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精神科専門病院へ転院|ユマニチュードで認知症ケア

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精神的に不安定という理由で介護老人保健施設に移れなかった母は、認知症専門の精神科病棟のある病院を紹介されました。

実家の母の家から電車で1時間ほどかかるため、いざという時にすぐ駆けつけることはできませんが、緑豊かな自然に恵まれた環境、レクリエーションやコミュニケーションなどの作業療法での治療が今の母には必要かと判断しました。

入院前の家族面談を終えて1週間後の転院の日の前日、入院中のリハビリ病院から
「朝から発熱、貧血の数値が異常に低く輸血が必要のため明日の転院は延期にします。」と連絡が入ります。
輸血した場合まれに重篤になる場合もあるとも言われました。

高齢のため容態が急変するかもという覚悟はしていましたが、体調は安定し輸血から1週間後に転院となりました。

介護タクシーでの約1時間の移動は大丈夫か心配しましたが、精神状態も落ち着いていて無事に病院に到着しました。

車の中での母との会話はところどころ聞き取れず、噛み合いませんが

真夏の紺碧の空を見ながら
「いいお天気ね。こんな日にお父さんがいたらみんなでドライブできたのにねぇ」
50年以上前の父も弟も元気だった頃の家族5人の生活にタイムスリップ。

私が11歳のときに父が病死、直後は母の涙に不安な日々を過ごした記憶がありますが、その後はほとんど母の口から感傷的な父の話聞いたことがありませんでした。そういう感情をずっと抑えてきたのかも知れません。

認知機能の低下で元気な頃の母ではなくなってしまいましたが、反面、心の奥底に潜んでいる感情を垣間見ることができた気がします。

入院手続きを終え、母が病室へ移るその時がまた再びしばしお別れの時

「寂しい、一人で怖い」と涙を浮かべる母の手を握り
「また来るからね」と声をかけるも

まだまだ面会禁止のため会えるのは1ヶ月以上先であるこの現実に、こちらも目頭熱くなり胸になにか込み上げてくる感情を抑えるのに必死でした。

母と離れたあと病院側のスタッフである

・精神保健福祉士
・作業療法士
・栄養士
・薬剤師

が代わる代わる丁寧に各々15分ほど今後の入院生活の説明をして下さいます。
さっそく母の昼食のお世話をしてくださった作業療法士の方が母の様子を伝えてくれました。

昼食はパスタを美味しいと完食
サラダは味が薄いと不評
デザートのゼリーも大喜びで完食

伸び切った髪を後ろでひとつに結んだ母に
「素敵な髪型ですね」と作業療法士さんが褒めると
「前の病院の看護師さんたちが取っ替え引っ替え髪をいじって結んでくれたのよ」
と嬉しそうに返事
「私はピンク色が好きなのよ」と自己主張

要介護4で、精神的に不安定と事前に聞いていたスタッフさんは、母が普通に会話できることに驚いていました。
そんな風に他人と飾らぬ会話をする素の母を知りませんでした。
私は母親に感謝はするけれど褒めるということをしたことがなかったかもしれない。

泣き言も他人の悪口もほとんど言わない母は娘の前ではいつも凛としていて、認知症になった現在でも「親として」の潜在意識があるがゆえに、逆にうまく喋れなくなってしまったのでしょうか。

ここの病院は認知症の人に対して「大切な存在である」と伝える技術、ユマニチュードいう取り組みをしています。

ユマニチュードとは

「人間らしさ」を意味するフランス語が語源で認知症ケアの技術のひとつ。
会話や身振りや話すときの目線など、人間のあらゆる感覚を活用したコミュニケーション法です。

患者を見る・聞く・話しかける・触れるといった人間としての基本動作、人間と人間の絆が認知症患者の心のケアになり、認知症の人の感情が穏やかになっていくのだそうです。

まだ研究途中らしいですが、まさに入院初日にユニマチュードの取組の成果とも思える母の様子をうかがうことができました。

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