数ヶ月前の獣医学雑誌のコラムにこんな感じのが載ってました。
はっきりした症状がないけど、院内でACTH刺激試験をしたらコルチゾールが高くでた。
ってことはクッシング症候群にして治療開始していいの?
というような内容です。
数年前に出た富士フィルムのこの機械や別会社さんの機械で
院内でもコルチゾール(副腎から出るホルモン)や甲状腺ホルモンなんかを測定できるようになりました。
多くの動物病院さんで導入されていると思います。
簡易的に測定できるようになったので
健康診断なんかに取り入れられているところをよく見ます。
結論から書くと、もちろん上の質問はNOでした。
確定診断しちゃダメだよということです。
僕も人医療の方の本で、レジデントがICUで甲状腺ホルモン測定して怒られているのをみてから
安易に測定しないようにしています。
見るべきは患者さんで数値ではないからです。
ぶっちゃけいうと、なんちゃって甲状腺機能低下症をよくみます。
症状がないなら測定する必要はないと思います。
そもそもね。
まあいいとして、詳しく書いてみます。
ACTH刺激試験によるクッシング症候群の診断感度は8割くらい、特異度は5割から9割くらいと言われています。
つまりACTH刺激試験が確実に正当な方法で行われたという前提でも確定診断はできないんです。
そもそもACTH刺激試験というのは下垂体から副腎に向けてコルチゾール出せこのヤロー
というホルモンであるACTHを医学的に筋肉内にお注射してあげて
注射前後でコルチゾールの増減をみる試験です。
てことは手技にも左右されますし、筋肉量にも左右されます。
さらに言えば、上の機械は検査センターで使用されている機械とは異なる手法でコルチゾールを測定します。
簡単にいうと、検査センターのやり方のほうが当たり前ですが精度の高い検査ができます。
疑わしきは外注すべきです。
じゃあ上みたいな結果(つまりは症状ないけど試験しちゃって院内で高く出ちゃった)の場合どうしたらいいか
ですが、要はクッシングかクッシングじゃないかを鑑別できればいいわけですよね?
そうしたら尿中のコルチゾール・クレアチン比を求めることです。
数日後に尿を採取してもらい、すぐに冷凍庫に保管してもらい病院に凍結したまま持ってきてもらう。
もしくは採尿後すぐに病院に持ってきてもらうかで外注検査にかけます。
もしくは低用量デキサメタゾン抑制試験というのを実施して外注検査します。
大事なのは、こういうことを常に意識して診察することですね。
余分なことをすると患者さんに迷惑がかかります。
また、違和感がある場合は安易に治療に進まないことです。
僕も気をつけたいです。