【ヨガの起源と歴史】インドのヨガの4大経典(聖典)を簡単に解説

ここでは、ヨガ哲学の概要を整理したい方・RYT200などで習ったヨガ哲学を復習したい方のために、ヨガの起源・歴史をヨガの4大聖典(経典)をもとに時系列順にわかりやすく解説します。

簡単にまとめますと、 ヨガの起源はインドのインダス文明で 坐法を組んで瞑想する像などが発見されました。

その後インドに侵入したアーリア人により築き上げられた「ヴェーダ時代」から本格的に「ヨガの聖典」が編纂され、「ヨガの4大聖典」といわれる以下の4つの聖典が順に編纂されました。

赤字で示したのがそれぞれキーワードとなる語彙です。

  • ヴェーダ聖典 ( またはウパニシャド):「バラモン教」「ブラフマン」「アートマン」
  • バガヴァドギーター:「クルシナ」「アルジュナ」
  • ヨーガスートラ:「八支則」「ヤマ」「ニヤマ」「ラージャ・ヨガ」
  • ハタ・ヨーガ・プラディーピカー :「アーサナ」「プラーナーヤーマ」「ムドラー」

自己紹介
ヨガを英語教育に取り入れてTPRの教授法を確立したいと思い、ヨガのインストラクターの資格(全米ヨガアライアンスRYT500)を取得し、ヨガのインストラクターになりました。(本業は大学の教員です)

(一部PRあり)

ヨガの起源はインドのインダス文明

Moenjodaro
モヘンジョダロ

ヨガの起源はインドであり、その歴史は古く、明確な起源は定かではありませんが、紀元前2500-1800年のインダス文明の頃と言われています。

インダス文明はインド土着の民族であるドラヴィダ人がインド北西部 (現在は大半がパキスタン領)を流れる大河インダス川流域に築いたとされる古代文明の一つです。

19世紀になり、 考古学者たちの手によって発掘されたインダス文明の遺跡から、ヨーガを実践しているとおぼしき人物の彫られたレリーフが多数発掘されました。

それが世界遺産にも登録されているインダス文明最大級の都市遺跡「モヘンジョ・ダロ(パキスタン)」の遺跡です。

「モヘンジョダロ」からの出土品には、坐法を組んで瞑想する像や、様々なポーズをとる陶器製の小さな像などが発見されたのです。

このことからインダス文明の時代にはヨガの起源となる修行法がそのころに実践されていたのではないかと推測されています。

ヨガの4大聖典

ヨーガの原型がもう少し明確になるのが紀元前 1700年以降の時代です。

紀元前100年から1500年頃 インダス川周辺にアーリヤ人たちがやってきたと推測されています。

アスーリヤ人はもともと南ロシアのコーカサス地方に住んでいたとされる民族ですが、 紀元前2000年頃から豊かな土地を求め移動を始めたと考えられています。

ドラヴィダ人たちの文化を吸収しながらインド独自の文化を築いていったのです。

こうして生まれたインド独自の文化を「ヴェーダ」と呼びます。

初期のヴェーダ文化の特徴は「自然神崇拝」です。

インダス文明終焉後のインドに侵入したアーリア人により築き上げられた「ヴェーダ時代」以降本格的に「ヨガの聖典」が編纂されるようになりました。

なお、ヨガの4大聖典とは以下の4つになります。

  • ヴェーダ聖典 またはウパニシャド(紀元前1000年頃~紀元前500年頃)
  • バガヴァドギーター (紀元前150年頃~紀元100年頃)
  • ヨーガスートラ(200年頃〜400年頃)
  • ハタ・ヨーガ・プラディーピカー(1500年頃~1600年頃)

以下ではこれらの4つについて詳しく解説します。

ヴェーダ聖典 (紀元前1000年頃から紀元前500年頃)

「ヴェーダ聖典」 とは一言で簡単にいうと、インダス文明終焉後、インドに侵入したアーリア人が編纂したインド最古の聖典群のことを指します。

紀元前1500年前後に、アーリア人がインダス河上流の五河地方に移動し、先住民族を征服して定住しました。

アーリア人は宗教的な民族でもあり、自然を神格として賛美し、祭儀で祈りを捧げ、健康、幸福、繁栄などを願いました。

アーリア人が祭祀の際に神々にささげる賛歌を集成したのが「ヴェーダ聖典」です。

「ヴェーダ聖典」は、紀元前1000年頃から紀元前500年頃にかけて編さんされました。

「ヴェーダ」とは「知識」という意味で、「ヴェーダ聖典」に基づいて形成された文化を「ヴェーダ文化」、また、その時代を「ヴェーダ時代」といいます。

また、ヴェーダ思想や宗教は「バラモン教」と呼ばれています。

「バラモン教」が民間の信仰や伝承を取り入れて発展したものが「ヒンドゥー教」です。

「バラモン教」 という名称は、後に「ヒンドゥー教」と区別するために、ヨーロッパ人がつけた名前です。

つまり、バラモン教の聖典が「ヴェーダ」で、「ヴェーダ」は現代のインド文化の基礎となる思想で、ヨガ、アーユルヴェーダ、音楽、文学、宗教、哲学などの源になっています。

また、 「ヴェーダ」 の最後に編纂された「ウパニシャド」(奥義書)にヨガの実践についての記載があるため、4大聖典として 「ヴェーダ」 ではなく、「ウパニシャド」をあげる方もいます。

つまり、「ヴェーダ」はインド文化全体のもとになっている文献であり、特に、ヨガについて書かれているのが 「ウパニシャド」 ということです。

なお、上記の動画が「ヴェーダ」について詳しく解説しています。

ヴェーダ聖典の本集(四大ヴェーダ聖典)

なお、「ヴェーダ聖典」では、主要部分を「サンヒター」日本語では「本集」と訳されており、「本集」が4種類、さらに、それに「付随する文献」が3種類あります。

最初に「ヴェーダ聖典」の「本集」について解説します。

以下の本集の4つが「四大ヴェーダ聖典」と呼ばれています。

リグ・ヴェーダ

紀元前1200年頃成立したとされる最初の聖典が「リグ・ヴェーダ」で、さまざまな自然神への讃歌が収められており、インド最古の文献といわれています。

古いサンスクリット語で書かれた1,028篇の詩から成り、10巻に分かれています。

暴風雨や太陽などの自然現象を神格化した多数の神々が登場し、神への賛歌の他に婚礼や葬儀など儀礼の際の詩などが収められています。

その他、病理学や治療法に関する詩もあり、アーユルヴェーダで有名な「トリ・ドーシャ理論」や「ハーブ製剤」など記載されています。

ヤジュル・ヴェーダ

「ヤジュル・ヴェーダ」は祭詩の集成です。

サーマ・ヴェーダ

「サーマ・ヴェーダ」は歌詠の集成です。

以上の3つの「リグ・ヴェーダ」「ヤジュル・ヴェーダ」「サーマ・ヴェーダ」が三ヴェーダと呼ばれています。

アタルヴァ・ヴェーダ

三ヴェーダよりやや遅れて紀元前1000年頃に偏されたのが「アタルヴァ・ヴェーダ」で、呪いの句の集成です。

呪いというとちょっと恐ろしい感じがしますが、実は「アタルヴァ・ヴェーダ」には「病気を治すための呪文」や「長寿を祈るための呪文」などもあります。

そのようなことから「アーユルヴェーダ」は「アタルヴァ・ヴェーダ」のウパヴェーダ(副ヴェーダ)として、医学に関する記述が抜き出されたのではないかといわれています。

つまり、 「アーユルヴェーダ」 は上記の「リグ・ヴェーダ」と 「アタルヴァ・ヴェーダ」 が起源といわれています。

ヴェーダの本集に付随する文献

「本集(サンヒター)に付随する文献」は3つあり、紀元前800年頃前後から紀元前500年頃に成立しました。

ブラーフマナ(祭儀書)

祭式の規定と祭式の規定の神話的解釈を与える文献

アーラヌヤカ(森林書)

人里離れた森の中で伝授される秘儀的祭式や教義を説く文献

ウパニシャッド(奥義書)

最後に編纂されたのが「ウパニシャド」です。

「ウパニシャド」は“傍らに座る”という意味をもつ言葉で、一般に「奥義書」と訳されます。

ウパニシャッドは紀元前800年頃に誕生し、起源後になっても作られ続けました。

その数は全部で百以上にのぼります。

生命とは何かを考察したことで、儀式に重きを置いていた祭式主義から、知性・理性の働きを重視する主知主義へと移行したといわれています。

師と弟子の対話形式が多く用いられ、宇宙の真理・生命哲学、さらに、ヨガの実践を説いています。

「ウパニシャッド」 の思想の中心はブラフマン(宇宙原理・宇宙の根源・宇宙の創造主・全ての原因)アートマン(個体原理・個の根源・真我・本当の自分)が同一であることを知ることにより、永遠の至福に到達しようとする「梵我一如(ぼんがいちにょ)」が説かれています。

「梵我一如」とは我(=アートマン:個人を支配する原理)は、世界の背後に満ちている大いなるエネルギーである梵(=ブラフマン:宇宙を支配する原理)そのものであり、この二つは同一であるという考えである。

「ヨーガ」は「結合」「繋がり」を意味している言葉といわれていますが、「ヨーガ」の意味するこの「つながり」こそが「梵我一如」の境地、つまり「世界」と「自分」が完全に一体になった状態であるという。

「ウパニシャッド」ではこの「梵我一如」の境地が様々な表現で記されています。

最古の「ウパニシャッド」の一つである「チャーンドギャ・ウパニシャッド」ではたとえ話を用いて父から子へ「梵我一如」の思想を伝授するエピソードが描かれています。

なお、業と輪廻などについても 「ウパニシャッド」 に書かれています。

「ウパニシャッド」にもっと詳しく学びたい方は上記の動画をご覧ください。

わかりやすく解説しています。

ヴェーダについて学べるおすすめの本

「ヴェーダ」についてもっと詳しく知りたいかたは以下の本がおすすめです。

インドの聖典

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インド哲学入門書で、ウパニシャッドやその他のヴェーダはもちろん、下記で解説するバガヴァッド・ギーターも含むインドの聖典をわかりやすく解説しています。

また、「インドの聖典」はkindle版もあり、unlimitedの無料体験で無料で読めます。

以下のような内容が学べます。

第一章

  • 賢者の贅沢は聖典の学習
  • ナマステーという挨拶
  • ヴェーダ聖典は人生の手引書
  • 人生における問い
  • 真の自己認識
  • 聖典の題名もマントラ
  • 質問は瞑想の燃料
  • 知識の祭祀の護摩木
  • 知識は最高の楽しみ
  • 智慧の力で死も祝祭となる
  • インド文明はヴェーダ聖典に守護されている
  • 聖典の智慧こそがインドの特殊性
  • ヴェーダの特殊性
  • ヴェーダに著者はいない
  • 口伝から書物へ

第二章

  • 聖典の分類
  • ヴェーダの区分
  • ヴェーダの言葉は最高の知識根拠
  • サンヒター/マントラ(本集)
  • ブラーフマナ(梵書/祭儀書)
  • アーラニヤカ(森林書)
  • ウパニシャッド(奥義書)
  • ウパヴェーダ(副ヴェーダ)
  • アーユルヴェーダ(生命の科学/医学)
  • ガンダルヴァ・ヴェーダ(芸術学)
  • ダヌル・ヴェーダ(軍学/兵学)

第三章

  • 好奇心は深い森
  • ヴェーダの言葉こそが知識の種子
  • 聖典の学習でカルマを超える
  • 死は魂に当てはまらない
  • 賢者の生き方
  • 学びの段階
  • なぜ自己を悟るべきか
  • 肉体と物質の相違
  • 聖典から得られる智慧の恩恵
  • ヴェーダの『プルシャ・スークタム』

第四章

  • 『ラーマーヤナ』と『マハーバーラタ』―知識の川の両岸―
  • 叙事詩や神話を学ぶ意義とは
  • 世界最初の詩歌『ラーマーヤナ』
  • 真実を知るための旅
  • 登場人物の哲学
  • 『ラーマーヤナ』の代表的な登場人物
  • バラタ
  • シャトルグナ
  • マンタラー
  • ダシャラタ
  • ダシャラタとダーシャラティ
  • ダシャラタの苦悩
  • シュラヴァナ・クマーラの物語
  • ヴィビーシャナ
  • ラクシュマナはシェーシャナーガの化身
  • ジーヴァ(個我)、ジーヴァートマン(個々の魂)、アートマン(純粋な魂)
  • シェーシャナーガが永遠である理由
  • 宇宙の法則
  • シェーシャナーガという名前
  • マーヤーの具体例
  • シェーシャナーガの哲学
  • 禿げ鷲の兄弟・ジャターユとサンパーティ
  • 『ラーマーヤナ』の著者、詩聖ヴァールミーキ
  • 世界最大の叙事詩『マハーバーラタ』(第五のヴェーダ)
  • 『マハーバーラタ』はヴィヤーサ仙の自叙伝 

第五章

  • 『バガヴァッド・ギーター』の意味
  • 『ギーター』の最初の注釈家シャンカラーチャーリヤ
  • 『ギーター』の主題
  • 『マハーバーラタ』に含まれる様々な書物

第六章

  • 欲望と目標
  • 高次の魂と低次の魂
  • 思考の有効活用
  • 思考による人の分割
  • 人間としての価値は思考によって判断される
  • 経験を知識に変換し、すべての行為を智慧とともに行う
  • 川とは水の流れ、心とは思考の流れ
  • 思考と同時に経験も知識に変える

第七章

  • プラーナ(古伝説)
  • プラーナ文献の分類
  • インド神話と物語の違い
  • 賢者と愚者の違い
  • 寿命の保証はあと一呼吸
  • 瞬間の重要性
  • 時間の概念
  • プラーナ文献を生んだナイミシャの森

Kindle版のunlimitedの無料体験で無料で読めますので、インド哲学を本格的に学びたい方はぜひ一読ください。

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人と思想 165 ヴェーダからウパニシャッドへ

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こちらは以下のような内容が学べ、ヴェーダに焦点をあてたもので、ヴェーダが体系的に学べます。

  • インダス文明
  • アーリア人について
  • リグ・ヴェーダ 
  • アタルヴァ・ヴェーダ
  • サーマ・ヴェーダ
  • ヤジュル・ヴェーダ
  • ブラーフマナ(梵書)
  • アーラヌカヤ(森林書)
  • ウパニシャッド 

また、 「ウパニシャッド」 を学ぶには以下の2つの書籍がおすすめです。

ウパニシャッド(講談社学術文庫)

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東京大学教授の辻直四郎先生の著書で、宇宙の根本元理・輪廻転生・解脱・カルマ(業)等々を解説しており、インド精神文化の神髄を学べます。

やさしく学ぶYOGA哲学 ウパニシャッド (YOGA BOOKS)

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こちらはヨガスクールの老舗であるアンダーザライトの向井田みお先生が書かれた本です。

108ウパニシャッドのエッセンスとなる「タットヴァ・ボーダ(真実の知恵)」が第1章に書かれており、まずはここから読んでみてください。

ヨガ哲学を本格的に学びたい方にはアンダーザライトがおすすめです。

アンダーザライトの詳細はアンダーザライトのインストラクター養成RYT200をご覧ください。

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バガヴァドギーター

『バガヴァッドギーター』とは、世界のあらゆる知識が学べるといわれ、長年インドの人々から愛されてきた国民的物語です。

古代インドの叙事詩『マハー・バーラタ』の一部で、第6章に収められています。

『マハーバーラタ』は世界最長の叙事詩で紀元前後の時代のインドの習俗に関する記述を混ぜながらら、人が悟りに至るまでを語った物語です。

その『マハーバーラタ』の第6巻にヨーガの神髄が対話形式で説かれているところがあり、これを抜粋したものを『バガヴァッドギーター』といいます。

『バガヴァッドギーター』は紀元前150年ごろに原形が成立し、紀元100年ごろ現在の形になったといわれています。

戦場を舞台にした、 神 (クルシナ) と戦士(アルジュナ) の問答形式の物語で、「イティハーサ」と呼ばれる伝承聖典の一つで、ヴェーダの教えを具体的にするため、神との問答形式になっており、簡単にいうと神 (クルシナ) と戦士(アルジュナ)が、ヒト、人生、義務等について語り合っています。

戦場で親族などとの戦いに悲嘆し、戦いを放棄したアルジュナは、馬車の御者に扮したクリシナが世界の真理を説き、自由への道を歩むというストーリーです。

簡単に内容を紹介します。

『マハーバーラタ』の舞台は古代インドの王国で、不正な手段によって領土を奪われた戦士アルジュナは武力によって自らの領土を取り返す決断をします。

しかし、領土奪還するためには、戦によって自らの師匠や仲間たちと戦わなければならないわけですが、いざ戦いが始まろうとしたとき、アルジュナは改めて対戦相手を確認し、「このような戦いはできない」と武器を捨ててしまうのです。

これは戦いを継続すれば親族同然の身内を殺すことになり、継続しなければアルジュナが治めるべき国の国民たちは卑劣な搾取に苦しみ続けるという苦渋の選択を迫られました。

この悩める最強の戦士アルジュナの姿は人生の荒波の中で立ちすくんでしまうすべての人間の象徴といわれています。

私たちも困難を乗り越える力を持った最強の戦士ですが、複雑に絡み合う人生のしがらみの中で、誰にでもどちらの道に進めばいいのかわからず迷ってしまう瞬間があります。

そんな迷えるアルジュナに正しい道を選ぶために必要なヨーガの知恵を授けるのがアルジュナの戦車の御者を務めるクリシナ神です。

クリシナ神はアルジュナに困難な状況を打開するために必要なヨーガの知恵を伝授していきます。

具体的には、クルシナ神の導きにより、アルジュナは以下の3つのヨーガ(カルマヨーガ・ジニャーナヨーガ・バクティヨーガ)を実践することで アートマン(個体原理・個の根源・真我・本当の自分) を獲得してきます。

バガヴァッド・ギーターの中で、カルマヨガは行動の道、ジニャーナヨーガは知識の道、バクティヨーガは愛と献身の道として説かれています。

それぞれのヨーガの道が、個々の性格や適性に応じて異なる方法で、個人の成長と解放に向けた進化を促していくことが示されています。

また、これらの三つのヨーガには、いわゆる現在のヨガで行うアーサナや呼吸法といわれるものは含まれていません。

つまり、出家をし、ヒマラヤ奥地で厳しい修行をしなくとも、普通の生活の中で仕事・家事・育児に携わりながら、自らの人生の務めをしっかりと果たし続けることで、人は解脱に至ることができると『バガヴァッドギーター』は説いています。

この思想はインドの大衆に受け入れられ、やがてインド人の八割が信仰するヒンドゥー教を生み出していきます。

以下ではこれら3つのヨガ(カルマヨーガ・ジニャーナヨーガ・バクティヨーガ)について詳しく解説します。

カルマヨーガ(行動のヨガ)

カルマヨガ「行動のヨーガ」として知られ、自己の行為を通じて成長し、自己を向上させることを重視します。

「カルマ」(Karma)は、サンスクリット語で「行為」や「行動」を意味します。

善行を行い、無私の愛と奉仕の精神を持つことで、心を浄化し、結果に執着しないことが重要です。

カルマヨガは、日常生活の中で、義務や責任を果たすことを通じて精神的な成長を追求する方法です。

エゴの赴くまま行動すればたいていは自分の好きなことに集中してしまいます。

しかし、自分自身の「やるべきこと」を重視して行動すると、自分の望まない状況にも飛び込んでいかなければなりません。

そのような自らの望まない不測の事態こそ新たな対象と波長を合わせ「つながり」を手に入れるための絶好のチャンスといえます。

カルマヨガでは自分の「やるべきこと」を重視して行動することを私たちに奨励しています。

ジニャーナヨーガ(知識のヨガ)

ジニャーナヨーガ「知識のヨーガ」として知られ、瞑想、哲学的な探求、そして内省を通じて、物質的な世界の向こうにある永遠の真実を発見することを目指すヨガです。

「ジニャーナ」(Jnana)は、サンスクリット語で「知識」または「智慧」を意味します。

上記のカルマヨガの「やるべきこと」を重視して行動するには「なぜ私たちはこの世に生まれてきたのか」という問いに対する答えを明確にしておく必要があります。

世界を突き動かす原理を知り、自分の行動基準を明確にするには知識が必要となります。

自己の本質を理解し、真の自己を超える無限の存在に到達するために、瞑想や哲学的な探求が重要です。

その得た知識を用いて自分の内面を分析しながら、「本当の自分とは何か」を知り、悟りに至ることがジニャーナヨーガのゴールであり、論理的思考と直感的な理解を組み合わせて、認識と覚醒を追求していきます。

バクティヨーガ(神への信愛のヨガ)

バクティヨーガ「神への信愛のヨガ」として知られ、神への深い愛と献身を通じて内なる統一と解放を追求します。

「バクティ」(Bhakti)は、サンスクリット語で「愛」と「献身」を意味します。

個々の信仰と感情表現が重要視され、神や宇宙の愛に溢れることで、自己を超えた高次の実在を体験することが目標です。

バクティヨーガの実践は、さまざまな方法で行われます。

神々への祈りや崇拝、聖典や歌を通じた讃歌の唱え方、神聖な場所への巡礼などが含まれます。

バガヴァドギーターについて学べるおすすめの本

ここでは「バガヴァドギーター」をもっと詳しく学びたい方におすすめの本をご紹介します。

いちばんていねいでいちばん易しいインド哲学 超入門『バガヴァッド・ギーター』

2023年に出版された本で、とてもわかりやすいバガヴァッド・ギーターの本が出版されました。

著者は「オラクルカード・タロットカードの専門会社」を経営している大塚 和彦さんという方です。

ヨーガの魔法

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上記の「バガヴァドギーター」の解説は「ヨーガの魔法」をかなり参考にさせていただきました。

乳井先生はリラヨガ・インスティテュートのディレクターです。

リラヨガ・インスティテュートのヨガ養成講座(RYT200)では乳井先生から直接学ぶことができます。

詳しくはリラヨガ・インスティテュートのRYT200の口コミ・評判、または以下の公式サイトをご覧ください。

Yoginiアーカイブ ヨガを深く学びたい

こんなわかりやすいアニメで解説してくれます。

Bhagavad Gita
「Yoginiアーカイブ ヨガを深く学びたい」から引用

バガヴァッド・ギーター

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岩波書店
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こちらはサンスクリット原典を訳したものです。

解説書ではなく、そのまま原文の内容を読みたい方はこちらをおすすめします。

やさしく学ぶYOGA哲学- バガヴァッドギーター

こちらも上記のアンダーザライトの向井田みお先生の著書です。

わかりやすくて物語を読んでいるように読めます。

バガヴァッドギーターをもっと本格的に学びたい方は全米アライアンスのRYT500を取得することをおすすめします。

2023年度までオンラインで取得できます。

おすすめスクールはOREOで、バガヴァッドギーターについて7回の講義があります。

詳しくはRYT500をオンラインで受講可能なおすすめスクール、または以下の公式サイトをご覧ください。

OREOのRYT500

ヨーガスートラ

2〜4世紀になるとヨガはバラモン教の聖典ヴェーダから発展した6つの哲学(6派哲学)のうちの1つとして扱われ、「ヨーガ・スートラ」が編纂されました。

この「ヨーガ・スートラ」は仏教の影響を受けていると言われています。

なお「スートラ」は「教典、糸、格言」という意味があります。

「ヨガ・スートラ」の編纂者はパタンジャリと言われています。

「ヨガ・スートラ」は以下のような4章からなっており、196のスートラ(経文)から構成されています。

「ヨーガスートラ」は、「サーンキャ哲学」に基づいて、心を落ち着けるための様々な方法を解説しています。

また、仏教との共通点が多く見られ、仏教の影響で確立したとも言われています。

  • 1章「サマディパーダ」ヨガの八支則で到達するサマディ(忘我・悟り・自己を超越している状態)
  • 2章「サーダナパーダ」クリヤ・ヨガ(行動のヨガ)と呼ばれる3つの基本の実践
  • 3章「ヴィブーティパーダ」瞑想状態・超自然能力
  • 4章「カイヴァリヤパーダ」サマディが確立するとどうなるのか

瞑想などの精神的実践でサマディを体験し、さらに、解脱に至るプロセスを説いています。

「ヨガ・スートラ」で実践されるヨガのことを瞑想のヨガといわれる「ラージャ・ヨガ(王のヨガ)」と呼びます。

「ラージャ・ヨガ」は瞑想を中心とした心の働きをントロール、つまり制御することに重きをおいています。

ただし、「ラージャ・ヨガ」という名前は以下で解説する 「ハタ・ヨーガ・プラディーピカー」の中で 「ヨガ・スートラ」で実践されるヨガのことを 「ラージャ・ヨガ」 と命名しただけで、 「ヨガ・スートラ」 の中では 「ラージャ・ヨガ 」という言葉は使われていません。

アシュタンガ=八支則(はっしそく)とは?

自分の心や精神について理解してコントロールできるようになるために、実践パートの2章や瞑想状態について説いている3章でアシュタンガ=八支則(はっしそく)という8つの段階・行法を説いています。

「ヨガ・スートラ」の中で最も有名な部分がこの「八支則」です。

「八支則」 には以下の8つがあります。

  1. ヤマ(制戒)ヤマは社会的な禁止事項。
  2. ニヤマ(内制)日常から気を付けるべき自分自身を制御する実践。日常生活で実践すべき5つの行い。
  3. アーサナ(座法)安定して快適な座り方。
  4. プラーナーヤーマ(調気法)プラーナ(気)を呼吸法によってコントロールする方法。
  5. プラティヤーハーラ(制感)外の世界に心が完全に結びつかなくなった状態。
  6. ダーラナ(集中)深い瞑想状態になる。
  7. ディヤーナ(静慮)ダーラナの実践が深まった結果、継続して深い瞑想状態になる。
  8. サマディ(三昧)ディヤーナがさらに深まり、自分自身の存在さえも忘れてしまった状態になる。

なお、八支則についてはヨガスートラの八支則とは?で詳しく解説しましたので、そちらをご覧ください。

特に、最初の2つのヤマ・ニヤマが有名ですね。

ヤマ(社会的な禁止事項)は以下の5つです。

  1. アヒムサ(Ahimsa)非暴力、不殺生。
  2. サティヤ(Satya)嘘をつかない。
  3. アスティヤ(Asteya)他人の物、時間、信頼、権利、利益などを盗んではいけない。
  4. ブラフマチャリヤ(Brahmacharya)禁欲。
  5. アパリグラハ(Aparigraha)貪欲さを捨てる・何かを必要以上に所有しない。

ニヤマ( 日常から気を付けるべき自分自身を制御する実践 )は以下の5つです。

  1. シャウチャ(Saucha)清浄自分の身体と心をいつもきれいな状態に保つこと。
  2. サントーシャ(Santosha)今あるものに、常に満足すること。
  3. タパス(Tapas)精神鍛錬のために困難なことを実行すること。
  4. スヴァディアーヤ(Svadhyaya)書物(聖典、マントラ、名著など)を読むこと。
  5. イーシュワラ・プラニダーナ(Ishvarapranidhana)信仰唯一絶対なる存在に信仰心を持ち、それに祈りを捧げること。

上記の動画は永井由香先生というインド哲学をとてもわかりやすく説明してくれる動画や本を出しています。

「ヨガ・スートラ」 をわかりやすく解説しています。

その他の「ヨガ・スートラ」のおすすめの本はヨガ・スートラが学べるおすすめの日本語・英語の本で詳しく解説しています。

そちらを参考にしてください。

ハタ・ヨーガ・プラディーピカー

最後に「ハタ・ヨーガ・プラディーピカー」について解説します。

ハタとは「力」で、ピカとは「光」を意味します。

「ハタ・ヨーガ・プラディーピカー」の作者はスヴァートマ・ラーマで、1500年~1600年ごろに書かれたといわれています。

スヴァートマ・ラーマはシヴァ神を至高の存在とし、ゴーラクシャ(AD.1000または1100ころ)から知恵を授かったヨーガ行者であるといわれています。

構成は以下の4章からなり、388の詩句から構成されており、ハタ・ヨーガを実践するための解説や行法が記されています。

また、脊椎基底部にある生命エネルギーの源「クンダリーニ」や、生命エネルギーセンターである「チャクラ」についても説明しています。

なお、第3章の 「ムドラー」 の詳細についてはヨガのムドラー【手・指のジェスチャー】の種類と各指の意味と効果を参考にしてください。

  • 第1章「アーサナ」
  • 第2章「プラーナーヤーマ」
  • 第3章「ムドラー」
  • 第4章「ラージャ・ヨーガ」

ラージャ・ヨガとハタ・ヨガの違い

第4章では、「ラージャ・ヨガ」の重要性にも触れ、「ハタ・ヨガ」は「ラージャ・ヨガ」のためにあると説いています。

上記で解説しましたように「ラージャ・ヨガ」は、瞑想がメインで、精神性にフォーカスしています。

しかし、 「ラージャ・ヨガ」 が目指すところの悟りの境地へ向かうには、ただ、瞑想しているだけでは難しい側面もあります。

そこで生まれたのが、体を動かす「ハタ・ヨガ」です。

すごくラフにいうとすぐに瞑想状態には入れないので「ハタ・ヨガ」で体を動かすことによって瞑想に集中できる体づくりを行った後に、「ラージャ・ヨガ」で説く瞑想状態に入りましょうということです。

つまり、 「ハタ・ヨガ」 で体を強くするのは 「ラージャ・ヨガ」 に向かうためということになります。

上記の動画「ラージャ・ヨガ」ではもっと詳しく解説しています。

ラージャヨガについてもっと詳しく学びたい方はMAJOLIのRYT200をおすすめします。

ラージャヨガについて詳しく学べます。

詳しくは公式サイトMAJOLIのRYT200を参考に。

また、 「ハタ・ヨーガ・プラディーピカー」に関する本は以下の2冊をおすすめします。

こちらの2冊も アンダーザライトの向井田みお先生の著者です。

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また、アンダーザライトのオンラインレッスン「UTL YOGA ONLINE」ではほぼ毎朝向井田みお先生がヨガ哲学の講義を行っています。

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おわりに

RYT200のヨガの授業で断片的に習ったヨガ哲学の全体像が少しはっきりしたでしょうか。

ヨガの養成講座RYT200などでヨガの起源やいろいろな聖典や経典について学んだと思いますが、「スートラ」やら「ヴェーダ」やら、「バガヴァドギーター」「アートマン」やらいろいろ・いきなり出てきて、これらがどのようなつながりになっていて、何を意味しているのだか、よくわからない方も多いのではないかと思います。

私自身もRYT200を受講したとき、本当に何がなんだか、まったくわかりませんでした。

いろいろ質問したのですが、疑問も解決されず、今考えると講師の方もよくわかっていなかったのだなと。

大学で哲学を学んだわけでもないのに、いきなりRYT200のレッスンでヨガ哲学の講義しなければならないのですから、RYT200の講師の方も大変です。

RYT200についての詳細はこちらを参考にしてください。

ヨガ哲学に関しては以下も参考に。

本格的なヨガ哲学を学びたい方は、上記でご紹介したアンダーザライトもおすすめですが、乳井真介先生が経営する リラヨガ・インスティテュート もおすすめです。

乳井真介先生 は日本のヨガの世界で有名な方で、ヨガ雑誌のヨギー二やヨガジャーナルにたびたび出演しており、以下のような本も書いておられます。

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