三人の王子

これまでのお話おはなしのくに

前回までのあらすじ

大臣の陰謀で王位を奪われそうだった王様は嫁探しの旅に出ていた二人の王子に助けられます。喜んだ王様でしたが、二人がどうやって兵士を集め、城に入って来られたのかと問います。王子たちは不思議なケンタウロス、ケイロンに知恵を授けられ、狩人アレンが角笛で仲間を集めてくれたいきさつを話したのでした。

その二十一

 二人の王子たちが代わる代わる、ケンタウロスのケイロンと出会って、争わずに城に入る方法を教えてもらったことや、狩人アレンが角笛を吹いて、千人に足る人数を集めてくれたことなどを話し終わると、王様は感動して、「うん、うん」とうなずきました。

「なんと不思議な話じゃ。そのケンタウロスの医者には、ぜひ、会って礼を言わねばならぬな」

 それから、王子たちの後ろにひかえているたくましい男たち、とりわけ、緑色の狩装束を身に着けたアレンに目を向けました。

「そなたたちも大儀であった」

 アレンとその仲間たちはつつしんで頭を下げました。

「では、父上、さっそく、後始末をいたしましょう」

 二の王子がてきぱきと言いました。

「そこにのびている大臣はふらちな謀反人ではありますが、気高い王家の血筋。その血を流すわけにはいきませんから、目を覚まし次第、国外追放を申し付けてはいかがかと存じます。

だが、その部下、兵隊長オドシメルについては、たとえ大臣に命令されたとはいえ、父上に手をかけようとしたのですから、絶対に許すことはできません。そっこく、死刑にし、その部下たちも同様の罪で…」

「まあ、待ちなさい、二の王子よ」

 王様がおだやかに止めました。

「わしはだれも罰する気はない。わしは、もう、王様を止めようと思う。王冠をはずし、自由の身になりたいのだ」

「父上、何をおおせられる!」

 王子たちはもちろん、アレンや仲間たちも驚いて、顔を見合わせました。

 王様は言いました。

「考えてもごらん。わしは偽りの国王だったのじゃよ。頭のこの冠は邪悪なドラゴンの化身だというではないか。そう聞けば、長年の頭痛や肩こりだけではない、若いころからしばしばわしを苦しめてきた恐ろしい悪夢の理由もうなずける。

ひょっとして、愛する妻テレサがあれほど早くに亡くなったのも、この冠の毒に当てられてのことだったかもしれぬぞ」

「父上、ちょっと、考えすぎなのでは?」

 顔をしかめる王子たちに、

「いや、わしはもういやじゃ。これをすぐにもはずしたいのじゃ」

と、王様は厳しい口調で言い返しました。

「たとえ、王冠をはずしたことでドラゴンの魔法が消え、この国がみすぼらしい荒れ地に変わってしまったとしても、まぼろしにだまされていると知りながら、のうのうと暮らすよりはましではないか。人はそんなことをすべきではないのじゃ」

そして、頭の冠を、ぐいぐい、引っ張り始めました。

「お前たちが本当にわしを心配してくれるのなら、冠をはずす手伝いをしてくれ。今すぐ、人々を窓の下に集め、冠をはずす呪文を唱えさせてくれ!」

 王様のいつにない剣幕に押され、二人の王子とアレンは額を寄せ合って相談しました。

「どうだろう、父上の願いをかなえて差し上げたいが…」

と、二の王子。

「はい、もちろんですとも。ただ、冠を外した後、何が起こるか、それが心配ですね」

と、三の王子が不安そうに腕を組みます。

「はい、それでござる」

と、アレン。

「冠がドラゴンの姿にもどらないとも限らない。われらはそれに備えねばなりますまい」

 相談がまとまると、王子たちとアレンは仲間を窓の下に集めました。

 二の王子がベランダに顔を出した時、窓の下に集まっていたのはばらばらのかっこうをしたアレンの仲間たちが約1000人。

「本当は500人の農民と500人の市民、500人の兵士なんだがなあ。こんなのでまじないは効くだろうか?」

「大丈夫ですよ、ブラリン殿。私の仲間はもともと農村出身の者もいれば、町から来た者、兵士だった者もおります。兵士で町に住んでいた者、農民がいやで兵士になった者などもおり、いろいろでござる。なので、おおざっぱに見れば条件にかなっているのでは」

 アレンが自信たっぷりに請け合いました。

そこで二の王子は決心して、助け出された王様の兵士をも加えて、1500人ほどの人びとに向かって言いました。

「みなのもの、これから私の合図でいっせいに、『イザンバ!』と三回、唱えてくれ。では、頼む。それ! イザンバ!」

「イザンバ!」

「イザンバ!」

 呪文の言葉が城に響き渡ります。

そのひびきが消えた時、みなが心配していた通り、恐ろしいことが起こりました。

 王様の頭から王冠がはずれたかと思うと、むくむくとふくれあがり、部屋いっぱいに黄金のドラゴンがつばさを広げたのです。

 片方はルビー、片方はエメラルドの色をした目が怪しく輝きます。

「ああ、やっと、この日がきた、おれが自由の身になる日が!」

 ドラゴンの野太い声が城中にこだましました。

「みずから冠を取るとは、おろかなマタヂカラ一族め! 今日がお前たちのほろびの日だ! 何もかも、焼き尽くしてやる!」

 いっしゅん、きな臭い匂いがしたかと思うと、王の間を炎の海がなめつくしました。

 それはドラゴンの吐く怒りの炎でした。 

つづく

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