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大学時代、アルバイトをしていた時に出会った人との思い出。
気づかいをしてくれる人との距離感って結構難しい、と感じた出来事。

当時の職場のアルバイトは全部で9人。
大学生の私以外は、全員20代から40代の既婚者女性だった。
その中で一番年が近かったTさん、確か25歳位だったと思う。

他のメンバーは大らかというかガハハ系の女性達、対してTさんと私は引っ込み思案なタイプ。
休憩中に自分の話題を振られると、赤面してしどろもどろに…
お互いのそんな姿に、どこか安心感を覚えていた。

さて、この職場はアットホームといえば聞こえがいいが、仕事以外で面倒な事柄が色々あった。
月に1度アルバイトが2人1組になって買出しに行く用事もあった。
仕事以外の日にわざわざ職場の人と待ち合わせをして買物…
私は、Tさんと買出しのペアになることが多かった。

初めての買出しの日。
私が時間前に待ち合わせ場所に着くと、もうすでにTさんの姿が。
「お待たせして、ごめんなさい。」と言うと、
「全然大丈夫。はい、これ、買っておいたから飲んで。」とTさんがコーヒーのカップを差し出してくれた。

心配性である私は昔から時間より早めに到着するようにしていた。
待ち合わせで相手の方が先に待っているなんてはじめての事で、とても驚いたことを覚えている。
さらに近くの店でコーヒーを買ってくれていたなんて!
コーヒーの代金を渡して、二人で近くの公園でコーヒーを飲んで話をして、それから用事を済ませた。
Tさんの気づかいに「本当にありがたいな~。」と感じた。

数カ月後、またTさんとの買出しの日。
今度は大分早めに到着して待っていると、コーヒーを持ったTさんが現れた。
私の方が先にその場にいることに対してあからさまに狼狽していた。
「もっと早い時間に着いていたのよ。でもカフェが混んでいて。」と、青い顔をして何度も繰り返す。
その様子を見て「Tさんは待ち合わせ場所に先にいたい人なのだな。」と判断して、Tさんより早く到着という考えは止めた。

その後もTさんと買出しの機会があったが、毎回コーヒーを買って待っていてくれる。
徐々にこれが負担になってきた。
苦手なコーヒーチェーン店の苦い(としか私には感じられない)コーヒー、貧乏学生にとっては価格も高い。
自分が欲しいと思っていないものにお金を使うのはキツい。
すでに飲み物を持っているのでお店に入ることもできない。
真冬に公園でアイスコーヒーを飲む羽目になったときには、あまりの寒さに凍えた。
大学生活が忙しくなってくると、飲んだり話したりせずにサクッと用事だけ済ませて早々に解散したいと思うようになったり。
初めての時の「ありがたい」はどこへやら、その気づかいが重荷にしか感じられなくなった。

コーヒーは結構です、と言えればよかったのだ。
でも、アルバイトを始めたばかりの頃に「コーヒーが好き」と言ったことを覚えていてくれて、いつも用意してくれているというのも分かっていた。
数ヶ月前に私が先に到着していた時のTさんの表情を思い出すと、とても言い出すことなんてできなかった。
Tさんのあんな顔はもう見たくない。
私に気を使ってくれているということを痛いほど感じていたので、無下にはできなかった。

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