2022年の米利上げショックの後、株価は堅調に推移しています。
1990年代から2024年現在までの暴落についてまとめました。(2024年3月更新)
※チャートはすべてTradingviewを使用しています
- 暴落の歴史のまとめ
- 暴落時のチャート
- 2000年 ITバブル崩壊
- 2007年 サブプライムショックとリーマンショック
- 2020年 新型コロナショック
- 2022年 米利上げショック
- 過去の暴落から分かること
- まとめ
暴落の歴史のまとめ
1980年以降の暴落についてまとめたのが上記の表です。
S&P500指数の、下落期間(暴落前の高値から安値の期間)と下落率、そして回復期間(暴落前の高値に戻るまでの期間)をまとめています。
暴落と言えないような10%程度の下げもありますが、名前がついているような暴落は表に加えてみました。
私の判断でのまとめですが、過去36年間で12回の暴落がありました。
つまり3年に1回暴落があったということです。
こうしてみると、暴落はかなりの頻度で起こっていることが分かります。
暴落時のチャート
先ほどの1995年以降の暴落をTradingviewでS&P500のチャート上に表示させたのが上記です。
暴落期間(高値から底値まで)を赤、回復期間(底値から暴落前の高値に回復するまで)を青で背景に色をつけています。
ではここから、1990年代以降の目立った暴落についてみていきます。
2000年 ITバブル崩壊
ITバブル崩壊の流れ
過去の大暴落の一つとして挙げられるのは、2000年のITバブル崩壊です。
ITバブル
1990年代前半から2000年代初期にかけて、通信やIT(情報技術)関連企業の株価が急騰したのがITバブルです。
インターネットバブル、ドットコムバブル、ハイテクバブルとも言われます。
1995年8月にネットスケープ株の新規公開(IPO)がブームの始まりと言われています。
ネットスケープ株が新規公開された日、株価は1日で2倍以上に急騰しました。
同月にはマイクロソフトのWindows95が発売されています。
このように当時普及し始めていたIT関連銘柄の将来性に過度に期待して投資資金が集中し、ITブームになりました。
業績などの裏付けがなくとも、○○ドットコム、○○通信などと名前だけで株価が急騰しました。
FRBの低金利政策
当時FRBは、1994年のメキシコ通貨危機、1997年のアジア通貨危機、1998年のロシア危機などに対応するため利下げを行っていました。
1995年2月から1998年11月にかけて、政策金利は6.00%から4.75%に引き下げられました。
この低金利政策によりベンチャーやIT企業は金融機関から多額の資金を調達することができ、設備投資が容易になりました。
1995年からITバブル崩壊の2000年3月までの騰落率は240%で、S&P株価指数は5年あまりで3倍を超える急騰でした。
当然IT銘柄が多く含まれるナスダック総合指数は、S&P500以上の急騰になりました。
ITバブルの終焉
バブルが膨らんでいる最中、FRBは株価を抑制するため、1998年11月から2000年5月にかけて政策金利を4.75%から6.50%に引き上げていました。
ITバブル崩壊のきっかけとなったのが「インテルショック」と言われています。
2000年9月の決算で業績の下方修正を発表したことで、株価が急落しました。
この下方修正と急落により「売りが売りを呼ぶ」という悪純化に陥り、投資家の投げ売りに繋がりました。
ITバブル崩壊のさなか、2001年9月11日には同時多発テロ事件が発生し、さらなる株価の下落に拍車をかけました。
ITバブル崩壊の暴落期間と回復期間
暴落前の高値(2000年3月24日)から安値(2002年10月10日)まで、50.5%の下落率でした。
高値から安値に達するまでの期間は930日で、2.5年かけて下げ続けました。
そして底値から元の高値に戻るまでに要した時間は1736日(4.7年)です。
回復期間(回復までに要した時間)は、下落期間の1.9倍かかりました。
2.5年じりじりと下げ続け、底打ちして戻すまでにその倍近くの時間がかかりました。
2007年 サブプライムショックとリーマンショック
サブプライムショックからリーマンショックまでの流れ
つづいては、2007年から2009年までのサブプライム(リーマン)ショックです。
サブプライムショック
サブプライムショックとは、アメリカの住宅ローンの不良債権化によって、ローンに関する金融派生商品などの価格が暴落したことに起因する金融危機です。
1990年代、アメリカの経済は堅調で住宅価格が値上がり続けていました。
銀行は低所得者も住宅が購入できるように、低金利で貸し出していましたが、一定期間が過ぎると利率が上がるものでした。
当時は住宅の価値は上がるので、その住宅を担保にして低金利のローンに借り換えることができました。
しかし2006年に米国の住宅価格の伸びが止まり、ローン債務者は建物を担保にして借り換えることができなくなり、返済することができなくなりました。
このような住宅の不良債権化がローン会社の破綻に繋がりました。
この不良債権は証券として世界中の投資家に売られていました。
リーマンショック
2008年9月15日、サブプライムローン関連証券を大量に購入していた大手投資銀行「リーマン・ブラザーズ」は、多額の損失を抱えて倒産することになりました。
その後も大手金融機関が次々と経営危機に陥り、世界的な金融危機と不況を引き起こしました。
サブプライムショックとリーマンショックの暴落期間と回復期間
ITバブル崩壊を超える57.7%の下落率でした。
ただし高値(2007年10月11日)から安値(2002年10月10日)に達するまでの期間は512日とITバブル崩壊よりは短めです。
ITバブル崩壊より急な角度で暴落していることが分かります。
回復期には、途中「ギリシャ危機」と「米国債券ショック」があり、元の価格に戻るまでに1496日(4年)かかりました。
回復期間(回復までに要した時間)は、下落期間の2.9倍でした。
2020年 新型コロナショック
新型コロナショックの流れ
パンデミックからワクチン開発まで
つづいては、2020年の新型コロナショックです。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は2019年に発生し、2020年に入ってから世界中で感染が拡大しました。
2020年3月11日にWHOがパンデミック宣言をし、世界の主要都市のロックダウンが始まりました。
しかし2020年12月アメリカでモデルナ、ファイザーのワクチン接種が始まり、経済活動の再開やワクチン接種の拡大、景気刺激策で米国の景気は2020年後半から急速に回復しました。
FRBの金融緩和策「ゼロ金利」と「量的緩和」
米政権は、過去例のない巨額の経済対策を行いました。
総額は4000億ドル規模の現金給付や、失業普及府、子育て世代への税優遇など家計支援が行われました。
FRBは2020年3月3日に臨時のFOMCを開催し、政策金利を0.5%引き下げ1.25%としました。
2020年3月15日のFOMCでは、政策金利を1.0%引き下げ0.25%(目標レンジ0.0~0.25%)としました。
このゼロ金利は2022年3月に0.5%に引き上げられるまで維持されました。
また米国債などを大量に購入し、市場に大量に資金を供給する量的緩和政策も実施しました。
このような政策でアメリカ経済は回復に向かいましたが、カネ余りから急速にインフレ率が上昇することに繋がりました。
新型コロナショックの暴落期間と回復期間
高値(2020年2月19日)から安値(2020年3月23日)に達するまでの期間はたったの33日でありながら、35.4%の下落率という急落でした。
アメリカ市場は連日サーキットブレーカーが発動し、急落急騰を繰り返す大変スリリングな相場でした。(上記チャートの雷マーク)
サーキットブレーカーとは市場において想定外の価格変動が起きた時に、株式売買を一旦中断させたり、株価の上下する値幅を制限する制度のこと
2020年3月9日 前日比7%下落(サウジアラビアとロシアの原油減産交渉が決裂)
2020年3月12日 前日比7%下落(欧州から米国への外国人入国禁止措置)
2020年3月16日 前日比7%下落
2020年3月18日 前日比9.8%下落
暴落前の高値に達したのは2020年8月18日で、下落期間の4.5倍の148日(約4カ月)をかけて回復しました。
2022年 米利上げショック
米利上げショックの流れ
一番直近の暴落は、2022年の大幅利上げによる景気後退懸念での暴落です。
公に名前がついている暴落ではないですが、勝手に名前をつけました。
一過性でないインフレ
アメリカに限らず、2021年から2022年にかけて世界各国で物価が上昇しました。
主な原因は、コロナ後の労働参加率の減少による人手不足(労働コストの増加)や、原材料や燃料の高騰(生産コストの増加)によるものです。
また2022年2月にロシアのウクライナへの軍事侵攻が始まったことに端を発し、資源価格の高騰が更なるインフレにつながりました。
年間4%超の過去最大レベルの利上げ
これまでインフレは「一過性」だと繰り返していたパウエル議長ですが、ついにインフレを容認し、進行したインフレを抑え込むため利上げを開始しました。
FRBは2022年3月から2022年12月まで0.5~0.75%の急速な利上げを毎回合実施し、年間4%超の過去最大レベルの利上げを行うこととなりました。
このような急速な金利の引き上げで、債券市場はかつてないほどの下落に見舞われました。
株式と債券が同時安となり、株と債券の分散効果が得られない特異な年でした。
米利上げショックの暴落期間と回復期間
暴落前の直近高値(2022年1月4日)から安値(2022年10月13日)まで、27.5%の下落率でした。
高値から安値に達するまでの期間は282日。約9カ月かけて下げ続けました。
そして底値から元の高値に戻るまで(2024年1月19日)に要した時間は463日(15カ月)です。
暴落前の高値に達したのは2024年1月19日で、下落期間の1.6倍の463日(約15カ月)をかけて回復しました。
過去の暴落から分かること
30%~50%以上の暴落があること
過去36年間の12回の暴落で、20%程度の下落で留まったのが8回ですが、35%前後の下落が2回、50%以上の下落が2回ありました。
2000年以降に絞っても、2000年ITバブル崩壊は50.5%、2007年サブプライムショックは57.7%、2020年新型コロナショックは35.4%の下落率です。
最低でも35%程度の暴落は想定しておきたいところです。
3年程度じりじり下げ続けることもある
2000年ITバブル崩壊や2007年サブプライムショックのような大暴落では、1.5年から2.5年程度下げ続けました。
弱気な相場が数年間続く場合があることを、知っておく必要があります。
回復時間は下落期間より長い
2018年のVIXショックでは14日の下落期間に対して、回復までに14倍の196日も要しました。
2020年の新型コロナショックでは、下落期間は33日でしたが、元に戻るまでには4.5倍の148日かかりました。
ほとんどの暴落で下落期間より回復期間のほうが時間がかかっています。
回復期間は、最低でも暴落した期間と同じか5倍程度かかる覚悟をする必要があります。
まとめ
下落期間が長い場合、回復期間も長くなることが予想されますが、これまでのチャートから、株価が回復しないことはありません。
2024年、長い間バブル崩壊前の高値を超えることができなかった日経平均株価さえも、高値を更新することができました。
暴落時に積立投資家にでできることは「積立投資をやめない」ことだけです。
例え暴落しても、安く買えるチャンスだと思って積立投資を続けることが重要です。
余裕がある人はスポット購入チャンスでもあるので、是非暴落時のチャンスを逃さないようにしたいですね。
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