大日本帝国概略史 -11-











この増城寺は


と、直弼がパルーに語る。

努めて冷静にと思いながら語る直弼の頭上に

哀しい

と後に下級役人が記した太陽があった


「この増城寺は

歴代将軍の御霊が眠る我が国の神聖な場所である


だがこの場所は我々幕府関係者だけでなく

江戸の民百姓どもにも親しまれているところであり

毎日、有志が墓掃除や

境内の清掃を無償で行っておる


我々幕府の政は誰の為にしておるのか


その答えを

ここではいつでも見ることが出来た

素晴らしい場所であった」





               (画像お借りしました)





パルーは

政は誰の為にしておるのかという一節を

通訳から聞いた時

(国民の為である)

と即座に思った


と、同時に

その国民の為という答えが見られたこの場所を

破壊、壊滅せしめた我々を

この幕府大老は許しはしないだろうと

暗澹たる気持ちになった


だが

この時代

帝国主義の時代に

許す許さないの許可は

常に大国強国が決める事だとの想いは

この新興国家の軍人であるパルーは人一倍持っていた


直弼語る。


この政の理想の姿が

いつでも見られたこの場所にいた民百姓は

果たして其方方の都合により報復されてもよいものなのか?と。


「いかに!」


直弼は最後の言葉を話し終わると

微動だにせずパルーの眼を外さなかった


パルー語る。


「政は国民の為にある。

と、同時に国民は国家に盲目であってはならぬ!

盲目である時点でその国民は責任がある。

場合によれば

命さえ失うほどの責任があるのだ!」


パルーの強者としての反撃が始まる。





第一章の始まり