ちょっと時間がたってしまったのですが、例によって備忘として書いておきます。



ノワール、クローディット・コルヴィンの知られざるストーリー
Noire - La vie maconnue de Claudette Colvin

  Directered by Stephane Foenkinos, Pierre-Alain Giraud
  on the basis of the book by Tania de Montaigne
  於MEET Degital Culture Center, Milano

フランス人タニア・ド・モンテニュという作家さんの本をもとにして作り上げられたデジタル・アート作品なんですが、没入型、とでもいうんでしょうか。
ヴァーチャル・リアリティともちょっと違って、あれは、テクニカル的にはなんというのかな。

2023年に、パリのポンピドー・センターで成功を収めた後、ニューヨークのトライベッカ・フィルム・フェスティバルに参加し、その後、台北やモントリオールでの公開を経て、今般ミラノに上陸、というなかなか華々しい作品。

いただいた冊子には、"mixed reality"とありましたが、会場はデジタル専門の美術館なので、展示というのか、上映というのか、まさにピッタリな作品です。

クローディットのストーリーは、米国における黒人の公民権運動にかかわる話なんです。
1955年3月2日、14時半、アラバマのモンゴメリーの町のバスに乗っていた15歳の少女クローディットが、白人に席を譲るのを断ります。乗客や運転手にののしられながらも、席に座り続けました。そして、逮捕されるのです。
しかし、自分は間違っていない、悪いこともしていない、と市に対して、裁判を起こすという前代未聞の事態が発生したのですが、なぜかこの事件は、誰にも知られていないのです。
若き黒人女性であるタニア・ド・モンテニュが、この事件を知るところとなり、感銘を受けて一冊の本にまとめたのでした。

わたしも、多分多くの方も、ローザ・パークスという名前は聞いたことがあるのではないでしょうか。
やはり黒人女性であったローザが、クローディットとまったく同じ行動を起こしたのは、上の事件の9か月後のことだったそうです。彼女には、マーティン・ルーサー・キング牧師がついていました。それによって、象徴的な事件としてローザは時の人となり、何なら運動のヒーローとして祭り上げられのですね。

歴史としても面白く、かつ切ない話で、将来的に映画化される可能性も高いのでは、と思われますが、今回のデジタル・アートは、映画とは違う表現で、観客をストーリーに肉薄させることに成功しています。



会場は、最低限の装置が置かれた、がらんとしたスペースです。ここに、定員10人ほどでしょうか。全員、目を覆う透明マスクと外の音がシャットダウンされるヘッドセットを装着します。
座っても、うろうろしても、このスペース内のどこでどのような姿勢で見るのも、観客の自由です。

そして、クローディットが体験したストーリーが、音声と画像で語られるのですが、なんと、バスの画像が見えてきて、運転手や乗客がバーチャルに見えてくるんですよね~!これは驚いた。

三次元で、結構鮮明。
古い世代なもんで、例えがどうなのか分かりませんが、スターウォーズのシリーズ最初のやつで、記憶媒体としてだったか、三次元のレイア姫が出てきて話をする、みたいなシーンがあったと思うんですけど、アレそのもの。



勿論自分のカメラでは撮影不可なので、ネットから写真をお借りしましたけど、こういう感じ。鮮明な状態から、うっすら消えていったり、場面の重要度で鮮明さが違ったりね、見えるものは、通常のデジタル映像なんだけど、それが立体だから、臨場感が半端ないんです。



時として、座っている観客と映像が重なったりして、でも、観客の姿はほとんど見えないから問題なし。

過去に、いわゆるヴァーチャル・リアリティは体験したことあるんだけど、あれは、完全に外を遮断して、ヴァーチャルの中に入り込むよね。これは、アイマスクから、普通に画面以外の場所が見えるし、没入型だけど、自分のいる場所は現実の場所であることからは離れないんだよね。
だから、うろうろしても大丈夫だし、うろうろして、いろんな角度からバーチャルの場面を見ることなんかもできる。

上の写真だと、ピンクの服がクローディット、そして対面している裁判官がバーチャルで、右側の壁際とか手前にいるのは、観客。はっきりうつるときのバーチャル画像のリアリティ、すごいよ。

いやはや、すっごく驚いたわ。
デジタル・アートっていうのも、昔は何が面白いのかレベルだったけど、こういう方向に進化していたのねぇ。想像以上だった。
バーチャル・リアルティも面白いけど、これも似て非なる部分を持ちながら、かなり大きな可能性を持つ表現手段ではないかと思います。
今のアート・シーンって、技術の進歩とつながってるなぁ。っていうか、おそらくアートで使うことが出来る技術って、おそらく大したことじゃないって思うんだけど、でも、何か新しい表現が生まれる可能性はあるわけで、なかなか面白いよねぇ。美術学校でも、そういう分野って、もしかするとすごいのかもね。

会期ぎりぎり滑り込みで行けたので、良かったです。

実はね、これに先立って、トークショーに参加してたんです。というのも、このデジタル美術館のニュースレターで誘われて、大好きな無料イベントだったしね、笑。
そしたら、原作者のタニアさんと、デジタル美術館の館長さんのトークショーで、面白かったのよ。



何よりびっくりしたのが、館長さん(左端のヒト)が、まるで小学校の先生みたいなタイプの、結構年も行っている女性だったことだったんだけども、笑。
こういうのを偏見というんだろうな、純粋に。デジタル・アート美術館、というワードから、「若い男性」とか、それに近いような枠組みを、自動的に印象してたと思う、オレ。
それが、いわゆるおばちゃんで、でも、司会者もやったくらいだから、キュレーターとかやっちゃってそうなバリバリ系。それでいて、とがって見えるところ一ミリもない。すごいわ~。

真ん中の人がタニアさん。フランス人なので、フランス語だったのが残念だったんだけど、でも、80代で存命されているクローディットさんとコンタクトした話とかね、話は面白かった。それで、これは作品をみなきゃいかん!と思って、帰宅するなりチケットを買ったのでした。

日本に行くかどうかは分からないけど、クローディットさんのことを知るのは、大切なことかもしれません。


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