雲をつかむ:原美術館/原六郎コレクション

原美術館ARC

2022年5月3日(月)


 

やっと来ました。

 

 

2021年1月11日に東京の原美術館が活動を終了してから一年と少し。

 

 

2021年1月11日

原美術館 閉館。ただただ感謝。 | アートコラム Conceptual Cafe (ameblo.jp)

 

 

訪れるのは初めてですがコレクション展ですので作品は見たことがあり帰って来たような感覚でした。原美術館に設置されていたパーマネントコレクション(宮島達夫「時の連鎖」、奈良美智「My Drawing Room」)、屋外の作品(ソル・ルウィット「不完全な立方体」、三島喜美代「NEWSPAPER-84-E」など)もありましたね。

 

 

 

ジャン=ピエール・レイノー「0の空間」はありませんでした。復元を待ちたいと思います。

 

青空と山々、緑に囲まれて、地の利を活かしたいい美術館です。

 

初見ではないので感想も書きにくいのですが、何点か印象を述べます。

 

杉本博司「仏の海」

展示室Aの壁は全てこの作品。いきなり雲をつかむような展示で始まりました。京都の三十三間堂の千手観音菩薩をただひたすら正面からの同じ構図で撮っています。四〜五十点あります。杉本博司は観るものを突き離すようなストイックな写真を撮ります。海を撮影した「海景」シリーズ。劇場を撮影した「THEATER」シリーズ。モノクロなのでどれも同じに見え、見ているだけでは飽きてしまいます。

少し下がって見てみましょう。この展示室の周りを無数の仏様が遠くまで果てなく囲んでいて、仏様の大海原にひとり立っているようにも見えてきました。この展示室はお寺の本堂のような空間に変わります。いや〜、有難い。

杉本博司は現代の観念芸術は800年後も残るだろうかという疑問からこの作品の制作を始めたそうです。多くの芸術は宗教が守ってきたのですから仏に寄せれば残るのではという試みでしょうか。宗教に寄せれば宗教芸術ですから、観念芸術として時の試練と対峙してほしいと私は思います。

 

 

笹口数「星座」

今日一番にらんでしまった作品です。見たことはあるのですが、内容をわかっていませんでした。A4サイズの紙に英文で文字が打ってある、それだけの作品です。英文をよく読むと、シャンプーやファンデーション、アイシャドウ、香水など固有の銘柄の名前です。

この作品は女性にアンケートをとり、それを独自のルールで配置した作品です。アンケートの内容は使っている化粧品の銘柄、星座です。口紅は口の位置に、アイシャドウは目の位置に、というルールのようです。そうわかると「英語版へのへのもへじ」なのだなと理解できます。へのへのもへじと違うのは、これが特定の個人の顔で論理的なアプローチで制作している肖像画ということです。無機的で愛着の湧かない絵柄ですが、今日では個人が情報で認識され、それが実際の顔以上に意味を持ちます。来るべき未来を予見したかのような作品です。


 

草間彌生「ミラールーム(かぼちゃ)」

パーマネントコレクションです。黄色の地に黒の水玉の部屋。部屋の中に鏡貼りの四角大きな箱。箱の中を覗くと内側も鏡貼りで床に一面カボチャが敷き詰められ、無限にカボチャが広がる景色が

広がります。まさに草間彌生ワールド。この作品を観て思うのは、作ろうとしたのではなく、作らざるを得なくて作ったのだろうということ。溢れるイメージを止められず、こうなってしまう。シンプルなモチーフの繰り返しでも奥行き感があるのは創作エネルギーが溢れ続けている証でしょう。

 

観海庵

原美術館ARCの別館。古美術の展示室です。和風の設えになっています。四角い部屋の3面に狩野派の「蘭亭図」が掛けられていました。中国の王羲之が蘭亭に文士を集め川に杯を流して通り過ぎるまでに作詩するという風流な遊びを描いた図です。床の間のような場所には提重、徳利などの古い工芸品も。画題に合わせてお酒を一献という趣向です。

この他に円山応挙、森村泰昌なども展示しています。

 

オラファー・エリアソン「SUNSPACE FOR SHIBUKAWA」

 

 

屋外展示作品です。中に入って鑑賞します。太陽が出ている時にしか見ることができません。幸運なことに本日快晴でした。太陽の光を分散し様々な虹のパターンを映し出します。スマホで撮影した画像の方が実物よりキレイに見えてます。

 

コロナのためか来館者も少なく、空いている美術館でゆっくり現代アートを観るという理想の時間を過ごすことができました。


 

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