ミエは、昔から声がデカかった!!
サビの爆発力が凄まじい、荘厳なゴスペル歌謡。
「贅沢言ってんじゃないわよ。70歳のジジイの歌を聴きに来てくれてるんだから、有難いと思わなきゃ!」
2018年10月、客席が満席じゃないという理由で、コンサートをドタキャンした沢田研二に、中尾ミエの喝!が飛んだ。
中尾は、現在、TOKYO MX「5時に夢中」で、毎週金曜日のコメンテイターを務めている。
時事・芸能ニュースについての毒舌トークが人気を呼び、10年以上のレギュラー出演中。最近は、すっかり「ゴジムの人」である。
そんな中尾の歌手デビューは1962年。
コニーフランシスのカバー「可愛いベイビー」が、いきなり100万枚の大ヒット。
園まり、伊藤ゆかりと「スパーク三人娘」を結成し、人気番組「シャボン玉ホリデー」に出演。
60年代の中尾は、キュートな洋楽カバーポップスを連続リリース。
幼少から、バンドを従えて米軍キャンプで歌っていた中尾の声には、十分な張りと圧があり、発音も明瞭。洋楽カバー女性歌手として、弘田三枝子と双璧を成す人気を得た。
「あなたの影によりそうような 想いにも気づかず つれない人なの」
70年代に入り、天地真理、小柳ルミ子、南沙織が「新三人娘」としてブレーク。
「スパーク三人娘」休止後、中尾は「脱アイドル」「脱カバーポップス」の道を模索し始める。
その頃、中尾が出会ったのが、69年の槇みちるのシングルB面曲「片想い」。
埋もれていたこの曲に感銘を受けた中尾は、自らカバーを希望。
71年11月、シングル発売。その後、有線放送でジワジワ人気が高まり、77年に再発売後、30万枚の大ヒットになった。
この曲は、A-A’-サビ-A’という、シンプルな構成。
全編に男女混成コーラスが流れる、ゴスペル調で荘厳なラブソングだ。
川口真による、スケールが大きく美しいメロディー。
そして、メロディーの壮大さに負けない中尾のボーカル。
「い〜〜のりを込めて〜〜♪」というサビでは、中尾の粘り気ある太く突き抜けるボーカルが爆発!
シンプルなこの曲の肝は、このサビのロングトーン。後年、柏原芳恵や中森明菜がこの曲をカバーしたが、中尾と比べると、どうしてもこのサビの爆発力が不足気味だった。
60年代の「カバーポップス娘」、近年の「ゴジムの辛口コメンテイター」。
中尾の芸能人生の二つのオフシャル・イメージの狭間に、ポツンと特異点のように存在する佳曲。
2021年10月に亡くなった川口さんを偲びながら、ぜひ聴き返したい一曲だ。
「片想い」
作詞:安井かずみ
作曲・編曲:川口真