氷河期セミリタイア日記

就職氷河期世代ですが、資産運用でなんとかセミリタイアできました。残りの人生は、好きなことをしながら自由に生きていきます。

公務員の給与を上げても、民間の賃上げは進まない

新型コロナウイルス蔓延による景気悪化から立ち直りつつある民間企業は、利益が大幅に回復し、夏のボーナスが大きく増えました。

経団連の調査では、大手企業の夏のボーナスは加重平均で13.8%増えています。民間とのあまりの違いに不平を漏らす公務員も少なくありません。  

しかし、公務員のボーナスの大幅減には明確な理由があります。公務員の給与は民間企業の給与を参考に、毎年8月に出される人事院勧告に基づいて決められます。

昨年、人事院は、月給については民間より19円高かっただけだとして、据え置きを勧告しましたが、年間で4.45カ月だったボーナスについては、新型コロナの影響で民間が激減していたことを受け、引き下げを勧告しました。

ただし、わずか0.15カ月引き下げて4.3カ月にするという内容で、民間からすれば、あまりにも役人天国という内容でした。  

 

 

しかも岸田内閣は、昨年末までに必要な給与法改正を行わず、その0.15カ月の引き下げすら先送りしていました。新型コロナで打撃を受けた経済への影響を考慮するというのが理由でした。  

今年4月になってようやく給与法を改正、去年の冬に本来より多く支給されていた0.15カ月分が、今回の夏のボーナスから差し引かれることになりました。

今年の夏の分も前年より0.075カ月減っているので、これを合わせると11.5%減となり、大きな減少となったように見えるというわけです。

昨年、民間では、新型コロナでボーナスが軒並み減らされていたのを横目に、勧告より高いボーナスを受け取ったツケが回ってきたわけで、今回の削減は、時期がズレているにすぎないのです。

それでも、11.5%という数字が大きいせいか、「民間が増えているのに公務員が大幅減というのはひどい」「優秀な官僚が辞めてしまう」といった論調が目に付きます。

人事院が勧告する際に比較対象にする「民間」は大企業で、ボーナスが下がったからといって「安月給」になったわけではありません。

昨年の人事院勧告の結果でも、行政職の平均年収で見れば、664万2000円で、6万2000円減少する内容だったにすぎない。減少率は0.92%です。  

決して、公務員の給与が抜本的に引き下げられているわけではなく、退職金も確実に支払われるなど、庶民感覚からすれば、厚遇であることには何ら変わりはありません。  

 

 

しかも公務員の場合、民間企業に勤めるビジネスマンと違い、会社が潰れて失業するリスクはありません。業務成績が悪いからといって、給与が下がったりすることもまずないです。

本来ならば、その分、民間よりも給与水準が低くて良いはずですが、そうなっていません。  

しかし、夏のボーナスのタイミングで、「公務員給与は民間よりも下げられている」と声高に語られています。

8月の人事院勧告で、ボーナス(期末・勤勉手当)の支給月数を0.1カ月引き上げ、年4.4カ月以上とする方針です。国民の間から批判が巻き起こる懸念は少ないとみられ、賃上げのムードづくりはできているというわけです。

岸田首相は就任以来、「分配」を掲げ、企業に「賃上げ」を求めていますが、その「呼び水になる」としてエッセンシャルワーカーの給与引き上げに動いています。

給与が安いことからなかなか人材が確保できないとも言われる介護職員や保育士、看護師などの待遇を見直すこと自体は良いことですが、それが民間企業の給与を増やす「呼び水」になるかというと異論も多いのです。  

政府が公定価格を引き上げてこうしたエッセンシャルワーカーの給与を増やしたからといって経済成長につながるかどうかは不透明で、本当に民間の給与の増加につながるのかは疑問です。

逆に政府支出が増えれば、いずれは増税社会保険料の増額で国民負担が増え、可処分所得が減って消費にマイナスとなり、経済成長を阻害します。  

しかし、この「呼び水」論が、公務員給与のあり方でも大きな意味を持ってきます。岸田首相は「3%の賃上げ」を民間に求めており、まずは公務員給与を3%引き上げて「呼び水」とすべきだという議論が出てきかねません。  

 

 

もともと、昨年段階で給与法を改正せず、ボーナス削減を先送りしたのも、「景気への配慮」がありました。

つまり、公務員給与を減らすと、景気にマイナスの影響が出るというのです。逆に言えば、公務員給与を増やすことが景気にプラスに働くという理屈です。

県庁職員は多くの県で「最も安定した高給取り」というのが相場ですが、県庁職員の給与を増やせば、職員による消費が増えるので、地域経済が活性化するというのです。

確かに県庁の周りの飲食店などは県庁職員が使うお金に依存しています。だからといって、基本的に大きな付加価値を生み出すわけではない政府部門の給与を引き上げたからといって、それが経済成長につながるというのは疑問です。  

また、しばしば語られる「給与が低いから優秀な人材が霞が関に来ない」から給与を増やすべきだ、という理屈として使われますが、これも本当かどうかは大いに怪しいです。  

霞が関の中堅官僚の多くが中途で官庁を辞めているのは事実です。優秀な人材なら民間のほうが高い給与を提示するのも間違いないです。

彼らの多くが、給与への不満を理由に辞めているのではなく、多くの中堅官僚の場合、高い志を持って公務員となっていますが、仕事で自己実現できない、未来がない、と感じている人が少なくないのです。

スピード出世して若くして課長になり、バリバリ政策を決めて世の中を変えられるという官僚像は今は昔です。課長になるのが50歳過ぎです。

しかも最近の課長にはほとんど決定権がありません。そんな今の役所の人事システムに絶望している人が少なくないのです。  

課長になるまでに25年間下働きをするのなら、すぐにでも大きな仕事を任される外資系コンサル会社に転職しようという官僚が増えるのは自然です。

全員一斉に給与水準を引き上げる昭和な人事制度から決別する抜本的な公務員制度改革こそ、優秀な人材を集めるために必要でしょう。

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