Quadrifolium's blog

元海外赴任サラリーマンの独り言です。

査定ってなんやねん

本を読んだ。

経営×人材の超プロが教える 人を選ぶ技術 | 小野 壮彦 |本 | 通販 | Amazon

著者はさまざまな企業の経営幹部や社長といったエグゼクティブなポジションの候補者を査定する仕事をしており,その候補者はどんな能力や価値観・人柄を持っているか,将来性はどれだけあるか,そのポジションにふさわしい人材か,といったことを面接で見抜くプロらしい。コンピテンシーとポテンシャルの違いや,サイコパス人材の見抜き方など,話題は多岐にわたり,非常に興味深かった。ここまで細かく人を観察できるのはすごいと思った。また,どんなプロでも適材を正しく見抜けるのはせいぜい7割で,どうしても3割は間違える,それだけ人が人を見抜くのは難しい,と素直に吐露しているのも好感が持てた。

 

ちょうど今は2月末,人事異動のタイミングであり,来年度に向けて会社員は誰が昇進して誰が出世コースから外れるのかなどが一般に気になって仕方ない時期である。

新卒の就活に関するノウハウは割と世間に流通しているが,その一方,会社というのがどのように若手~中堅の社員を査定しているのかは秘密のベールに包まれており,本人ががんばっているつもりでもなかなか昇格しなかったり逆に本人も驚くような抜擢を受けることもあり,どう転んでも納得感が薄い話になりがち,と感じる。

営業のように成果が数字となって表れやすい職種ならまだ昇進の基準は誰が見てもわかりやすいかもしれないが,私がいるような研究開発部門というのは直接に利益をあげる部署ではないので,いったい何を基準にして人を選んでいるのかイマイチよくわからないところがある。

部下をつぶすようなヤバい人でも割と上のポジション(部長より上)に出世している人がいるにはいるので,会社の「人を見る目」が完全でないということだけはわかる。が,一般には人柄も見られている感じはする。研究者として優秀な人で,出世している人はもちろんいるのだが,あまり研究面でぱっとしない人で出世コースにのっている人もいる。よくわからない。

アカデミックな世界では論文の数やジャーナルのランク,被引用回数,学会発表件数,特許出願数などは明確で客観的なのだが,どうも企業内部の人事査定というのは不透明で,私にはとっつきにくい。そういうものに一喜一憂してもなあ,という感じもする。たとえば将来性のある良いテーマにアサインされた若手がよい成果を上げることがある一方で,いかにも無理難題という感じのテーマをアサインされた若手が成果を出せない・・・,そういう場面もよく目にする。個人の資質以外のところでかなり成果が影響されている。なのであまり人事評価を気にしてもなあ,というのが私の感想。しかし,どうも大企業の会社員というのは同期で自分の出世のスピードが遅いとか速いとかいうのをすごく気にする生き物のようだ。

東京海上・残酷日記|やなぎ|note

というブログ記事には,東京海上に新卒で入った人がいかに会社からよい評価を得られず挫折したかという話が詳細な心理描写を交えて綴られており,読んでいると,参考になると同時に胸が痛むような気がした。

もともと学問をやっていた私からすると,世界のトップレベルの頭脳というのは(少なくとも理系は)MITやプリンストンスタンフォードなどに密集しており,世界中からとんでもないレベルの人材が集まっているので,彼らの頭脳に比べたら私なんてなあ,いくら努力してもね~,ハッハッハッハ・・・・・(笑うしかない)という感じである。国際会議で私が海外の有名教授に話しかけにいってもウザそうに(かなり失礼な感じで)今は忙しいからあっちにいけ,シッシッ,みたいに言われたことなんて何度もあるし,国内の大学の教員採用面接でもずいぶん失礼な,人を馬鹿にしたようなことを言われて落とされたことが何度もある。なので私のプライドなんて,もう今の会社に入社した時点ですでにボロボロであった・・・。

ただ,新卒で就職してずっと与えられた仕事をしている人たちはそういう社外の空気に触れる機会がないので,どうしても内向きになってしまうのかなあ,,,。そういう意味では気の毒かもしれない。

データサイエンス系では,Kaggleを通じて社外と交流している社員もごくごく少数だがいるらしい。それはいいことだと思う。