蝶が舞う帽子

その女性は杖の代わりにコロコロのついたバックを転がしながら
トボトボと一段ずつ階段を登ってきた。
(お店の入り口には小さいデッキがあって、そこに上がるための階段が3段ほどあるのです)
白髪頭とマスクと曲がった腰と、、、
お店の中から見えた風貌はとても気の毒な感じがしたが
私は元気よく「いらっしゃいませ」と中から声をかけてドアを開けた。
(パッと見、お客様とは見えなくてスルーしようかとも思ったのだけど。)

歩くのも辛そうだから椅子をすすめると、素直に座って帽子を眺める。
どうやら本当に帽子が欲しいみたいだ。

88歳、転んで怪我をして治療中だけど、船旅を申し込んでいる。
医者は行くことを許可したので不安だけど行くつもり。
その旅行ではパーテイがあってドレスコードがあるが、さて、どうしよう?とのことだ。

オーダーいただければ何なりとお作りできますよと答えたものの
その旅行は24日に迫っていた(あと、10日だ!)。
到底、無理。
だって、私はゆっくりしか作れない。

さて、アトリエにある帽子を何点かかぶって、これにしようと相談しながら決めた。
パリバンタルと言われる夏素材の中で最高級と言われるものを使って
フリーハンドでクシュクシュとブリムを仕上げたものだ。
こんな帽子アリですか?と自分でも思う作品だが、これがいいかもしれないと言う。
わ、感覚が自由だ!と内心驚く。

ドレスの色に合わせて、水色の何か飾りをトッピングして仕上げるくらいは間に合いますよと
相談がまとまった。

その時は皮素材を使っての簡単な飾りをイメージしていたけど、、、後から閃いてしまったのである。
降りてきたと言わせてもらってもいいだろうか。

吉兆を表す蝶々が、その帽子の森で遊んでいるみたいに散らしたら
ご婦人のご旅行を、いえ、人生を祝福するかのように素敵ではないか!!
高齢なればこそ、見る人も微笑ましく楽しくなるのではないかと。

と思ったら手がどんどん動いていた。

試行錯誤して数日、あ、できたかな〜と思った深夜のアトリエで
一人、ワクワク感を写真に撮った。

幾つになっても楽しみを見つけて生きてゆく。
おしゃれはそんな人生を応援するためにもあると思うが
その一端を担えて幸せである。
ありがとうございました。

**********************

いつもお読みくださりありがとうございます。
友達に手紙を書くように書いています。
気ままな私の帽子ものがたり、良かったらお付き合いくださいませ。

ランキングに参加しています。
励みになります。
ポチッと応援クリックよろしくお願いします。

にほんブログ村 ライフスタイルブログへ
にほんブログ村

にほんブログ村 ファッションブログへ
にほんブログ村


帽子ランキング