上位陣不振の九州場所幕内の土俵を、二人の若手力士が盛りあげている。
22歳の王鵬(おうほう=西前頭13枚目)と23歳の豊昇龍(ほうしょうりゅう=西関脇)。10日目までともに1敗で、優勝争いを引っ張っている。
豊昇龍は11日目、前日6敗目を喫して大関復帰を断たれた関脇御嶽海と対戦。鋭い踏み込みで両まわしを取って、一気に寄り立てた。
さきに土俵に上がった王鵬。阿炎(あび=西前頭9枚目)のもろ手突き4発をまともに受けて敗れ、優勝争いから一歩後退した。それでもまだ2敗目。
12日目に組まれた両者の直接対戦が興味深い。
相手に合わせずつっかけるなど、立ち合いの乱れも目立つなか、王鵬は両手をきちんとつき、相手が立つのを待つ。押し相撲を軸に、左右からの攻めも鋭くなってきた。先場所までのもたもたした相撲から、一歩抜け出し始めている。
豊昇龍の決まり手は「突き落とし」「ひっかけ」「寄り切り」「とったり」「上手投げ」など多彩だ。5日目には「かわず掛け」まで飛び出した。
強い足腰、バネ力がなければ、この攻めは出てこない。
彼ら若手が、近い将来、相撲界を背負っていくことは間違いなさそうだ。
九州場所では、横綱、大関など上位陣が、大相撲界の看板の役割を果たしていない。
力で駆け上がってきた栄光の地位が、新しい力の台頭でねじ伏せられ、交代を迫られていくのは、激しい格闘技の世界の宿命だ。としても、看板が1枚、2枚と抜け落ちていくのを見るようで、何とも寂しい。
御嶽海や正代などに強い気持ちがあれば、ぜひその相撲を見せてほしいが、その意気込みが土俵からどうも伝わってこない。
九州場所は、新旧交代の転機になりそうな気配も感じる。
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