筋が付着する部分を起始・停止と考えるよりも、近位付着部・遠位付着部として考えた方が良い理由

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筋の起始・停止と作用

学校の授業や、あらゆる書籍・文献において、筋の付着している部分を近位は起始・遠位は停止としています。また、運動時に固定しているor動くことが少ない端を起始、大きく動く端を停止としています。

全身の骨模型画像

筋が収縮(求心性収縮)すると、筋の付着している組織が引かれて運動が起こります。この時、多くの場面において考えられていることは、起始側に対して停止側が近づくことで運動が起こるということです。

停止が固定された状況などでは、実際の運動時に起始が停止に向かって動くことが考えられます。これはリバースアクションとも言われたりします。

プルアップ・チンニングの写真

例えば、上腕二頭筋の収縮によって肘関節は屈曲しますが、このとき肩甲骨側が固定し前腕が動いていきます。リバースアクションは懸垂をイメージしていただくと良いですが、手で棒を掴んでいるため停止側が固定されており、肩甲骨側の近位側が動いて動作が遂行されます。

起始・停止ではなく近位付着部・遠位付着部として考えた方が良い理由

記事の題名の通り、筋の付着部を起始・停止と考えるよりも、『近位付着部・遠位付着部として考えた方が良い』と私は考えています。

そもそも筋の付着部に“始まり(起始)”と“終わり(停止)”という概念を用いずに、単純に付着している部分として捉えた方が良いということです。起始側に対して停止側が近づくことで運動が起こるのが通常の作用としてしまっているため、リバースアクションの作用を考えないことが多く見受けられます。

近位付着部・遠位付着部が互いに近づいて作用すると考えることで、筋の作用をより深く考え、臨床に応用することが可能となります。

例えば、前鋸筋を主に使ったエクササイズを実施してもらう時、多くの方が前方へのリーチ動作・肩甲骨のプロトラクション動作を行うと思います。(実際に私もそのように行うことが多いです。)前鋸筋を使ったエクササイズを行うということは、前鋸筋の機能不全があると考えているので、おそらく前方へのリーチは適切に行えないことが考えられます。

前鋸筋

ここで考えたいのが、リバースアクションの概念です。
リバースアクションというくらいなので『逆の動き』とイメージしてしまいますが、単に動作の違いであるため“リバース”でも何でもないと私は考えています。前鋸筋でも同様にこれを考えていきます。

(本来の)作用として肩甲骨のプロトラクションが多く語られますが、これは肋骨側が固定されて肩甲骨が動くために行われる動作になります。(逆の)作用として肩甲骨側が固定されて胸郭が動くことも考えることができ、これは胸郭のリトラクションと考えることができます。このように考えると、前鋸筋をメインで使用したエクササイズで肩甲骨をプロトラクションさせようとするよりも、胸郭をリトラクションさせる・胸郭を後方へ引く動きを行わせた方が反応が良いこともあります。
※この他にも、前鋸筋下部線維は走行の関係から、肩甲骨(起始)が固定されていれば下部肋骨を挙上させ吸気の補助としても作用することも考えられます。

このようなことから、『起始に対して停止が近づくように動く』、『筋の始まりと終わり』という考え方ではなく、近位付着部・遠位付着部として付着部同士が近づくと考えた方が良いということです。

近位付着部が固定されていれば遠位側が動き、遠位付着部が固定されていれば近位側が動くことになります。起始・停止としてしまうと、それだけで頭の中で勝手に考えを固定してしまうかもしれませんので、私は近位・遠位付着部として考えた方が良いのではないかと考えています。

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まとめ

単に捉え方・考え方の問題なので、普段は起始・停止として言葉を用いて上記のように作用を考えるのでも良いと思っています。正直言葉は何でも良いと思っている派ですが、コミュニケーションをとる上では、用語と解釈を統一することが必要になります。

上記のように考えることができることは、筋を活性化・抑制させるためのエクササイズで様々な応用をすることができます。エクササイズのキューイングでも様々な観点から行うことができます。とにかく臨床における考え方が2倍、3倍にも広がるため、セラピストだけではなくトレーナーの方にも本当にオススメできる考え方になります。

例では、上腕二頭筋や前鋸筋を挙げましたが、全ての筋で同じ考えをすることができます。ハムストリングや大腿四頭筋の膝関節・股関節に対する作用とともに、骨盤の後傾・前傾の運動に関しては考慮されているのに、それ以外の筋においてはそこまで考えられていないことが結構あります。

筋の付着部は人それぞれバリエーションに富んでいるため、おおまかな付着の場所だけ把握しておけば、作用は後からいくらでも考えることができます。完璧に覚えていなければいけないものではないので、そこはご安心いただいて大丈夫かと思います。

このように覚えないといけないこと、覚えなくても大丈夫そうなことを分類し、無駄を省いて学ぶことで、臨床で使う部分をどんどんブラッシュアップしていきたいと思っています。

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