31歳軟弱獣医師の考察 〜誤診を招く動物病院業界の構造的問題〜 | みなとまちアニマルクリニックの「裏」ブログです。

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こんにちは。こちらは「非公式」ブログです。書いている内容は、あくまでも著者の一意見であり、賛否のご判断はお任せします。読み飛ばす程度に呼んでください。僕は自戒のつもりで書いてます。

ここ数日の間に

 

動物病院での誤診で亡くなった

 

動物病院が訴訟された

 

なんていう報道をよく目にします

 

誤診は絶対あってはいけません

 

しかしながら、獣医師も人間です

 

「間違える」こと自体は起こりうるのです

 

なのでいかに誤診をなくすのかというマネジメントが不可欠です

 

このマネジメントを考えるにあたり

 

やっぱり中々難しいなあと思う点もあるわけです

 

それは、動物病院や動物を取り巻く環境に起因していると思います

 

1:全科診療には無理がある?

 

人間のお医者さんはかなり広く専門性が細分化されてます

 

人並みの診断ができるようになった昨今

 

全ての診療を網羅するのは至難の技です

 

朝一こういう風にカルテが並びます

 

例)

1:3ヶ月の子猫さんのワクチン

2:8歳のフレブルさんが全身痒い

3:18歳の猫さんの慢性腎臓病の再診

4:6歳のシュナウザーさんの腫瘍切除の預かり

5:フィラリア症のお薬のみのご相談

6:昨日から呼吸が荒い12歳のチワワさん

 

犬×猫×全科×サービス業の要素

 

もうてんやわんやです

 

トリアージしつつ

 

お薬のみの方などをお待たせするわけにはいきません

 

なんたって動物病院業は法律上サービス業です

 

待たされたなんて口コミ書かれた日には

 

死活問題になりますしね

 

中の様子をご想像ください

 

2:じゃあ人的資源を増やせばいいじゃん?

 

これも中々難しい

 

まず獣医師の問題

 

1年に生まれる獣医師の数は1000人いません

 

最近ではその中の4割しか臨床にいきません

 

給料安い、死ぬほどブラックな職場、外科苦手な人も外科しなきゃいけない(逆も然り)

 

普通の人は公務員とか企業いきますよね

 

臨床に行った4割の人たちも数年で半分以下になります

 

 

一応、獣医学科は難関です

 

試験に必要な教科や倍率など様々絡みますが

 

偏差値だけでみても私立なら慶応や早稲田、私立の低位医学部より難しくなります

 

学費も高い

 

臨床に行く理由も残る理由もありません

 

ここで残った獣医師を引っ張ってくるのは至難の技です

 

そして看護師の問題

 

看護師の仕事は人間の病院を想像していただければわかると思いますが

 

多岐に渡りますし

 

専門性も必要です

 

本来は看護師に任せるべき仕事をも獣医師が担うことで

 

オーバーワークになりミスが出やすくなる

 

しかも社会的地位の低い動物看護師は

 

母数は多いですが待遇を保証するのが難しいです

 

だからこその認定看護師のシステムは今後有用になってくるのではないでしょうか

 

3:文句ばっか言ってないで解決策を述べよ

 

じゃあどうシステムが変わって行くべきなのか

 

まずは獣医学科の中で臨床分野の時間配分を

 

意図的に多くすべきです

 

そもそも獣医師というのは動物の治療前提でなく

 

家畜メインの農業政策や公衆衛生のために作られた士業です

 

みなさん信じられますか?

 

獣医教育の中に「猫」は入ってないんです

 

例えば、僕が最近勉強している「歯の治療」についてなんか

 

1回も触れられません

 

そうやって臨床に出た獣医師たちが自学自習でなんとか

 

成り立ってるのが今の動物医療です

 

まずは教育システムが変わるべき

 

そして、人間みたいにジャンルを細分化すべき

 

当院なら僕は外科ばっかだし

 

院長は循環器や泌尿器、救急集中治療分野ばっか勉強します

 

できないところはできる病院さんに任せる

 

ミスも少なくなるし

 

専門の先生の方がいい治療を提案できる可能性も高い

 

オーバーワークもしにくくなるし

 

勉強も焦点を絞るぶんしやすくなる

 

得意を武器にできるから臨床から去る優秀な人材も少なくなると思います

 

こういうのは個々の獣医師の考え方で

 

だいぶ浸透してくると思いますので変えやすいところなのかなと思います

 

地域での獣医師間のコミニュケーションも密にならないといけません

 

そしてこれ

 

低価格を競う競争から離脱すべき

 

低価格にする

 

だからおざなりになるし

 

必要な人資源や医療機器、勉強する機会を揃えられない

 

たくさんお金を貰おうと言ってるわけではないんです

 

人医療と同じくらいの水準にすべきです

 

去勢避妊手術なんてしかるべき検査をして全身麻酔かけてしっかりいい手術を心がけたら

 

10万以上は必要だと思います

 

(まあ当院だってこんなこと言ってますが競争に乗っちゃってますけどね笑)

 

人の帝王切開の明細見たら80万かかってました

 

もちろん自己負担額は保険のおかげで安くなりますが

 

そういうもんだと思います

 

::::::

 

書き足りないことはもっともっとありますが

 

動物医療の中のシステムが変わってかないと

 

「誤診」によって無くなる動物の数は多くなるばかりだと思います

 

だってみんな助けたくて獣医してるんだから

 

誤診なんて誰だってしたくないですよ

 

もちろん、それを防ぐ最大限の努力は必要だという前提でです

 

本音を言うと

 

病院や獣医師によって力量に差がありすぎる(僕も精進しないと)

 

そして、少しばかり

 

入院中の早朝の異変に気付けなかった訴訟された病院の先生にも

 

同情してしまうんです

 

入院させたら24時間働けますか?状態

 

なんとか気力で頑張れますけど

 

僕みたいに体調を壊す先生もかなり多い

 

どんな仕事でも間違いは起きます

 

医療における間違いは絶対あってはいけない

 

しかしながらそれは間違いを是正できる体制ありきのものです

 

責任相応の対価無くしてまともな体制は築けない

 

獣医師1人でなんとかするシステムの変化は絶対必要かと思います