子の「赤蛇丸」を連れて再びこの地に赴き、荒れ狂う岩田の海に、宝珠の一つ『水干玉』を投げ入れた。

すると、汐は引き、広い陸地となった。

水が干上がった時、大蛇は赤池から鍾乳洞に入り、鹿島の椎ヶ淵に入った。

浜松市天竜区に鎮座する『椎ヶ脇神社』は、将軍が赤大蛇を祀った場所であり、二つの宝珠は浜松市東区の『有玉神社』に奉じられたのだそうな。



ちなみに、赤大蛇が入った鍾乳洞は、天竜川の源流と言われる諏訪湖にまで続いていると言われている。



卍高野山真言宗寺格別格本山
竜宮山『岩水寺』
浜松市浜北区根堅に鎮座
本尊 薬師如来 地蔵菩薩

⛩️『有玉神社』
浜松市東区有玉南町に鎮座
祭神 天照意保比留売貴命 外二十ニ神

⛩️『椎ヶ脇神社』
浜松市天竜区二俣町鹿島に鎮座
祭神 闇淤加美神 豊玉姫命


古事記や日本書紀を読んだことがある方なら、すぐにピンときてしまうと思うが、この伝承…

山幸彦と豊玉姫の神話と瓜二つである。

しかも、椎ヶ脇神社には、豊玉姫が祀られている。

その昔、椎ヶ脇神社の神主が、竜宮城にいき乙姫と出会った…という伝承まであるのだ。

しかも、ある古文書には、神主が出会ったのは乙姫ではなく龍神であったとも記されているらしい。



田村麻呂と山幸彦の伝承の共通点はざっとみても↓

○竜宮城=ワタツミの宮
○玉袖姫=豊玉姫
○出産時の、姫の大蛇化=姫のワニ化(龍)
○二つの宝珠=シオミツ玉とシオフル玉

あまりにも似過ぎている。


記紀編纂は712~720年。
田村麻呂が生まれたのが758年と、30年以上後のことだ。


つまりこういうことなのだろう。

目的は、蝦夷を平定(征服)した田村麻呂の神格化(正当化とも言える)。


記紀編纂当時は、コピー機もKindleもない為、一部の偉い人や関係者しか読むことが出来なかった。

編纂したものを一度に全国に広めるのには、手間も時間もかかるはずだ。


田村麻呂の赤大蛇伝説は、恐らく作り話だろう。

問題は、本当は田村麻呂ではなく「別の主人公」がいたのではないか…ということ。

そして、その主人公はずっと昔の人物なのではないだろうか。


山幸彦と豊玉姫の神話は、通説で考えれば九州のお話である。

しかし、前回も書いた通り、出雲神話に関連している地名などが、伊豆などの静岡や、長野山梨に点在していることから、記紀神話のイメージを鵜呑みには出来なさそうだ。



さてさて、最近の私のブログを読んで頂いている方なら、もう何が言いたいのかわかってしまうと思いますが、椎ヶ脇神社の祭神にクラオカミとトヨタマ姫が祀られていることが、重要なのである。

あくまで個人的な考えだが、タカオカミはイワナガ姫、クラオカミはコノハナサクヤ姫と同一神である。

つまり、椎ヶ脇神社には姉妹神が祀られていることになる。

姉トヨタマ姫⇒イワナガ姫
妹タマヨリ姫⇒コノハナサクヤ姫

なのではないだろうか。。

神話では、竜宮のトヨタマ姫の正体は『八尋和邇(ヤヒロワニ)』とされている。

龍神の神格を持つため、龍である。

「尋」とは、「尋ねる」の意味の他に、長さの単位として用いられる。

1尋で6尺、訳1.8メートル。

八尋=14.4メートル。

正確な数字ではなく、「それぐらいスッゴい大きいワニ」という意味だろう。

「八」は、「八百万」などの言葉の通り、大きい、多い、という意味に使われる。

ならば、『八岐大蛇』もそうなのかもしれない。

つまり、ヤヒロワニ=ヤマタノオロチだということだ。

トヨタマ姫がイワナガ姫であるなら、ヤヒロワニはヤマタノオロチである。

そして、『赤大蛇』でもあるのかもしれない。

天竜川の源流「諏訪湖」。
岩水寺の赤池から入る鍾乳洞も諏訪湖まで繋がる。

諏訪に伝わる神様『ミシャグチ』は龍神ともされており、様々な漢字が当てられている。

例えば『石神(しゃくじん)』。

「石」は「イワ」と読む場合もある。
ちなみに「長」の元を辿ると「へび」だ。

あるいは「巳石神」と書いても良さそうである。



また、こうも書く。



『赤口神』。



赤大蛇。。。


次回は、しばらくほおっておいてしまった、コノハナサクヤ姫の「双子の兄」について書ければと思っとります。

つづく。

ではまた❗



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