坂本龍一トリビュート展

NTTインターコミュニケーションセンター ギャラリーA

2024年1月7日(日)



インターコミュニケーションセンターが行ってきた坂本龍一の展覧会の中で今回は見やすい方に入ると思います。

 

トリビュート展ですので、坂本龍一と共同で制作してきたアーティスト達がコラボした作品、関連した作品を集めた展覧会です。

 



坂本龍一+真鍋大度 

《センシング・ストリームズ 2023ー不可視、不可聴 ICCヴァージョン》

 

 

見えないものを可視化するというアプローチは、メディアアートではよく使う手法です。

 

これは電磁波という公共の資源がどのように使われているのか?見ることも聞くこともできない資源の状態を可視化、可聴化した作品。押しボタン式ダイヤルによって作品をいじることができるようになっています。ダイヤルを回すと帯域を変えることができ、ダイヤルを押すと映像のパターンが変わります。

 

仕組みはよくわかりませんが、電磁波の帯域ごとにあらかじめ受信データを持っていてるのか、或いはどこかに設置したアンテナに接続していて、そのデータを元に映像を生成しているようです。読み込んだ瞬間に映像が生成されるので、本来なら見ること聞くこともできない電磁波の状態を知ることができます。音の方はいかにも電磁波っぽい「ザーッ」という風になっていました。

 

これはぐるぐる回転するパターン。

 

これは滝のように上から下へ模様が流れるパターン。

 

これは霧みたいに出てくるパターン。

 

あくまでアートなので、株価のチャートや天気図のように何か役に立つというものとは違います。オーディオスペクトラムの進化したものと言えばわかりやすいと思います。


 

真鍋大度+ライゾマティクス+カイル・マクドナルド 

《Generative MV》 

 

 

坂本龍一の演奏映像にリアルタイムで生成した映像を合成するミュージックビデオ作品。元の演奏の背景がグリーンバックで撮影されていてここに映像を合成しています。生成する映像は展示しているスクリーンの前に置かれているタブレットに来場者がキーワードを入力するとそれに関連した何かが生成される仕組みです。私が見た時は謎の建造物や海のような景色が映っていました。一応実在感のある具体的な三次元の映像で演奏の姿、曲のイメージと合うものを生成するよう設定してあるようです。

 

従来では映像は事前に完成したものを流すことしかできませんでしたが、技術の進歩により今ここに見に来た来場者も参加してインタラクティブに完成する作品です。

 

 

フォーオーフォー・ドットゼロ 

《The Sheltering Sky - remodel》

 

坂本龍一の曲 The Sheltering Sky の楽譜を変換して映像に仕立てています。こちらは前述の作品と違い、抽象的なテクスチャーがメロディに合わせて生成されます。それこそオーディオスペクトラムの分野ですが、音そのものではなく、音符一音一音から、映像を生成しています。

 

 

Dumb Type + Ryuichi Sakamoto  

《Playback2022》

 

坂本龍一はダムタイプの作品に参加しています。これは世界中の街の音を録音しアナログレコード化したインスタレーション作品で、坂本龍一によるディレクションです。世界の各都市のフィールドレコーディングに実際に立ち会ったのか、音源をレコードにするまでガッツリ編集まで関わったのか、定かではありません。ここではレコードが展示のみですが、別の展覧会で音を聞いたことはあります。普通に街の音とかでした。さすがに坂本龍一らしさとかは出すのは無理そうです。この作品を取り込んだダムタイプのインスタレーション作品についても取り上げたことがありますのでご覧ください。


 

 

高谷史郎 

《Piano 20110311》

 
東日本大震災で津波にのまれ壊れたピアノを3Dスキャンして、画像にしたものです。いわばピアノのデスマスクです。しかし真っ白な石膏ではなく、CGを使い本物の材質を新品の状態で再現しています。坂本龍一は、津波にのまれ壊れてしまった同じピアノを見てそこに音楽の死を感じたそうです。譜面、録音があれば音楽は不滅という考え方がある一方で、楽器が奏でる音楽はその楽器固有なもので、代替するものはない。そこに死を見い出す感性はとても音楽家らしいです。



毛利悠子

そよぎ またはエコー(部分を本展のために再構成)


札幌国際芸術祭2017にて展示されたインスタレーション作品です。場所は札幌市立大学のキャンパス内の通路。通路いっぱい、100メートルに及ぶ長い作品でした。歩くにつれて様々な音が聞こえくる仕掛けになっています。坂本龍一はこの作品のピアノに楽曲を提供しています。ここでは作品の一部(ピアノなど)を展示していて曲も流れていました。環境音楽的なものでした。


毛利悠子は今年2024年のヴェネチア・ビエンナーレ日本館に代表として作品展示することが決まっています。



李禹煥 

《遥かなるサウンド》

 

李禹煥も坂本龍一とは親交があったそうです。国立新美術館の李禹煥の展覧会に訪れた坂本龍一を案内する写真もありました。この作品は坂本龍一のアルバムジャケットのための作品です。

ジャケットはこちら。

 

斜めに傾けて使っています。印象はかなり変わりますね。



こうして見て来ると、本当に世界中の多くのアーティストと最先端の作品を作り続け来たことがよくわかります。音楽家という領域にはおさめられない偉大なアーティストでした。

 

 

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