かけこみリタイヤ―のダイヤリー

陰キャで隠居!58歳10か月でアーリー?リタイヤしました。

タレブ氏、生存バイアスの例として「隣の億万長者」を批判

10月17日の記事に引き続き、ナシーム・ニコラス・タレブダイヤモンド社刊「まぐれ」から

「隣の億万長者」私も好きな本ですが、タレブ氏は痛烈に批判しています。
いわく、同様に節約に努めて自分で事業を起こし、たけれど億万長者になれなかった人の数が分からなければ、この手の話は有害であると。
うまくいった例ばかり集めて、それがさも母集団であるかのように話し、こうすれば高確率で成功する、というような論をたてることを生存バイアスと言います。
タレブ氏は、同書P200で「変数の最大値の分布を見て、それが変数自体の分布だと勘違いしてしまう」という表現を使っています。
まあ確かにそうでしょう。

でも私はこの本は楽しいし読んで価値があると思うのですよ。
特に子供にたいするお金教育や自助自立を求める躾のところは。
「自分で事業を起こして成功している」というくだりは、事業を起こしても3年以内に9割以上失敗するということを実際端で沢山見聞きした経験があるので、軽くスルーして、ある種エンタメとして読んでしまっている部分もありますから。

再びタレブ氏の「まぐれ」から

1月4日に匿名の手紙が届く。今月の市場はあがりますと書いてある。ふたを開けてみるとそのとおりだったけど、あなたは無視する。一月効果だろう。2月1日にまた手紙が来る。今月の市場は下がりますと書いてある。またそのとおりとなる。3月1日にまた手紙が届きー以下同様。7月にはもうすっかり匿名の人の予知能力に取り込まれてしまっている。そして自分が特別に運用するオフショア・ファンドに投資しませんかと勧誘を受けたあなたは全財産を預ける。二か月後、お金は消えた。
お隣さんの肩にしがみついて涙を流していると、お隣さんはこう言うのだ。自分も二回ばかりそんな手紙を貰ったけど、そこまでだった。一回目は当たったけど二回目ははずれた。
(ナシーム・ニコラス・タレブ著「まぐれ」ダイヤモンド社P196より)

これ面白いですね。トリックはこう。詐欺師は電話帳から一万人抽出して、1月には半分に強気、半分に弱気の手紙を出す。2月には予想が当たった方の2,500人の半分に強気、半分に弱気の手紙をだす。そんなことを繰り返して200人に減ったとしてもそのうち100人がひっかかれば、切手代数千ドルで数百万ドルの利益。

その後にまたいいことが書いてあります。逆選択のこと。自分で1万人ファンドマネージャーを調べたらたまたま生き残った偽物に出くわす確率は2%かもしれないが、家にいて飛び込み営業を受ける場合、やってきた人が偽物である確率は100%に近い、って書いてあります。
飛んで火にいる夏の虫。今は秋だけど。

日本の例に応用すると、手数料の高い商品しか並べていない金融機関に自分から出かけて、「このうちのこれがお得でお勧めですよ」なんて言われるのは、とんでもない間違いだということでしょうか。